医療事務は事務職の中でも専門性が高く、全国各地に病院やクリニックがあるため、職場の選択肢も多いことから人気の職種です。
そんな医療事務について
「具体的にどんな仕事なのか」
「未経験や資格がなくても医療事務にはなれるのか」
などは、これから医療事務として仕事を始めようとしている方にとっては、気になるところでしょう。
結論からいうと、医療事務は未経験や無資格でもチャレンジできる職種です。
ただし、国家資格ではないとはいえ、未経験で医療事務を目指すなら資格は持っていた方が転職には有利に働くでしょう。
そこで今回の記事では、医療事務とはどんな仕事なのか、即戦力となるために事前に覚えておくべきこと、医療事務の仕事内容や一日の流れなどをお伝えしていきます。
今後、医療事務として仕事をしていこうと思っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
医療事務として活躍する前に覚えておきたいこととは?
まずは、これから医療事務としてお仕事をスタートしようとしている方に向けて、あらかじめ覚えておくと役に立つ知識をお伝えしていきます。
1.医療保険制度
医療事務の仕事につくのであれば、医療保険制度の基礎知識は必ずおさえておく必要があります。
日本では「国民皆保険」を社会保障制度の基本とし、国民はすべて公的保険へ加入することが義務付けられています。
そのおかげで、国民がケガや病気で医療機関に足を運んだ際に診察や治療費用の9割〜7割を国に負担してもらえるのです。
そして、医療機関は被保険者の診察や治療にかかった金額のうち、被保険者と保険者へそれぞれ決められた負担額を請求します。
この時、被保険者と保険者へ請求する金額は、被保険者の加入する医療保険によって異なります。ですから、窓口業務を担っている医療事務は、この医療保険制度を正しく理解していなければなりません。
また、公的医療保険の種類には自営業者や農業従事者、無職の方などが加入する「国民健康保険(地域保険)」と、「被用者保険(職域保険)」の2つに分類されます。
「被用者保険」には
- 中小企業の被用者が加入する「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」
- 大企業の被用者が加入する「組合管掌健康保険(健康保険組合)」
- 国家公務員や地方公務員、私立学校教職員など対象とした「共済組合」
などがあり、被用者保険では保険料の一部を事業主が負担します。
さらに、75歳以上の方を対象にした「後期高齢者医療制度」などがあります。
2.レセプト(診療報酬明細書)
レセプト(診療報酬明細書)とは、医療機関が患者に保険医療を行った際に掛かった費用の内訳が記載された明細書のことです。
医療機関の収入になる診療報酬(=医療保険から医療機関に支払われるお金)を得るためには、このレセプトに診療報酬請求書を翌月の10日までに提出する必要があります。
レセプトには次の情報を記載します。
- 患者の名前や年齢などの個人情報
- 加入している公的医療保険の種類
- 傷病名
- 診療報酬点数
また、診療報酬点数とは診療報酬点数とは、医療行為の個々の技術やサービスを点数化したものです。
1点10円で計算することで医療費を算出できます。診療報酬を計算するになる点数のことです。
また、診療報酬点数は2年に一度改定されることになっています。
これを「診療報酬改定」と呼びます。
年末に政府が国の予算編成をする際、診療報酬全体の「改定率」を決定し、それを基に厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(=中医協)に意見を求めます。
中医協は、学者などの公益委員や診療側委員、支払側委員(健康保険組合の代表など)の三者で構成されており、日本医師会も診療側委員として議論に参加します。
中医協では、前回改定の影響を検証するなど議論を重ね、その上で厚生労働大臣からの諮問に対して、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会並びに医療部会で決められた改定方針に従って、個々の医療行為に対する点数の見直しをしています。
