みなさん、きちんと敬語を使えていますか?間違った敬語を使っていませんか?間違いを指摘してくれる人もいますが、出会う人全員がそこまで優しい人とは限りません。その場ではいい感じに会話していても、敬語がきちんと使えていないことで取引がなくなるなんてこともあり得ます。
そこでこの記事では「聞く」の謙譲語やその他の間違いやすい敬語をご紹介したいと思います。1人の社会人として恥をかかないようにきちんと敬語を使えるようになりましょう。
目次
そもそも謙譲語とは?
敬語は、聞き手(読み手)や話題中の人に対して話し手(書き手)との対人関係をわきまえ、敬意の気持ちを表す言葉づかいです。3種類あります。それぞれについてご説明していきたいと思います。
敬語の種類
① 尊敬語:人の動作・状態・持ち物などを高めることで、その人に対して敬う気持ちをあらわす表現のことです。
(例)召し上がる・ご覧になる・いらっしゃる
② 謙譲語:自分の動作をへりくだった言い方で表現してして、自分が一歩下がった位置に立つことでその人に対して敬う気持ちをあらわす表現のことです。(例)いただく・拝見する・参る
③ 丁寧語:丁寧な表現を使ってその人に対してその人に対して敬う気持ちをあらわす表現の敬語のことです。
(例)食べます・見ます・来ます
「聞く」の謙譲語
「聞く」の謙譲語は「伺う」
「聞く」の謙譲語として適した表現は「伺う」です。
例えば「話を聞く」を謙譲語にすると「お話を伺う」になります。
この際の「伺う」は聴覚としての聞くということではなく
「質問する」「尋ねる」という意味です。
また「伺う」には「行く」「訪ねる」の謙譲語として用いられていますので、前後の文章ではっきり区別しましょう。
謙譲語は、相手を尊重し、自分や自分の所属グループを控えめに示す言い方です。ビジネスコミュニケーションにおいては、「お聞きする」、「お伺いします」、「承ります」といった表現がよく使用されます。これらは、直接的な表現よりも柔らかく、相手に敬意を示す効果があります。例えば、同僚に情報を求める場合でも、「聞く」と直接言うのではなく、「お伺いしてもよろしいでしょうか」と言い換えることで、より適切なコミュニケーションを心がけることが大切です。
他にも「拝聴する」「お聞きする」がある
「お(ご)~する」のパターンもあります。
「~」の中に「動作を表す動詞」を入れると簡単に謙譲表現を作ることができます。
「聞く」の場合は「お(ご)」+「聞く」+「する」=「お聞きする」になります。
「拝聴」は「ありがたく~する」という意味の「拝」と、「身を入れてきく」という意味の「聴」を組み合わせて作られた言葉です。講演会などで目上の人のお話を聞いたり、取引先の人の話を聞いたりするときに「拝聴」という表現が使われますが、かなり敬意の高い表現で堅過ぎるので、普通のビジネスシーンではあまり使うことはありません。
話し言葉ではなく、ビジネスメールなどの書き言葉に適しています。
謙譲語を用いたコミュニケーションは、尊敬語と同様に重要ですが、その使用状況は異なります。例えば、上司に報告するメールでは「お聞きしたいことがございます」と初めに記載することで、話題に踏み込む際の礼儀を示すことができます。また、顧客からの問い合わせに対しては、「ご質問にお答えいたします」という表現を用いることで、敬意を表しつつ対応を行うことが示されます。
「聞かせていただく」もある
「聞く」の謙譲語として「聞かせていただく」もあります。
「~させてもらう」の謙譲語「~させていただく」は、「許可や恩恵を受ける場面で使われる『受恵表現』(恩恵を受ける言い方)」で、非常に使い勝手の良い言葉です。
しかし、使い勝手がいいからと言って「~させていただく」に頼り切ってしまうと、会社の評判を落としてしまう可能性もありますので、頻繁に使うのは控えましょう。謙譲語で自分をへりくだれば良いというものではありません。
以下は「~させていただく」を連発して間違っている謙譲語の表現です。
【NG】◯◯は、風邪を引かせていただき、お休みを取らせていただいております。
【OK】◯◯は風邪を引いたため、休みを取っております。
【シチュエーション別】「聞く」の謙譲語
詳しい話を聞きたい場合
【例文】
*ご意見をお聞きしたいのですが、お時間をいただけますでしょうか。
*ご用件をお伺いしてよろしいでしょうか。
ビジネスシーンにおいて、 取引先の人や営業に来た人から話を詳しく聞きたい時などに「お聞きする」「お伺う」という言葉を使います。
直接会って話す時だけでなく、電話やビジネスメールでも使うことがあります。
その話をすでに聞いている場合
【例文】
*その件につきましては、◯◯を通じて話を伺っております。
