転職先が決まった際に転職先からさまざまな書類の提出を求められます。その1つに『源泉徴収票』があります。転職する際に必ず提出しないといけない重要な書類です。
そこでこの記事では、そもそも『源泉徴収票』とはどのような書類なのか、提出が必要な理由や提出に間に合わない時の対処法についてご紹介したいと思います。『源泉徴収票』に関わる問題もいくつか列挙しているので、この記事を読んでスムーズに転職しましょう。
目次
そもそも『源泉徴収票』とはいったい?
『源泉徴収票』について説明していきたいと思います。
源泉徴収票とは、会社やアルバイト先から年末にもらう書類のことで1月1日から12月31日の1年間に「どれくらいの収入だったか」「どれくらいの控除があったか」「所得税をどれくらい払ったか」などが書かれています。4月入社の新入社員であれば4月から12月までの金額が書かれており、もし既存の従業員が10月に退職した場合は1月から10月までの金額が書かれています。
会社は、1年間の給与支払額が確定すると、従業員に対して「年末調整」を行います。年末調整とは、本来徴収する必要がある所得税の年間総額を再計算し、源泉徴収した合計額と再度比較し、過不足分を調整することです。その結果を従業員別に源泉徴収票を作成し、翌年1月末までに交付します。
つまり、源泉徴収票を見れば、あなたが1年間企業からもらった給与額や支払った税額が分かるのです。
転職にあたって会社から受け取る源泉徴収票の種類
転職にあたって会社から受け取る源泉徴収票は大きく分けて2種類あります。
「給与所得」の源泉徴収票
1月1日から12月31日の1年間にもらった給与やボーナスなどの総額と、支払った所得税の金額が記載されている書類のことです。基本的に「年末調整」後の12月の給与明細と一緒にもらいます。
「退職所得」の源泉徴収票
退職金が支給された時に発行される書類のことです。会社から支給された退職金と、そこから天引きされた所得税の金額が記載されています。退職金の金額はその時点で確定しているので、給与所得のような年末調整の手続きは不要です。
2種類の源泉徴収票の見方
「給与所得」の源泉徴収票
【支払金額】
1年間会社からもらった給与の総支給額です。基本給や役職手当、資格手当などの固定手当・残業代・インセンティブ・ボーナスなど、1年間に会社から支給された全てのお金の合計金額が記載されます。つまり「年収」にあたり、給与所得控除や所得控除が適用される前の金額です。
【給与所得控除後の金額】
支払金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額です。「給与所得控除額」とは、個人事業主の必要経費にあたるもので、会社から給与をもらっている社員の場合は必要経費の代わりに支払金額から「給与所得控除額」を差し引いて所得税を計算します。差し引く金額は、国税庁がその人の年収によって決まります。また「給与所得控除額」自体は源泉徴収票には記載されていません。
【所得控除の額の合計額】
社会保険料控除・生命保険料控除・配偶者控除・扶養控除・基礎控除・地震保険料控除などの控除金額を合計した金額です。所得税を計算する時は、扶養家族がいたり地震保険を払っていたり、個人的事情に応じた色々な所得控除が「給与所得控除後の金額」から引かれます。
【源泉徴収税額】
1年間に納付した所得税の金額です。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた「課税所得金額」に、所得税率をかけて計算された金額です。所得税率は、課税所得額によって決定します。この所得税率や各所得控除の金額は源泉徴収票に記載されていないので、国税庁のホームページで確認してみましょう。
【所得控除の詳細】
社会保険料控除・生命保険料控除・配偶者控除・扶養控除・基礎控除・地震保険料控除などの各所得控除の金額や控除額の基となる保険料の金額、扶養家族の人数など所得控除の詳細が記載されています。記載内容は年末調整を行う前に会社から提出を求められる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」に基づいて記載されています。
「退職所得」の源泉徴収票
【支払金額】
会社から退職金として支給された金額です。定年退職や中途退職でも支給されるお金が退職金にあたります。退職金は、退職を理由に支払われる退職手当全てが含まれます。
【源泉徴収税額】
退職金に対して納付した所得税の金額です。計算方法は、通常の給与所得の場合と違い「(支払金額-退職所得控除額)×50%」で出た「課税退職所得金額」に対して課税されます。
【特別徴収税額】
退職金に対して納付した住民税の金額です。退職所得控除を引いた「課税退職所得金額」に対して、「市町村民税6%」「道府県民税4%」の割合で算出されます。それぞれの金額が市区町村と都道府県に分けて支払われます。通常の給与所得と同じで、住民税は合計で約10%です。
【退職所得控除額】
勤続年数の長さから計算した退職所得控除の金額が記載されています。退職所得控除は、勤続年数の長さに比例して控除額が大きくなる仕組みです。退職金は老後の生活資金としての意味合いがあるので、税金の負担が小さいです。
転職時に前職の源泉徴収票の提出が求められる理由
では、転職時になぜ前職の源泉徴収票が必要なのでしょうか。求められる理由についてご説明していきたいと思います。
転職時に前職の源泉徴収票の提出が求められる理由は、前職の源泉徴収票がないと、転職先の会社で年末調整が出来ないからです。前職の源泉徴収票を確認し、前職分と現職分の給与支払額や控除額を合計して年末調整をします。
1年の途中で退職した前職の会社では年末調整ができません。なので「自分で確定申告をする」か「転職先で前職分の収入も含めて年末調整をしてもらう」かどちらかの手続きをしなければなりません。どちらの場合も、前職の源泉徴収票がなければ手続きができません。
転職時に源泉徴収票の提出が不要なときがある?
