派遣社員として働いたことがある方は「3年ルール」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。派遣社員として働くからには、この「3年ルール」は最低限知っておくべき法律の知識です。
そこで今回の記事では、3年ルールの概要や派遣社員として3年働いたらどうなるかなどを解説していきます。
目次
派遣の3年ルールの概要
派遣の3年ルールとは、「同一の事業所の同一の部署において、同じ派遣社員の派遣を受けることは、原則として最大3年までとする」というルールのこと。
2015年の9月に労働者派遣法が改正されたことによって導入されました。
「3年でクビになってしまうの?」と誤解されがちなのですが、派遣社員の待遇の改善という前向きな導入背景があります。
また、この改善は派遣先及び派遣元、どちらの会社にも求められる内容です。
同じ事業所の同じ部署で3年間働いた派遣社員を、派遣先の会社が正社員として雇う努力を促すこと。派遣社員が希望した場合には派遣元企業に対して無期雇用への転換を促すこと。 |
また、派遣3年ルールには2つの種類があります。
1つ目は派遣スタッフ個人にひもづく期間の制限、2つ目は派遣先企業にひもづく期間の制限です。
1.派遣社員個人の期間の制限
個人に紐づく制限としては、派遣社員が同じ組織で3年以上働くことができないというルールです。
つまり、新しい会社に移ったり同じ社内であっても別の部署に異動したりすることで、今までと同様に派遣社員として仕事を続けられるということ。
もし3年を超えても同じ職場や同じ部署で働きたい場合は、派遣社員の雇用形態を切り替える必要がでてきます。
雇用形態を切り替える選択肢としては
- 派遣先企業で直接雇用されて正社員や契約社員などになる
- 派遣元企業との契約を無期雇用派遣社員に切り替える
以上、2つのパターンです。
雇用形態を変えて契約延長することについての詳細は後述します。
2.派遣先企業の期間の制限
派遣先の事業所に制限があるというのは、3年以上派遣社員を受け入れられないという意味です。
たとえば、その事業所で既に2年間働いた派遣社員がいれば、次に来る派遣社員は1年で辞めなければならない可能性がでてきます。
この背景には、3年という期限が派遣先の企業にひもづいており、事業所単位で適用されているというルールが存在します。
ただし、派遣先の過半数労働組合が許可すれば、派遣期間は延長することができます。
実務労働においては上限期間を超える場合に意見聴取をすることで、さらに最長3年間の派遣社員の受け入れ期間を延長、他の派遣社員を受け入れることをくり返す企業もあります。
なお、この延長には回数制限がありません。
その都度、意見聴取など手続きをとれば、何度でも延長することが可能になります。
このようなルールが適用された2015年から3年経過した2018年以降、一部の例外を除いて、原則として多くの派遣社員が派遣3年ルールに該当しています。
そもそも2015年9月に労働者派遣法が改正される前は、いわゆる「専門26業務」以外は原則1年、最長で3年と派遣期間が制限されていました。
専門26分野とは、ソフトウエア開発や秘書、通訳や翻訳などのように専門的な知識や技術を求められる業務のことをいいます。しかし、改正後は専門26分野も含めてすべての派遣社員に3年ルールが適用されるようになりました。
3年経つと派遣会社から「雇用の安定化措置」が取られる
同じ職場や部署で働く期間が3年を超えると、派遣会社から雇用の安定化措置が実施されます。
雇用の安定化措置は、派遣会社に義務づけられているルールです。
派遣社員の雇用や生活を守るため、次のような働きかけを行います。
- 派遣社員の希望に応じて派遣先への直接雇用を依頼
- 新たな派遣先の紹介
- 派遣先での無期雇用に切り替えを行う
ですから、3年経過した後もなお同じ職場で働きたい場合は、派遣会社に働き方を相談しましょう。
ただし、派遣先と派遣社員の双方に継続の意思がなければ雇い止めとなってしまいます。
対象同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定)に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者 内容 派遣元事業主による雇用安定措置(義務)の対象となります。 ※1年以上3年未満派遣見込みの方については、努力義務の対象となります。 |
<義務の場合>派遣元事業主は、以下の①~④のいずれかの措置を講じる必要があります。また、以下の①を講じて直接雇用に結びつかなかった場合には、別途②~④のいずれかの措置を講じる必要があります。 <努力義務の場合>派遣元事業主は、以下の①~④のいずれかの措置を講じるよう努める必要があります。 ① 派遣先への直接雇用の依頼(派遣先が同意すれば、派遣先の社員となります) ② 新たな派遣先の提供(その条件が派遣で働く方の能力、経験等に照らして合理的なものに限ります) ③ 派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用④ その他雇用の安定を図るための措置(紹介予定派遣の対象となること等) ※ 雇用安定措置の義務は、派遣元事業主によってその義務が適切に履行されるか、又は派遣労働者が就業継続を希望しなくなるまで、効力が失われることはありません。 <雇用安定措置を受けられるようにするために留意すべきこと> 雇用安定措置の対象となるには、派遣元事業主に対し、派遣終了後も継続して就業することを希望していることが必要です。そのため、派遣元事業主は、キャリアコンサルティングや面談等を通じて当該希望の有無を把握することとされています。 雇用安定措置①~④のうち、派遣元事業主に講じていただきたいものを希望することができます。大前提派遣元事業主は、派遣で働く方が希望する雇用安定措置を講ずるよう努めることとされています 出典:厚生労働省|派遣で働く皆様へ |
