近年、非正規雇用の増加により、派遣社員として働く方が増えてきました。正社員と比較すると、手当や給与面で不利なイメージのある派遣社員ですが、ボーナスはもらえるのでしょうか?
この記事では、派遣社員でも賞与(ボーナス)をもらう方法と、支給されるケースを解説します。
目次
派遣社員でも賞与はもらえる?
結論からいうと、派遣社員でも賞与はもらえることはあります。企業の制度によって支給されるところとされないところがあるため、一概に全ての派遣社員が賞与をもらえるわけではありません。正社員よりも待遇は下がるため、基本的にボーナスはもらえないと考えておきましょう。
そもそもボーナスとは
ボーナスとは、主に夏と冬の2回に渡って支給されるお金のことです。賞与ともよばれ、通常の給与とは別途で支給されます。ボーナスは、会社の業績や、個人の実績、評価に基づいて金額が決定します。支給日までの半年間を査定の対象として、評価する仕組みです。
一般的には毎月の給料2〜3ヶ月分が支払われることになりますが、企業の規模によって1ヶ月分しかもらえないこともあります。勤続年数が長くなったり、実績が評価されて基本給が上がると、その分ボーナスの金額は多くなる傾向があります。法律で支払い義務があるわけではないので、ボーナスが出ない企業もあるので覚えておきましょう。会社規定にボーナス支給の記載があるかどうかが、ボーナスの有無の指標となります。会社規定を見てボーナスがあることがわかったら、支給回数や何ヶ月分のボーナスが支給されるのかを確認しておきましょう。
派遣社員にボーナスが支給されない理由
上記の項目で、基本的に派遣社員へのボーナス支給はないと説明しましたが、なぜ派遣社員にはボーナスが支給されないのでしょうか?
結論からいうと、給与の計算方法が特殊で、基本給がパート・アルバイトと比較して高めに設定されているからです。正社員ほどの待遇がない派遣社員は、交通費やボーナス分を含めた金額が基本給に組み込まれています。一応ボーナスを渡すとしたらこれくらいという金額、または少額のボーナスが基本給に含まれて支給されるため、まとまった夏と冬のボーナスはないのです。
ボーナスがもらえるケース
ここでは、派遣社員でもまとまったボーナスがもらえるケースについて解説しています。派遣会社へ登録しようか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
もともとボーナス有りの会社で働く
シンプルな方法ですが、もともとボーナスの支給がある会社に応募して働けば、ボーナスはもらえます。勤務態度が良好で、賞与の支給条件を満たしていれば、派遣社員でもボーナスはもらえるので覚えておきましょう。
紹介予定派遣と常用型派遣
派遣会社での働き方には、「登録型派遣」と「常用型派遣」と「紹介予定派遣」の3種類があります。
登録型派遣は、世間一般でいうところの派遣社員のイメージ通り、雇用先会社に登録して、雇用先とは違う就業先の会社へ派遣される方式です。一定の期間契約があり、契約期間が満了になると別の現場へ移ります。仕事が定期的に変わるため、1つの会社に長く勤められず賞与が出る可能性は低くなります。
常用型派遣とは、雇用期限のない契約を派遣先と結ぶ契約形態です。派遣社員特有の「いつ契約を切られるかわからず不安定」というデメリットがなく、正社員同様にボーナスがもらえる可能性があります。
紹介予定派遣とは、将来的に派遣会社にて直接正社員として雇用契約を結ぶ前提で、一定期間派遣社員として働く方式です。一定期間派遣先で働いて、自分と派遣先企業の間で双方の合意が取れたら正社員として雇用されるため、賞与が出る可能性が高くなります。
同一賃金同一労働法による影響
正社員と非正規社員の間で待遇に差が生じたため、近年、働き方改革により、非正規労働者の賃金が見直されることになりました。ここでは、同一賃金同一労働法によって派遣社員にどのような影響があるのかを解説します。現在派遣社員として働いている方も、これから派遣会社に登録しようと思っている方も、ぜひ参考にしてください。
同一賃金同一労働法とは
同一賃金同一労働法とは、同じ企業内の正社員と非正規労働者の間にある、待遇の差を埋めるために作られた制度です。大企業で2020年4月、2021年4月から実施されているため、2022年現在では、すでにどこの会社でも適用されていることになります。この同一賃金同一労働法の実施を受けて、派遣会社におけるボーナスは、「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」の2種類の方式のどちらかによって、支給額が変わるようになりました。
労使協定方式
雇用先企業と、派遣されるスタッフの間で、賃金をはじめとした待遇を決めておく方式です。労使協定方式を採用する企業では、基本給へ各種手当を合計・換算して加算する関係上、基本給にボーナス分が含まれているので、まとまったボーナスはもらえません。
派遣先均等・均衡方式
雇用先である人材派遣会社と、就業先である派遣先企業が協力して、正社員と同等の待遇を与えることを目指す方式です。派遣先企業における正社員と業務内容や責任の度合いが同じであれば、同等の待遇が、業務内容や責任の度合いに差があれば、それに相当した待遇が受けられます。
待遇は主に以下2つのポイントによって決められます。
・職務の内容(仕事の内容や責任の度合い、範囲)
・配置(昇進や昇格、転勤、異動)
派遣社員のメリットとデメリット
ここでは、派遣社員になるメリットとデメリットを解説しています。派遣社員になることを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