ほとんどの人が転職先の会社に源泉徴収票を提出しますが、提出が不要なときがあります。
それは、前職の給与が前年中に全て支払われ、転職する年に一切給与の支払いを受けていないときです。合算して年末調整を行う必要がないので、前職の源泉徴収票の提出は不要です。
しかし、12月に退職した場合は要注意です。もし仮に2021年12月に退職して、2022年1月に12月分の給与が支払われた場合「源泉徴収票は不要」と思うかもしれません。確かに2021年の源泉徴収票は不要ですが、2022年の1月に給与をもらっていることから、転職先には2022年の源泉徴収票を提出しなければなりません。不要だからといってすぐに捨てたり、失くさないように注意しましょう。
源泉徴収票はいつもらえる?
源泉徴収票は、1月1日から12月31日まで1年間に支払われた給与額と控除額が記載された書類です。基本的に12月の給与やボーナスの金額が確定し、年末調整が終了してから交付されますので、12月や1月に交付されるでしょう。
しかし、年の途中で退職した場合は、その年の1月から退職日までの給与支払額、源泉徴収税額、社会保険料額を記載し、源泉徴収票が発行されます。
また、所得税法第226条では「通常は該当年の翌年の1月31日まで、中途退職者については退職日から1ヵ月以内に源泉徴収票を交付しなければならない」と定められています。
退職金の支給があった人は、退職所得の源泉徴収票も交付されます。退職所得の源泉徴収票も退職後1カ月以内に交付されます。
源泉徴収票はいつ提出を求められる?
転職先の会社から、いつ源泉徴収票の提出を求められるかと言うと、一般的に正式に入社が決まったときです。前職の会社に連絡をして遅くなったとしても年末調整の作業に間に合うように11月〜12月までには提出しましょう。
また、会社によって異なりますが、内定を出す前に源泉徴収票の提出を求める場合があります。源泉徴収票を見ると前職の給与支給額が正確に分かるので、その金額を参考に年収を決定するからです。
【転職時の源泉徴収票】こんな時どうすればいいの?
前職の会社から源泉徴収票をもらえない時は?
前職の会社から源泉徴収票をもらえないと、転職先の会社で年末調整をすることができません。源泉徴収票の交付は所得税法で定められていますが、前職の会社からなかなか源泉徴収票が交付されない場合は、「税務署や労働基準監督署に相談する。」と伝えましょう。すぐに交付してくれます。万が一、それでも交付されない場合は、自身が住む市町村の税務署に相談し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。この書類が提出されると、税務署から会社に連絡がいき、源泉徴収票を交付するように税務指導されます。
また、前職の会社が倒産してしまい、前職の会社の関係者と連絡が取れず源泉徴収票が交付されない場合もあります。このような場合も税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。提出すると、源泉徴収票が交付されます。
前職の源泉徴収票が年末調整に間に合わない時は?
年の途中で退職した人の源泉徴収票は退職日から1ヶ月以内に交付すると所得税法で定められていますが、前職の会社がなかなか交付してくれない場合があります。
年末近くに転職した人は前職の源泉徴収票を早めにもらわないと、転職先の会社での年末調整業務に間に合わない恐れがあります。なので、前職の会社に早めに源泉徴収票を交付してほしいことを事前に伝えておきましょう。
もし、前職の会社から源泉徴収票の交付が遅く、転職先の会社の年末調整に間に合わない場合は前職と現職の源泉徴収票を基に、自分で確定申告を行わないといけません。
前職の会社からもらった源泉徴収票をなくしてしまったときは?
転職先の会社で前職分の収入も含めて年末調整をしてもらう場合も自分で確定申告をする場合もどちらにしても前職の会社からもらった源泉徴収票は必要になります。しかし、間違って捨ててしまったり、失くしてしまったケースも少なくありません。万が一、前職の会社からもらった源泉徴収票を失くしてしまった場合は、前職の会社に再発行の依頼をしましょう。会社によって異なりますが、約1〜3週間ほどで届くでしょう。
源泉徴収票の再発行は会社にとって余計な手間なので、退職した会社に依頼する時にきちんと謝罪しましょう。そもそも重要な書類なので、失くさないように保管しましょう。
まとめ
今回は、『源泉徴収票』の説明や転職時に提出が必要な理由、提出に間に合わない時の対処法などについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
源泉徴収票は年末調整の際に必要不可欠な書類であり、転職が決まった際に前職の源泉徴収票の提出が求められます。一般的に12月か翌年の1月までに会社から従業員に交付されますが、年の途中で退職した場合は退職日から1ヶ月以内に交付されます。これは所得税法に定められていますが、なかなか交付されない場合は「税務署や労働基準監督署に相談する。」と明言しましょう。それでも交付されない場合は自身が住む市町村の税務署に相談し、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。
転職先の会社に前職分の収入を含めた年末調整をしてもらう場合でも自分で確定申告をする場合でも、前職の源泉徴収票は必要になります。重要な書類なので、失くさないように大切に保管しましょう。