ビジネスにおいて、相手の都合を考えて何かを提案したり、お願いするのはとても大切なおポイントです。そんな相手の都合を考えるときによく使われるのが「ご都合がよろしければ」という言葉。今回は「ご都合がよろしければ」の意味や使い方、使うときの注意点、言い換えられる類語などを紹介していきます。正しい意味を把握して、間違った使い方にならないよう確認していきましょう。
目次
「ご都合がよろしければ」の意味とは?
まずは「ご都合がよろしければ」の意味を確認していきましょう。
「ご都合」とは「具合がよいか悪いか」いうことを意味する言葉です。一方、「よろしければ」とは「よい」の丁寧な言い方である「よろしい」の仮定法の形で、「差し支えがなければ」「支障がなければ」という意味です。
つまり、「ご都合がよろしければ」の意味は「具合が差し支えなければ」「日程に支障がなければ」というものになります。
目上の人にも問題なし?「ご都合がよろしければ」の使い方
「ご都合がよろしければ」は単体では使わず、相手に参加を促したり、何かに誘ったり、何かを勧めたりする際に使います。「~してください」と相手に命令をするわけではなく、相手の要望や予定を尊重している点が特徴的です。
では実際にどのような言葉と組み合わせて使うのか見ていきましょう。
①ご都合がよろしければご参加ください
イベントや何かの集まりなど、相手を誘うときに使う言葉です。
ただの「ご参加ください」だけだと、必ず参加をしなければならないのか、参加しなくても問題ないものなのかなど「参加しなければならない程度」がわかりません。しかし「ご都合がよろしければ」がついていることで、「あなた自身の予定に沿って参加の有無を判断してください」というニュアンスになります。
「ご参加ください」のみだと少し冷たい印象を受ける人もいるかもしれません。
その場合は「ご参加ください」の最後に「ませ」をつけて、「ご参加くださいませ」とするとやわらかい印象になり、参加を歓迎しているようにも聞こえます。時と場合により、「ご都合がよろしければご参加ください」と「ご都合がよろしければご参加くださいませ」を使い分けていきましょう。
②ご都合がよろしければご参加いただきますようお願いします
①の「ご都合がよろしければご参加ください」とほぼ同じ言葉です。
ただし、「ご参加ください」のほうが参加するかしないかの判断を相手にゆだねている印象があり、「ご都合がよろしければご参加いただきますようお願いします」は日程や予定が合えば参加しなければいけない雰囲気があります。「どちらかというと参加してほしいけれど、体面上相手の都合も聞いたうえで誘いたい」というときに使うといいでしょう。
「ご参加いただきますようお願いします」を敬語表現の観点からみると、「ご~いただき」は「~してもらう」の謙譲語です。相手に参加してもらうことへの敬意を示す表現です。そして「ますよう」とは、丁寧語である「ます」に希望の意味がある「ように」を合わせた言葉です。つまり「ご参加いただきますようお願いします」は、謙譲語と丁寧語の2つを使っている非常に丁寧な言い方なのです。
加えて「ご都合がよろしければ」という相手に対する思いやりの言葉を組み合わせることで、非常に丁寧、かつきちんと相手の立場にたってコミュニケーションができる人という印象になります。上司や社外の人など目上の人に何かのお誘いをする際には是非この言葉を使っていきましょう。
③ご都合がよろしければお越しください
自社のイベントや集まりなどに来てほしいときに使える言葉です。
「お越し」とは「行くこと」「来ること」の尊敬語です。「ください」は相手に何かを要望、懇願するときに使う補助動詞です。
つまり「ご都合がよろしければお越しください」は「もしよかったら来てください」と同意です。「お越しください」ですから、自分が主催者側に立っていることが前提になります。そのため「ご参加ください」よりも、よりその集まりを催す立場として誘っているイメージが出てきます。
ちなみに「ください」はひらがな表記と漢字表記の「下さい」がありますが、相手に何かをお願いする意味の補助動詞として使う場合はひらがな表記が正しいので覚えておきましょう。
なお「ご参加ください」と同様に「~ください」の文末に冷たい印象を持つ人もいます。もう少しやわらかく言いたいという場合には「お越しくださいませ」とすると良くなります。
④ご都合がよろしければいかがでしょうか
「ご参加ください」や「お越しください」は何かのイベントや集まりに誘うため、「参加する」「来る」などの直接的な動作を示す言葉を使ったものですが、「いかがでしょうか」は相手に伺いをたてるだけのざっくりとした言葉です。
「いかが」は相手を誘ったり、相手に勧めたりする意味を持つ副詞です。「でしょうか」は「だろうか」の丁寧語になります。つまり、自分が相手に参加してほしい、誘いたいと思っているイベントや集まりについて「あなたはどうですか?」と暗に誘っていることになります。
「参加」や「来る」などの直接的な表現を使わずに誘うことに加えて「ご都合がよろしければ」とつけることで相手の都合を鑑みるという、かなり謙虚な姿勢がみられます。自分の立場から強く誘うのはおこがましいときなどに使える言葉と言えるでしょう。
「ご都合がよろしければ」を使うときの注意点
断ってほしくないときは使わない
「ご都合がよろしければ」を使うということは、相手に「自分自身の都合を含めて、その誘いに乗るか乗らないかの判断をしてください」と伝えていることになります。そのため、幾ら「ご都合がよろしければ」が相手のことを思いやって使える丁寧な言葉だとしても、参加の判断のジャッジは相手にゆだねられているため、必ず参加してほしいものを誘うときに使うクッション言葉としては使えません。
もし断ってほしくない、必ず参加してほしいものであるならば、「恐れ入りますが」や「お忙しいところ恐れ入りますが」などのクッション言葉を使いましょう。
ただの「ご参加ください」だと一方的ですが、「お忙しいところ恐れ入りますがご参加くださいませ」のようにすることで、貴重な時間を割いてまで参加してくれることへの感謝やこちら側の恐れ多い気持ちなどを表現することができます。
「ご都合がよろしければ」の類語とは?
