仕事を辞めた人が安定した生活を送りつつ、1日も早く再就職できるよう求職活動を支援するために「求職者給付」という制度があります。
求職者給付にもさまざまな種類があるのですが、その中の基本手当というのが一般的な「失業保険」や「再就職手当」です。
「自分はもらえる対象なのか?」「妊娠して仕事を辞める場合でももらえるの?」など、支給対象となるのか気になっている方が多いでしょう。
今記事では、失業保険を受け取るにはどのような条件があるのか、失業保険を受け取るまでの手続きや流れなどをわかりやすく解説しています。
目次
失業保険はどんな人がもらえるの?その条件とは
失業保険は「再就職を目指す人を支援する制度」です。
失業保険を受けることができるのは、「就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている方」とされています。
どのような条件があるのか、細かく見ていきましょう。
ハローワークのパンフレット(厚生労働省ハローワーク「離職されたみなさまへ」)には、失業保険を受け取る条件として以下のように記載されています。
・原則として離職の日以前2年間に12ヶ月以上被保険者期間がある ・倒産・解雇等による離職の場合、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由による離職の場合は、離職の日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間がある |
被保険者期間とは、国民年金や厚生年金保険の被保険者(加入者)であった期間のことなので、アルバイトや派遣社員、パートでも条件を満たしていればもらうことができます。
また、ハローワークのパンフレット(厚生労働省ハローワーク「離職されたみなさまへ」)には、失業保険の支給を受けられない人について以下のように記載されています。
・家事に専念する方 ・昼間学生、または昼間学生と同様の状態と認められる等、学業に専念する方 ・家事に従事し職業に就くことができない方 ・自営を開始、または自営準備に専念する方(求職活動中に創業の準備・検討を行う方は支給可能な場合があります。) ・次の就職が決まっている方・雇用保険の被保険者とならないような短時間労働のみを希望する方 ・自分の名義で事業を営んでいる方・会社の役員等に就任している方(就任の予定や名義だけの役員も含む) ・就職、就労中の方(試用期間を含む) ・パート、アルバイト中の方(週あたりの労働時間が20時間未満の場合、就労した日、収入額の申告が必要となりますが、その他失業している日については基本手当の支給を受けることが可能な場合があります) ・同一事業所で就職、離職を繰り返しており、再び同一事業所に就職の予定がある方 |
上記の項目に1つでも当てはまっていたら、失業保険の支給を受けることはできません。
失業保険は65歳未満の方が対象になっており、65歳以上が失業した場合は「高年齢求職者給付金」を受給できます。高年齢求職者給付金を受給するためにも条件がありますので、確認してみてください。
また、退職する理由によって「一般の離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに区分けされます。以下でチェックしてみましょう。
一般の離職者
一般の離職者とは「自己都合」により退職した人のことで、転職や起業、結婚、定年退職などの理由があてはまります。
退職にあたり自分の意思に反する正当な理由(病気や家族の介護など)がある場合には、「特定理由離職者」となる場合もあります。
特定受給資格者
倒産・解雇等の理由により、再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた場合は「特定受給資格者」となります。
特定理由離職者
特定受給資格者以外で、自分の意思に反する正当な理由がある場合は「特定理由離職者」となります。たとえば、
・期間の定めのある労働契約が更新されなかった
・父母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した
・特定の理由で、通勤が困難になり離職した
などの理由が挙げられ、やむを得ない理由により離職した人のことです。
失業保険を受け取るためには、「自己都合」か「会社都合」かによって条件が異なるので、確認しておきましょう。
失業保険の支給期間
失業保険は、離職後にハローワークで手続きをし、条件を満たして失業している状態だと認定されることで受け取ることができます。
ただし、手続き後すぐにもらえるわけではありません。
受給資格決定日(離職票の提出と求職の申し込みを行った日)から7日間は「待期期間」となっており、離職理由に関わらず、すべての人が失業手当を受給できない期間となっているのです。
「待期期間」の後は、離職理由や様々な条件等により人によって支給される期間が変わってきますので、確認しておきましょう。
自己都合の場合
自己都合で退職した場合は「給付制限」という条件があるので、待機期間が終わった後、さらに3カ月経過した後からでないと失業保険を受け取ることができません。
つまり、待期期間の7日間+給付制限の3ヶ月は支給されないのです。
会社都合退職の場合
解雇や倒産など、会社都合で退職した場合は給付制限はありません。待期期間が終われば、その翌日から失業保険の支給を受けることができます。
失業保険の支給期間は、退職理由が自己都合か会社都合かによって変わります。全ての人が対象の待期期間(7日間)の他に、自己都合の場合は3ヶ月の給付制限が発生します。
失業保険でもらえる金額は?