3.健康保険証について
医療事務の大事な仕事の1つに、来院した患者さんの保険証確認があります。
患者さんが初診の場合は言うまでもなく、再診の場合であってもその月で初めての来院の場合は必ず保険証を提出してもらう必要があります。
医療保険の種類にあるように、医療保険にもさまざまな種類があります。
保険者によっても保険証の内容が微妙に異なるのですが、全ての保険証に記載されている次の情報を確認しなければなりません。
- 保険者番号
- 記号
- 番号
- 氏名
- 生年月日
- 資格取得年月日
また、保険証だけでなく公費負担の医療証などを持っている場合もあるので必ず確認してください。長く通院されている患者さんの中には月の始めの診療の際に保険証を忘れてくる人がいらっしゃいます。
保険証が変わることは、頻繁にあるわけではありませんが決して少ないわけではありません。
もし保険証が変わっていれば、診療に対する7割(~9割の部分)の費用を得られないこともあります。
レセプトが返戻となってしまうと、病院にお金が入るのが1ヶ月以上遅れるだけでなく、正しい保険証の情報を得る手間も掛かってきます。
保険証が提出できない患者さんには、診療費の10割を請求することを徹底しなければなりません。
もちろん、同月内(翌月レセプトを提出するまで)に保険証を提出してもらえれば遡って7割部分を返還します。
もし、月をまたがってしまった場合は患者さん自身で保険者に「療養費の請求」を行わなければなりません。その説明も適切にできるようになっておく必要があるので、医療事務の方は覚えておくことがたくさんあります。
医療事務の1日の流れ
医療事務の仕事の一日の流れも事前に把握しておくと、どんな風に仕事をしているのか、病院などで過ごしているのかのイメージがつきやすいでしょう。
ここからは、医療事務としてクリニックに勤務したときの一日の仕事の流れをみていきます。
開院前
業務を滞りなく行うために、制服に着替えたりレジの準備をしたりして、開院準備を進めます。
ほかにも予約状況の確認やカルテの準備、クリニックや病院によっては朝礼が行われることもあります。
午前診療
開院後、医療事務は受付・会計業務に入り、保険証や診察券の確認をしたり、診察券の発行をしたりします。
初診の場合は診療申込書をもとにカルテを作成し、医師に患者の容体を伝えることも仕事です。
ほかにも、診察室へ案内したり、会計業務をこなしたりします。
お昼休み
休憩時間にはしっかりと休息や食事をとり、一日にメリハリをつけます。ただし、事前に午後診療の準備をしっかりと済ませておくことも大切です。
午後診療
午後診療は、基本的に午前診療と同様です。
手が空いているときには、翌日の準備も行います。
診療終了後
レジをしめて、翌日の予約の確認と準備、院内の清掃などを行います。
レセプト業務があるときは、1~2時間程度の残業が発生することもあるでしょう。毎月10日までにまとめて提出する必要があるので、月末・月初は比較的忙しくなることが多いことを覚えておくとよいでしょう。
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1.受付・会計業務
患者さまが来院して初めに訪れる場所が受付。
病院に来た患者さんを一番初めにお迎えする医療事務スタッフの与える印象が病院のイメージにつながります。主に、保険証の確認などを行い、カルテに反映される患者さまの基本情報を登録。
病状に適した診療科をご案内します。
また、診察後、診療内容に沿って医療保険の点数計算をします。
多くの医療機関で、医療事務コンピュータや電子カルテが導入され、会計業務は今後もますます電算化が進むと考えられています。計算後は窓口でお会計を行う、または精算機にご案内します。
2.レセプト業務
医療事務の主業務ともいえるレセプト業務。
流は次の5つのSTEPで進められます。