①差し支えなければ
「差し支え」とは「都合の悪い事情、支障」のことを言います。つまり「差し支えなければ」は「都合の悪い事情がなければ」という意味になります。読み方は「さしつかえなければ」です。「ご都合がよろしければ」は相手の「都合」を聞いていますが、「差し支えなければ」は相手の「悪い事情」があるかないかを聞いて、それをもとに判断してくださいという意味が含まれています。
言葉自体は敬語ではありませんが、相手に判断をゆだねて、相手の都合を最優先にしているため、社外の人や上司などの目上の人にも使える言葉です。ただし、「ご都合がよろしければ」と同様に断ってほしくない話題のときには使えません。
また、メールなどの文書でも使えますが、どちらかというと話し言葉で使われることが多いです。例えば社外の人から会社の代表電話に連絡があった際、相手の名前を正しく聞きたいときに「差し支えなければ、お名前と会社名をもう一度伺ってもよろしいでしょうか」と聞きます。
名前や会社名を答えることは、相手の「都合」というよりも、相手が「嫌かどうか」という部分になるため、「ご都合がよろしければ」よりも「差し支えなければ」のほうがぴったりです。特に相手の年齢などプライベートな部分を聞くときには「差し支えなければ」が活躍します。
【例】
・差し支えなければ、お客様のお名前とご年齢をお伺いしてもよろしいでしょうか。
・差し支えなければ、このあとこの会にご出席されている方にあなたをご紹介したいのですが、よろしいでしょうか。
・差し支えなければ、この後10分ほどお時間よろしいでしょうか。
・差し支えなければ、この案件について詳しくお聞かせ願えませんか。
②不都合でなければ
「不都合でなければ」は「差し支えなければ」と同様に、「都合が悪いところがなければ」という意味になります。
「ご都合がよろしければ」は「都合がよければ」、「不都合でなければ」は「都合が悪くなければ」ですから、「ご都合がよろしければ」からそのまま言い換えられます。「不都合」という言葉から相手の都合がつかない点を伺っているのがすぐに読み取れるため、誰にでも理解しやすい言葉です。
なお、これまでと同様、断ってほしくない場合は使わないようにしましょう。
【例】
・不都合でなければ、明日そちらにお伺いしてもよろしいでしょうか。
③ご面倒でなければ
「ご面倒でなければ」は「面倒でなければ」に「ご」を付けて丁寧にした言葉です。
相手の都合というよりも、相手にかかる負担や手間を気遣って、何かをお願いするときに使うことが多いでしょう。自分が依頼することで相手の負担が増える場合に「ご面倒でなければ」を使うと良い人間関係を保って、コミュニケーションを取ることができます。
ちなみに「ご面倒でなければ」を使って何かをお願いされた場合、返答の仕方としては「面倒ではございませんが」を文頭につけて、理由を伝えて断るようにしましょう。理由を言わずに断ると、「面倒だったのかな…」と相手を不安にさせることになります。理由を伝えにくい場合は「面倒ではございませんが、時間が厳しいので難しいです」などと返答するといいでしょう。
【例】
・ご面倒でなければ、本日一度弊社にお立ち寄りいただけませんか。
④問題がなければ
「ご都合がよろしければ」と同様、相手にとって「問題がなければ」何をしてほしいときに使う言葉です。何かの集まりへの参加を促すときに使うというよりも、相手に何かを確認してほしいときに使うことが多いです。「問題がなければ」の「が」を抜いて「問題なければ」ということも可能です。
【例】
・問題がなければ、こちらにサインをお願いいたします。
⑤可能であれば
自分がこれから依頼することが、相手にとって可能であるかどうかを直接的に伺うときに使う前置きの言葉です。少し難しそうだけど、ダメもとで依頼したいときなどは「可能であれば~していただけると幸いです」というと良いでしょう。ポイントとしては文末を「~してください」ではなく「~ると幸いです」にしているところです。「やってくれると嬉しいな」という気持ちを出すことで、無理強いはしていない雰囲気になります。
【例】
・可能であれば、明日までに添付の資料の確認をしていただけますと幸いです。
「ご都合がよろしければ」を英語で表現するには?
英語で「ご都合がよろしければ」という言い方はさまざまにあります。
例えば「If you don’t mind~」で「もし~することに差し支えがなければ」となります。「もし時間が許すようでしたら(時間をかけることに差し支えがなければ)、パーティーにご参加ください」は「If you don’t mind taking your time,please come to join the party.」です。
また「If it is convenient for you」で「もしあなたのご都合がよろしければ」になります。これを使って「もしあなたのご都合がよろしければご参加ください」は「If it is convenient for you please participate in that.」となります。
「可能であれば」に近い「ご都合がよろしければ」は「If possible,」です。「If possible, please space the time to meet with us on March 1st.」で「ご都合がよろしければ、3月1日にお時間をいただけませんか」となります。
まとめ
「ご都合がよろしければ」について、意味や使い方、使うときの注意点、類語などを紹介してきましたが、いかがでしたか。相手に判断をゆだねつつ何かに誘うとき、何かをお願いするときに使える便利な言葉であることがわかりました。特にビジネスシーンでは相手の立場に立ってコミュニケーションを取ることは大切なポイントです。「ご都合がよろしければ」はそんなビジネスシーンにぴったりな言葉だと言えるでしょう。