失業保険の金額は、おおよそ離職前の給与の50%〜80%で、60歳以上65歳未満の人については45%~80%となっています。
1日当たりの失業保険の金額は、「賃金日額」を計算し、それに基づいて「基本手当日額」を計算することで知ることができます。
賃金日額の計算方法
賃金日額の計算式は、「賃金日額=離職前6ヶ月間に支払われた給与の合計額÷180日」となっており、給与には通勤手当などの各種手当は含まれますが、賞与は含まれません。
離職時の年齢に応じて、「賃金日額の上限・下限」「給付率」が定められているので、計算式で求めた金額が上限額を上回る場合には上限額を、下限額を下回る場合には下限額を賃金日額とします。
基本手当日額の計算方法
基本手当日額の計算方法は、「基本手当日額=賃金日額×50〜80%」という計算式にあてはめて計算します。基本手当日額にも上限と下限があるので注意してください。
支給総額の計算方法
支給総額の計算方法は、「支給総額=基本手当日額×給付日数」という計算式で計算してください。給付日数は、離職理由が自己都合か会社都合かによって変わるので、条件を確認しましょう。
失業保険でもらえる金額シミュレーション
では、最後にシミュレーションをしてみましょう。以下の条件で計算していきます。
・A子さんは25歳・自己都合で務めていた会社を退職・給料は月額18万円 |
この場合、賃金日額を計算すると、
(18万円×6ヶ月)÷180日=6000
29歳以下の賃金日額の上限は13700円、下限は2574円なので、A子さんの賃金日額は「6000円」となります。
続いて、基本手当日額を計算してみましょう。賃金日額6000円×50〜80%となるので、50%の場合は6000×0.5=3000円、80%の場合は6000×0.8=4800円となります。
29歳以下の基本手当日額の上限は6850円、下限は2059円なので、計算したままの数字で問題ありません。A子さんの基本手当日額は、「3000~4800円」となります。
支給総額も計算しましょう。A子さんは離職が自己都合のため、給付日数が90日〜150日となります。
基本手当日額3000~4800円×給付日数90日〜150日という計算式になるので、A子さんの基本手当日額は最低で27万円、最高で72万円となります。
失業保険の大体の金額が把握できることで、これからのことを考える1つの目安となるのではないでしょうか。
ただし、細かい条件のもと計算されるので、詳しくはハローワークに行くことをおすすめします。
賃金日額=離職前6ヶ月間に支払われた給与の合計額÷180日、基本手当日額=賃金日額×50〜80%、支給総額=基本手当日額×給付日数という計算式があり、自分の失業保険の受け取る金額を知ることができます。
失業保険をもらうための手続き方法
失業保険を受け取るまでの流れを順番に見ていきましょう。
1 退職し、離職票を受け取る。
2 ハローワークで求職の申し込みをする。提出した書類(離職票等)により、受給資格の決定を行います。
3 待期期間の7日間を過ごす。待期期間中は働いてはいけません。
4 雇用保険受給に関する説明会に参加する。雇用保険受給資格者証を受け取ります。
5 1回目の失業認定日を迎える。4週間に1回の失業認定日にハローワークへ来所し、失業の認定を受けます。
6 失業保険を受け取る。給付制限がある場合はその期間を待ってからになります。
7 支給終了。受給期間満了まで失業認定と振り込みを繰り返します。
初回の失業認定日は、受給資格決定からおよそ4週間後なので、指定された日に必ずハローワークに行って失業認定を受けます。
ここまでは全員が共通ですが、そのあとは仕事を辞めた理由によって失業保険を受け取る条件が変わり、初回の失業手当を受け取るまでの流れが異なります。
失業保険受給中のアルバイトは可能か?