STEP1:診療情報をレセコンに入力 レセコンへの診療情報の入力は手作業で行いますが、外来患者と入院患者とでは、入力を行うタイミングが異なります。外来患者は診療を受けた日の精算の度に入力しますが、入院患者の場合は月に何度か入力作業を行います。入力する内容は、診療内容ごとに割り当てられた英数字によるコードや、医薬品や医療器具に割り振られた品番です。 STEP2:レセコンが電子レセプトを作成する 必要事項を入力すれば、レセコンが自動的に診療報酬額を計算して患者ごとに1ヶ月分の電子レセプトを作成してくれます。レセコンによっては頻繁に使う薬と処置の内容をセットで登録し、最低限の手順で診療内容の入力ができる便利なものもあります。また、電子カルテと連携しているレセコンであれば、医師がカルテに入力した内容がそのまま反映されるため、医療事務が保険点数を入力することなくレセプト発行ができます。こういった機能の進化によって、多くの患者を抱えている医療機関であっても手間をかけずにレセプトを作成することができます。 STEP3:レセプトの点検する 一連の業務の中でも、最も大切なのがレセプトの点検です。作成された電子レセプトの内容に誤りが生じている可能性があるため、医療事務従事者の目視で点検します。レセコンは入力された情報に基づいてレセプトを作成するだけで、入力された情報に誤りがあっても修正はしてくれません。そのため、専門家の目で、一つひとつ慎重にレセプト内容を点検していくことが必要なのです。最終的にレセプトを提出する医療報酬の支払い審査機関の審査は非常に厳格です。提出されたレセプトにミスがあると、その分の診療報酬は支払われません。ですから、電子レセプトの点検はレセプト業務のなかで最も重要な業務であるといえるのです。 STEP4:医師に点検と確認を依頼する 電子レセプトの誤りの原因がカルテにある場合は、医師に点検と確認を依頼します。誤っている箇所が見つかれば修正してもらい、正しい情報を再入力します。 STEP5:審査機関へレセプトを提出する 点検を終えたレセプトを医療報酬支払い審査機関へ提出します。提出方法は、プリントアウトした書類による郵送と、電子レセプトのままデータを送信する方法があります。もし、レセプトに点検漏れがあった場合、医療報酬支払い審査機関とのスムーズなやり取りが必要です。 出典:ユーキャン|レセプト業務とは?未経験者にもわかりやすく簡単に解説! |
3.クラーク業務
クラーク業務とは、「外来クラーク」と「病棟クラーク」の2つに分けられます。
「外来クラーク」は、その名の通り外来診療に伴う事務業務を担います。ここでいう「外来」とは、クリニックや病院などの医療機関に、外から通院してきた患者さんのことを指します。そのような外来患者さんにおける、医療文書作成の補助やカルテの代行入力、次回の通院についての案内、急な検査の案内などの業務が外来クラークの業務です。
一方、「病棟クラーク」は主に入院している患者さんに関する事務業務を専門的に行うスタッフを指します。入院患者さんの医療文書の作成や入退院の手続きや管理、転院時の紹介状送付などの業務を行います。また、会計処理や検査科やリハビリテーション科などの他科との情報伝達が仕事内容に含まれる場合もあります。
医療事務と医療クラークの仕事内容には似ている部分があります。
基本的には医療事務は受付窓口の業務を、医療クラークはナースステーションなどで医師のサポートを行う、という理解でよいでしょう。
まとめ
今回は医療事務として現場で活躍するために覚えておくべきことをお伝えしてきました。
医療事務は専門性が高く、覚えることの多い仕事です。
そのため、医療事務に重要なのは、必要となるスキルや知識を、常にアップデートできるということ。
現場で身に付けたスキルや知識をしっかりと整理しておけば、後輩が入ってきたときの指導にも役立ちます。
また、本記事でお伝えした通り診療報酬制度は2年に1度改定されています。
ですから、医療保険制度や診療報酬制度についての知識を最新の状態に保つことが求められます。
そのほか、医療機関によっては資格を持っていることによって就職が有利に働いたり、手当が支給されることもあります。
経験を着実に積んでいくことで、キャリアアップもしっかりと見込めるのが医療事務の魅力です。
もしこれから医療事務として長く活躍していきたいなら、資格取得にもチャレンジしてみるといいでしょう。
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