取引先の先方からの話をすでに聞いており、先方に何度も同じ話をする手間を省かせるためにすでに話を聞いていることを伝える場面があります。
そのような時は「伺う」という言葉を使いましょう。しかし、注意が必要です。
自社の人(身内)から話を聞いていた場合は「◯◯を通じて」という言葉を付けましょう。
もし「◯◯から伺っております」と言うと、先方ではなく身内の人に敬意を払うことになってしまうため、気を付けてください。
「◯◯からお聞きしています」という表現も、先方ではなく自社の人(身内)に敬意を示すことになっています。
「◯◯から」という言葉を使う場合は
【例文】その件につきましては、○○から話を聞いております。
が正しい謙譲語の表現です。
講演会を聞き、感想を文面で伝える場合
【例文】
*講演会を拝聴いたしました。
*拝聴させていただきました。
この場合の「拝聴」+「いたす」や「いただく」の表現は二重敬語なのでは?と疑問に思うかもしれませんが、問題ありません。
かえって「拝聴」に「~させてもらう」の謙譲語である「~させていただく」という表現を付けることによって、相手へより一層の敬意を示すことができ、良いのです。
社内での謙譲語の使用法
職場内での謙譲語の使用は、特に日本のビジネスシーンにおいては欠かせません。自分の行動や発言が周囲に与える影響を考え、適切に表現を選ぶことが重要です。たとえば、同僚に対しても、自分の意見を「お伺いします」と前置きすることで、意見の押し付けがなく、円滑なコミュニケーションが期待できます。
社外での謙譲語の適用
社外の人との交流では、謙譲語がさらに重要になります。特に新しい取引先や外部のステークホルダーとの初対面では、信頼関係の構築に謙譲語が効果的です。例として、「お時間を頂戴して、ありがとうございます」や「ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます」といった言い回しは、相手に敬意を示しながらもビジネスの進行を促すことができます。
古文と古語に見る謙譲語の形式
日本語の古文や古語には、現代日本語の謙譲語の起源を見ることができます。歴史的文献や古典を通じて、謙譲語の変遷を学ぶことは、言語の深い理解につながります。これらの古文を分析することで、何故現代の謙譲語がその形をとるのか、その背景にある社会的・文化的要因を理解する手助けとします。このような視点から謙譲語の使用を理解することは、現代における言語の使い方にも影響を与えるため、非常に有意義です。
自分に適した謙譲語の選び方
自分の立場や状況に応じた謙譲語を選ぶことは、相手に対する敬意を示す上で非常に重要です。特に異なる職位や役職にある人々とコミュニケーションを取る際には、相手の立場を尊重し、自分の立場を適切に表現する謙譲語を使うことで、スムーズで建設的な関係を築くことができます。例えば、上司に対してはより尊敬の念を込めた謙譲語を、同僚に対してはやや緩和された謙譲語を使用することが適切です。
「聞く」の【尊敬語】は「聞かれる」「お聞きになる」
「聞く」+「れる」=「聞かれる」
「れる」「られる」の「尊敬の助動詞」を加えて尊敬表現にします。
また「聞く」の尊敬語は「れる」「られる」の他に、「お~になる」というパターンの尊敬表現もあります。
「~」の中に「動作を表す動詞」を入れると簡単に尊敬表現を作ることができます。
「聞く」の場合は「お」+「聞く」+「になる」=「お聞きになる」になります。
「お聞きになる」は、「聞く」という相手の動作へ敬意を表す「お~になる」という表現を付け加えることによってつくられた尊敬語です。
「聞かれる」より「お聞きになる」の方がより敬意を払った表現になります。
「聞く」の謙譲語に「お聞きする」があり、間違いやすいので十分に注意しましょう。
【例文】田中課長が移動になったことをお聞きになりましたか?
最も間違いが多い「聞く」の謙譲語
受付でお客様に頂戴は使わない!
【NG】お名前を頂戴できますか。/お名前をいただけますか。
【OK】お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
→「頂戴する」という言葉は「もらう」の謙譲語なので、名前をもらったりいただいたり出来ませんので不適切な表現です。
身内に敬意を払ってはいけない!
【NG】◯◯から伺っております。
【OK】◯◯から聞いております。
→敬意を払う矛先が話をしている相手ではなく身内に向いてしまっています。敬意を表すべき相手に敬語が正しく使われていないので不適切な表現です。
上司やお客様には謙譲語ではなく尊敬語を使う!