派遣社員のメリット
はじめに派遣社員になるメリットを解説します。
仕事の自由が高い
派遣社員は、仕事を自由に選べるため、自分のライフスタイルや、出勤時間、勤務時間、勤務地、仕事内容など、希望に見合った職へ就けるのがメリットです。就職や転職活動で一から企業に入るよりも、派遣会社へ登録して希望する職へ就いた方が難易度が下がります。残業や休日出勤は基本的になく、仕事とプライベートを両立させたい方や、子育て、介護の融通が利く職場で働きたい方には、派遣社員はおすすめです。
さまざまな仕事を経験できる
雇用先となる派遣会社にもよりますが、派遣社員は一定の期間で職場を転々とするため、さまざまな職業を体験できます。テレビ・マスコミ等のメディアやファッション業界、食品、製薬、ITといった業種から、事務や軽作業、営業、販売といった職種まで豊富な選択肢があるからです。上述したように、派遣会社へ登録した方が、正社員になるよりも選考のハードルが下がるため、倍率が高いメディア業界等の人気の高い業界で経験を積めるというメリットがあります。
未経験からでも始められる
強く希望する職種があり、そちらへ応募したいが、未経験のため採用されるかわからない、そのような悩みを持つ方には派遣社員がおすすめです。派遣社員は雇用期間が定められており、規模感が大きい、かつ難易度の高い仕事は振られにくいため、未経験からでも始めやすいというメリットがあります。自分にあった職業・職種がわからないと悩んでいる方にもおすすめです。
派遣会社からのサポートを受けられる
正社員や契約社員のように、雇用先と就業先企業が同じである場合には、仕事の悩みを上司や同期に相談しづらい、という方が一定数いらっしゃいます。派遣社員であれば、雇用先と就業先の企業は全く違う企業なので、就業先での悩み・相談を雇用先の会社に気兼ねなく伝えられるのがメリットです。場合によっては、待遇アップの交渉や、仲介をしてくれることもあります。
就業先で失礼のないよう振る舞えるか不安な方は、WordやExcel、PowerPointなどのPCスキル、ビジネスマナー、キャリアアップ研修といったサポートを受けられるため、ぜひ活かしましょう。
条件によっては正社員よりも給与が高くなる
派遣社員は、基本給に各種手当が含まれているため、正社員よりも給与が高くなる場合があります。正社員は勤続年数が長くなるほど基本給が上がっていく方式を採用することが多く、入社して間も無くの数年は、給与が低めに設定されるからです。特に専門性の高いシステムエンジニアのような技術職は需要が高く、スキルがあれば良好な待遇になります。
派遣社員のデメリット
次に、派遣社員になるデメリットを解説します。
契約期間があるため、不安定
登録型派遣の派遣社員は、有期雇用契約なので、いつ契約を切られてもおかしくないという状況に置かれます。契約を更新してもらうためには、結果を出して、この会社に貢献できるというアピールをしなければなりません。雇用が不安定なので、社会的信用度は低く、家や自動車などの金額が高い買い物をする際に不利になることがあります。
同じ企業では3年までしか働けない
同一賃金同一労働法によって、同じ就業先には最長で3年しかいられないようになっています。条件・待遇が良好で、長期的に働きたいと思っても、制度に阻まれ実現できないのがデメリットです。
長期的に働きたい場合は、紹介予定派遣で企業へアプローチしましょう。一定の期間は派遣社員として働き、企業と労働者本人の合意のもと、正規社員として雇用されるため、上限年数の3年を無視して働けます。
大規模な仕事はできないことが多い
上述の通り、派遣社員は雇用期間が定められているため、いつ職場からいなくなるかがわかりません。なので、スタートから完成まで3年はかかる大規模なプロジェクトの、重要なポストには就きにくいのです。責任感の伴う大規模な仕事がしたい方には、登録型派遣は向いていないといえます。
人間関係や得たスキルがリセットされる
派遣社員は定期的に職場が変わるため、就業先で築いた人間関係が別の就業先へ派遣された時にリセットされます。特に、異なる業種や職種で働く場合は、身につけた知識・スキルが応用できず、一から学び直さなければならないため、さまざまな業務を経験できる反面、それらの点は大きなデメリットです。
スキルがなければ昇給は難しい
派遣社員は定期的に就業先が変わるため、評価基準もその都度変わります。では、どうやって給与を上げていくかというと、スキルや知識の習得です。契約更新のタイミングや、新たな就業先へ派遣される際に賃金をはじめとする待遇を交渉することになりますが、高度なスキルと豊富な専門知識がなければ、昇給は厳しくなります。契約社員は特に雇用が不安定なので、自ら率先して、市場価値を上げなければ、年齢が上がるとともに就業先が限られるようになるため、注意が必要です。
まとめ
派遣社員は、基本的に賞与分のお金が換算されて基本給に含まれるため、まとまったボーナスはもらえません。夏や冬に、まとまった金額の賞与をもらいたい場合は、もともとボーナス支給がある会社か、常用型派遣か紹介予定派遣で契約するようにしましょう。
派遣社員は契約期間や、同一企業での勤続年数上限がありますが、さまざまな業務を経験できる雇用形態です。基本的に残業や休日出勤がなく、プライベートと両立したい方にはおすすめです。
ただし、スキル・知識を磨いて市場価値を高めていかなければ、有事の際に職を失うことになるため、その点は意識して就業するようにしましょう。
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