フェルミ推定をご存じでしょうか?
コンサル系企業を目指していたり、コンサル志望だったりする方は、一度は就職や転職活動で耳にしたことがあるでしょう。
逆に、そのような業界や業種に縁がなかった方には耳馴染みのない言葉かもしれません。
フェルミ推定は、今もコンサル面接で思考力をみるのに有効な一つの手段だといわれています。
デジタルシフトが推進される世の中においても、フェルミ推定のように自分の頭を使って考え、物事を数値化する能力は必要です。
そこで本記事では、フェルミ推定の目的や基本的な考え方を解説していきます。
何だか難しそうだなぁ…と思う方は、ゆっくり読み進めていってくださいね。
目次
フェルミ推定とは?
フェルミ推定( Fermi Estimate)とは、実際に調査することが難しいような量や数を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、計算して求めることです。
名前の由来は、ノーベル物理学賞を受賞したイタリア出身の物理学者「エンリコ・フェルミ」から来ています。
なお、フェルミ推定で特に有名なものは、「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」という問題です。
これは、フェルミ自身がシカゴ大学の学生に対して出題したとされています。
このように、見当もつかないような数や量に関して推定する問題のことをフェルミ推定といいます。
考え方や解き方は後述しますが、フェルミ推定はコンサルティング系企業会や、外資系企業などの面接試験で用いられることが多いです。
ただ、フェルミ推定に必要な考え方は、理系学部では大学の講義などで教えられていたり、コンサル戦略をビジネスとする場面では、当たり前のように用いられています。
なぜ面接でフェルミ推定を問われるの?
では、採用面接でフェルミ推定を問うことは、どのような意味をもつのでしょうか。
理由がわかれば、フェルミ推定を知っておく必要性も理解できると思います。
そこで、面接官がフェルミ推定を通して何を見ているのかを解説していきます。
第1に、思考力です。
フェルミ推定を解くには、結果を導き出すためにどんなデータが必要なのか、それらをどのように活用するのかという思考力が求められます。
企業は、フェルミ推定への取り組み方から、応募者が持っている知識レベルや思考力を見ています。
第2に、発想力です。
面接官が注目しているのは、思考力の次に発想力です。回答を導くために、どのような切り口でアプローチしていくのかをみています。
たとえば、日本に電柱は何本あるか、という問題の場合、日本の道路ではどのくらいの広さに電柱が1本あるか、山や川などには電柱がないので日本の国土でみるとどうかなど、どのような角度からアプローチすれば回答にたどりつけるか、その発想力も面接官は注目しているのです。
第3に、コミュニケーション力です。
就職活動の面接では、フェルミ推定が出される場合、1人で考えることもありますが、複数で回答を導くグループワークのケースも多いです。
その際に、あなたが他のメンバーとどのようにコミュニケーションを図っているかも、面接官はみています。
グループワークでは、決められた時間内に作業を終わらせるという実務に近い状態が用意されており、メンバー全員の協力が必要不可欠です。
様々な意見が出た際にあなたがどう対応するか、周りをどのくらい見ているか、全く意見をしない人にはどうするか、どのようなコミュニケーション能力もフェルミ推定では注目されています。
フェルミ推定の目的
フェルミ推定でみられる思考力について、もう少し具体的に解説していきます。
業種・業界問わず、社会人にとっては必要な能力なので、知っていて損はないですよ。
論理的思考力
論理的思考力は、社会人にとって必要不可欠なスキルです。
論理的思考力は「ロジカルシンキング」とも呼ばれ、関連するビジネス本はたくさん出版されています。物事を筋道立てて考える力は社会人の基本スキルとして、とても重要視されています。
論理的思考力は、直感やイメージで「何となく考える」という直感的思考と比較されることも多いです。
生きていく上で起こる全てのことには、必ず原因があります。その因果関係をひも解くことができれば解決策が見えてきます。
社会人になれば、目の前の仕事が「なぜそうなったのか」を理解し、解明することで改善していくことが求められます。
フェルミ推定では、その論理的思考力が備わっているかをみられます。
そのため、正確な回答は求められていないということを覚えておきましょう。
フェルミ推定は正解があるわけではなく、あくまであなたの「考え方」がみられているのです。考えるのは正しい答えではなく、どうすれば回答を導きだすことができるのかという、プロセスとロジックです。
柔軟性のある思考力
柔軟性のある思考力も、ビジネスシーンでは非常に重要な能力です。
柔軟性があれば、急を要する場面に対応できるようになります。人は問題が発生すればパニックになり、頭が真っ白になる人も多いです。
しかし、柔軟性のある思考力が備わっている人は、緊急事態に陥っても目の前の事象を冷静にみることができ、効率的に解決策を導き出すことができます。
また、解決へのプロセスにおいてもマルチな考えをもち、行動に移れることも、柔軟性のある思考力の特徴です。
企業での仕事や部署は1つではありません。
そのため、1つの仕事だけ、1つの部署だけではなく、複数の場において活躍できる人材が求められます。
マルチに活躍するためには、柔軟な思考力と豊かな創造力が必要です。
その部署ではどのような役目を果たすべきなのか、その仕事はどのように遂行すればいいのか。それらに柔軟に対応できる人は企業にとって大変魅力的な人材です。
フェルミ推定が出題されやすい業界
フェルミ推定は、外資系企業ではよく出題される傾向にあります。
また、コンサルティングファームや投資銀行といった業界は、思考力と提案力を実務に要するため、採用面接では高確率で出題されるようです。
そもそも、コンサルティングとはクライアントが抱える問題を解決していくことです。