【NG】担当者に伺ってください。
【OK】担当者にお聞きください。/担当者にお尋ねください。
→「伺う」は「聞く」の謙譲語なのでお客様に謙譲語を使ってしまっていることになりますので、不適切な表現です。お客様には尊敬語を用いる必要があります。
【NG】部長、この講演は拝聴されましたか?
【OK】部長、この講演は聞かれましたか?
→上司に対しても尊敬語を使いましょう。「拝聴する」は「聞く」の謙譲語なので目上の人に使うのは不適切な表現です。
間違いやすい敬語10選!
【NG】◯◯様が参られています。
【OK】◯◯様がお見えです。
→「参る」は「来る」の謙譲語です。相手に謙譲語を使っているので不適切な表現です。
【NG】一緒に参りましょう。
【OK】お伴いたします。/ご案内いたします。
→先ほどと同様に「参る」は謙譲語なので、相手も一緒にへりくだる表現となってしまうので不適切な表現です。
【NG】申されていました。
【OK】おっしゃっていました。
→「れる」は尊敬の助動詞ですが、「申す」は「言う」の謙譲語なので不適切な表現です。
【NG】拝見されましたか。
【OK】目を通していただけましたか。/ご覧になりましたか。
→「拝」という言葉が「敬意を持つ」というような意味がある謙譲語なので、相手の動作に対して使うのは不適切な表現です。
【NG】お客様をお連れしました。
【OK】お客様をご案内いたしました。/お見えになりました。
→「お連れしました」ではお客様ではなく、その報告する相手に対して敬意を払っていることになるので不適切な表現です。
【NG】資料をご持参ください。
【OK】資料をお持ちになってください。
→「持参」は「持って来る」の謙譲語なので、相手に対して使うのは不適切な表現です。
【NG】お客様がお越しになられました。
【OK】お客様がお見えになりました。
→「お越し」は「来る」の尊敬語で、「お~になる」も尊敬表現なので二重尊敬になってしまい、不適切な表現です。
【NG】あなたが申されたように
【OK】あなたがおっしゃいましたように
→「申す」は「言う」の謙譲語なので、相手に対して使うのは不適切な表現です。
【NG】◯◯を担当させていただいております…
【OK】◯◯を担当しております…/◯◯担当の△△(名前)です
→「~させていただく」という表現は相手から要望があった場合に使うなので、自社から任命されている担当や役職に使うのは不適切です。
【NG】◯◯様でございますね。
【OK】◯◯様でいらっしゃいますね。
→「ございます」は「在る」の丁寧語なので、厳密には丁寧な表現として間違ってはいません。しかし、自分の行動や所有物をへりくだって言う謙譲語の表現もあるので、相手に敬意を表す表現をする場合は尊敬語の「いらっしゃる」を用いるのが適当です。
「聞く」の謙譲語の英語表現
何かを尋ねる場合は「ask」
何かを尋ねる際の「聞く」の謙譲語として、「ask」を使いましょう。
英語には敬語表現があまりなく、「ask」の動詞自体にも敬う意味合いがありません。
英語で敬語表現をしたい場合は、丁寧な言い回しを意識しましょう。
<例文>
Could I ask you some questions about something?
(いくつかお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか。)
May I ask your name?
(お名前を伺ってもよろしいですか。)
話を聞く場合は「hear」「listen」
単に話を聞く際は「hear」または「listen」を使いましょう。
どちらも「聞く」という意味ですが、若干意味が異なります。
「hear」は「自然と耳に入ってくる」、「listen」は「注意して耳を傾ける」という意味があります。
また「ask」と同様に、「hear」や「listen」の動詞自体に敬う意味合いがありません。
英語で敬語表現をしたい場合は、丁寧な言い回しを意識しましょう。
<例文>
I would like to hear the story more details.
(その話を詳しく伺いたいです。)
I have already heard of it from my boss.
(そのことについては社長を通じてすでに伺っております。)
I am looking forward to listening to his lecture.
(私共は、彼の講演を拝聴させていただくことを楽しみにしています。)
I have learnt a lot by listening to her valuable lecture.
(彼女の貴重な講演をお聞きすることができて大変勉強になりました。)
まとめ
今回は、「聞く」の謙譲語をシチュエーション別やよく使われる間違いをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。「聞く」の謙譲語は「伺う」だけでなく、「お聞きする」や「拝聴する」などシチュエーションによってさまざま使い分けるといいことがわかりました。社会人になって敬語で失敗しないためにもしっかりマスターしときましょう!