失業保険を受け取っている間もアルバイト可能です。ただし、以下の4つの条件があります。
・待期期間中の7日間はアルバイトをしない
待機期間は働いてはいけない期間となります。働いてしまうと待期期間と認められず、働いた日数だけ延長となってしまうので、待期期間の7日間は働かずに待ちましょう。
・1日の勤務時間を4時間未満か以上かで失業保険の受け取り方が変わる
1日の勤務時間が4時間未満だと「内職または手伝い」と見なされ、1日の失業保険が減らされてしまいます。
また、1日4時間以上働いた日は支給対象にはならず、その日数だけ基本手当の支給が繰り越されることになるので、自分にとってどうするのがいいのか確認しておきましょう。
・1週間の勤務時間を20時間未満にする
1週間に20時間以上働くと雇用保険の加入対象となるので「就職した」と見なされ、失業手当を受け取れなくなる可能性があります。
・失業認定日に必ず申告する
4週間に1度の失業認定日に虚偽の申告をすると「不正受給」と見なされ、受け取った失業手当の3倍の金額を返さなくてはなりません。不正受給は犯罪となりますので、しっかりと申告しましょう。
妊娠が理由で仕事をやめても失業保険は受け取れる?
妊娠が理由の場合は「自己都合」の離職となりますが、失業保険を受け取ることができます。
また、仕事を辞めたあとに気になる健康保険や年金ですが、配偶者がいる方であれば「扶養に入る」という選択肢があります。失業手当の給付制限期間中(自己都合のため)については収入がないため、扶養に入ることも可能です。
再就職の際にお祝い金がもらえる条件や金額
失業保険を受け取る手続きをしていると、再就職をした時に失業保険の代わりにお祝い金として「再就職手当」を受け取ることができます。再就職が決まったら、必ずハローワークに報告しに行きましょう。
受給条件
失業保険の支給残日数が所定給付日数の1/3以上であり、安定した職業に就いた場合は「再就職手当」という再就職のお祝い金を受け取ることができます。
再就職手当を受け取るには上記以外にも条件があり、
・待期が終わっていること ・受給資格に係る離職理由により給付制限がある方は、待機満了後1カ月間は、ハローワークまたは職業紹介事業所等の紹介で就職されたこと ・原則として、雇用保険の被保険者となっていること ・1年を超えて勤務することが確実であると認められる職業に就いたこと ・離職前の事業主に雇用されたものではないこと ・雇用保険の手続きのために、最初にハローワークへ来られた日より前に雇用が内定していた事業所に就職したものでないこと ・再就職日の前3年以内の就職により、次の手当てを受けたことがないこと |
となっています。
受給金額
再就職手当の金額は、失業保険の支給残日数によって変わります。
・失業保険の支給残日数が2/3以上の場合
再就職手当=基本手当日額×所定給付日数の残日数×70%
・失業保険の支給残日数が1/3以上の場合
再就職手当=基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%
早く就職すればするほど再就職手当の金額は大きくなるので、早く仕事を見つけることをおすすめします。
\再就職手当とは?/
失業保険の手続きをしていれば、再就職をした時に「再就職手当」を受け取ることができます。早く就職すればするほど、受け取れる金額は大きくなります。
まとめ
失業保険はどんな人がもらえるのか、その条件や、失業保険の支給期間、もらえる金額、もらうための手続き方法など紹介しました。
失業保険は、自己都合なのか会社都合なのかによって、失業保険の支給期間が異なります。また、もらえる金額は離職前の給与や年齢によっても異なるため、本記事で紹介した計算方法を元に、自分はいくらもらえるのかチェックしてみてくださいね。
ただし、あくまでシュミレーションに過ぎません。詳細な金額は、ハローワークで計算してもらうのが一番です。失業保険をもらいたい方は、お住まいの地域のハローワークに確認しましょう。
\ハローワークを利用した転職活動とは/