クライアントの問題を解決するコンサルタントには論理的かつ柔軟な思考力が求められます。
フェルミ推定は、コンサルタントに必要な以下の能力を見極めるのに適した問題なのです。
・論理思考力 ・仮説を立てる能力 ・ビジネスセンス ・計算力 ・対話力 |
また、企業の M&A や資金調達の提案をしていく投資銀行の業務も、同様の能力が必要となるので、フェルミ推定が重視されています。
フェルミ推定の攻略法
続いては、フェルミ推定を課せられた際の攻略法を解説していきます。
考え方や回答を導くための基本的なフローになりますので、しっかりおさえておきましょう。
例題として、次の問いを用意しました。
例題|日本に口紅は何本あるか? |
前提を定義する
前提条件をまず理解しましょう。
「口紅」をどのように定義するか、何を「口紅」として数えるのかを決めるのです。
口紅と言ってもグロスや色付きリップなど様々なものがありますよね。
そのため、定義を決め、限定しておくことはとても大切です。
整理する
次に、問題を解くために行うべきことは、前提条件の「必要条件」を洗い出し、整理することです。口紅の数を出すためにはどのようなデータが必要で、何を導き出せば良いのかを洗い出していきましょう。
口紅の定義:グロスや色付きリップ、リップクリーム、リップバームは含まない 本数:ドラッグストアやデパート、ECサイトではなく「個人が保有する口紅の本数」 |
解答へのアプローチを考える
前提条件を確認し、出すべき回答の整理が出来たら、アプローチ方法を決めます。
フェルミ推定では思考力が重要視されるので、回答が正確な数値と乖離していたとしても問題ありません。
ただし、結果が間違っていて良いとはいえ、アプローチ方法で「基本的な情報」を知らずに適当に仮説を立ててしまうと、最終的な回答が実際の答えと大きく乖離してしまう可能性があります。
最初に扱う数値があまりにも現実離れしていると、最終的な数値も必然と大きく乖離が出てくるのは当然ですよね。そのため、見当違いな数値にならないよう、使うデータはある程度信憑性のあるものにしましょう。
フェルミ推定の問題を解いていく際に活用する、根拠となる数値はとても重要です。信憑性のある数値を知っているかどうかは非常に重要で、知っている・知っていないではライバルに大きな差をつけられることもあります。
あなたが志望している企業で、フェルミ推定が必須もしくは過去に出題されていたら、必ず基本的な数値は把握しておいてください。
覚えておいて損のない基本的な情報には、以下のようなものがあります。
- 日本の面積
- 日本の人口
- 日本の世帯数
- 東京の人口
仮説を立てる
仮説を立てるというのは、アプローチ方法で決まった内容を活用して、「おそらくそうであろう」という根拠と筋道を描くことです。
今回の例題では、次の2点を計算することで日本にある口紅の数を算出できます。
・日本の人口から女性の数は半分とみなす ・20歳以上の女性の人数を算出する |
まず、日本の人口を年齢と世代と性別でわけます。なお、今回の記事ではLGBTQにみられる多様性にはふれず、生物学的性にのみフォーカスします。
そして、口紅を自分のお金で買えそうなのはアルバイトをしている、社会人である、といった観点からおおよそ20歳以上としました。
計算方法は次で解説します。
計算する
結論、計算式は(20歳以上の女性の人数)/(日本女性の数)です。
各データの数値をあてはめることは割愛しますが、計算式で算出された数値が的外れな答えになっていないかを確認しましょう。
面接官が見ているのはあくまで思考力ですが、あまりにおかしな数値を出してしまうと、「ちゃんと考えたのかな」「適当に答えを出していないかな」など、信憑性を疑われることもあるので注意です。
フェルミ推定の例題
有名なフェルミ推定であげた「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」を例に、考え方をみていきましょう。
まず、前提となるデータを用意します。
・シカゴの人口を300万人とする ・シカゴの1世帯あたりの人数は、平均3人とする ・10世帯に1台の割合でピアノを持っているとする ・ピアノ1台の調律は、平均して1年に1回行うとする ・調律師が1日に調律するピアノの台数は3つとする ・週休2日の場合、調律師は年間におよそ250日ほど働くとする |
次に、以上のように仮定して出した数値を元に次のように計算→推論します。
・シカゴの世帯数を計算すると(300万/3)=100万世帯 ・シカゴでのピアノの総数を計算すると(100万/10)=10万台 ・よって、ピアノの調律は年間に10万件程度行われる ・一方、ピアノの調律師1人あたり、1年間に250×3=750台程度を調律する ・調律師の人数は10万/750=130人程度と推定される |
もちろん、前提データの信憑性に影響を受けるので、あくまでここで算出された量・数値であるため、大切なのは「およそ」や「程度」であることです。
まとめ|フェルミ推定は簡単な問題から慣れていこう
いかがでしょうか。
今回は、フェルミ推定をテーマに、就職・転職活動で役立つ基本的なお話をしてきましたが、やはり難しかったでしょうか。
まず、覚えておいて欲しいことは、フェルミ推定には答えが存在しないということです。
大切なのは答えではなく、答えを出すまでの考え方です。
そもそも、フェルミ推定が苦手という方は、フェルミ推定の問題で求められている目的を理解していない可能性があります。フェルミ推定は簡単な問題からトライし、考え方や解き方のコツを掴んでいってください。
「習うより慣れよ」という言葉にもあるように、理屈で教えてもらうよりも何度も何度も実践を繰り返して慣れることが大切なこともあります。
フェルミ推定に関する書籍も売っていますので、外資系企業やコンサルティングファーム、投資銀行を目指していない方でも、習得して損はないスキルです。
論理的かつ柔軟な思考力をトレーニングする意味でも、フェルミ推定の問題にぜひトライしてみてください。
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