派遣3年ルールの例外
実は派遣3年ルールには、例外になるケースがあります。
下記にあてはまる方は3年の制限がないので、しっかりおさえておいてくださいね。
- 年齢が60歳以上
- 最初から無期雇用派遣契約で働いている
- 期限のある有期プロジェクトに従事している
- 1カ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で10日以下に限定されている
- 産前産後休業や育児休業、介護休業などで休業している人の代理派遣である
派遣期間を延長する方法
3年以上同じ職場・部署で働き続けることができない派遣社員ですが、定められた期間を超過しても同じ介護施設や事業所で派遣社員として働き続ける方法もあります。こちらでは3年ルールに縛られず、派遣期間を延長する方法をご紹介するので3年以上働こうと考えている方は参考にしてみてください。
1.派遣先で直接雇用してもらう
派遣社員は、派遣先の介護施設や事業所に直接雇用してもらうことで派遣期間を延長することができます。派遣先から今後も継続的に働いて欲しいという要望があり、派遣社員も働き続けたいという意思がある場合に直接雇用を結ぶことができるのです。
その場合、給与や勤務日数などの条件は改めて派遣先が決めますが、派遣社員として働いていた条件よりも悪くならないように派遣会社が交渉してくれるので安心してくださいね。
2.部署を異動する
派遣社員は、同じ派遣先でも部署を異動すれば、また3年間働くことができます。同じ部署での直接雇用が難しいと、派遣先から部署異動を勧められることがあるのです。たとえば、特別養護老人ホームに派遣されている場合、3年経ったら併設のショートステイやデイサービスに異動することで同じ派遣先で働き続けられます。
今の職場で働き続けたい場合は、異動すれば働き続けられるか、派遣先の介護施設や事業所、または派遣会社に確認してみてください。
3.無期雇用に変更する
無期雇用とは、期間を定めることなく雇用できる契約方法で、派遣会社が派遣先に有期雇用派遣から無期雇用派遣への変更を依頼することで、派遣社員は3年以上働き続けることが可能となります。ただし、無期雇用になるためには長期で働く意思や実務経験、スキルなどが必要です。
また、無期雇用に変更する場合、派遣期間は無期限になりますが契約内容や条件などは派遣会社と派遣先との間で決定され、無期限雇用になったからといって正社員になるわけではありません。
派遣社員として長く働くために大切な5つのこと
派遣社員として長く働き続けるポイントを5つ紹介します。
派遣先での印象が良かったり必要不可欠な人材として立ち位置を確立していた場合、長く働き続ける可能性はぐっとあがります。
さらに、あなた自身のやる気や成果を上司にアピールすることで、正社員としての雇用の可能性も高くなるでしょう。
1.マッチした求人を紹介してもらうこと
派遣社員として長く活躍するには、派遣会社に自分にマッチした求人を紹介してもらうことが大切です。
そのためには、求人情報に載っている業務内容を確認するだけでなく、あなた自身の強みや得意分野を活かせる職場を探してもらうようにしましょう。
ミスマッチを事前に防ぐことで、自己分析や企業研究ができていることの証明につながり、派遣先からの信頼も厚くなります。
2.コミュニケーションを大切にすること
正社員や派遣社員という雇用形態にかかわらず、ビジネスパーソンとして職場でのコミュニケーションを重んじるのは必要最低限のマナーです。
上司や派遣先責任者だけでなく、日頃から一緒に働く同僚とのコミュニケーションもとても大切です。
会社の風土やルールなど仕事以外の情報を得ることができますし、会社のルールを知っておけば事前にトラブルを回避できるでしょう。
また、自分がどういった分野が得意なのかを伝えておくことで、自分に合った仕事を担当させてもらえる可能性もあります。
3.派遣先で積極的に提案すること
派遣社員だからと遠慮するのではなく、「こうするのはどうでしょうか」などといった提案もおすすめ。
あなたの意欲をアピールすることで、「仕事に積極的」「やる気がある」と思われるようになり、職場内での印象も良くなります。
職場での印象が良くなることで、雇い止めを防ぐことも可能になるでしょう。
ただし、自分の提案内容が職場や現状に即しているかを把握したうえで提案するようにしてくださいね。
4.真面目な勤務態度でいること
当たり前のことですが、日頃から真面目な勤務態度でいることも重要です。
たとえば、同僚とお喋りばかりしていると「仕事をしていない」と思われたり、遅刻が多いと「時間にルーズな人だ」というネガティブな印象を持たれたりします。
常に完璧でいる必要はありませんが、派遣先での評価を落とさないように真面目な勤務態度を維持することは忘れないでくださいね。
5.派遣会社の担当者に相談すること
派遣会社のキャリアコンサルタントと親しくなることも大切です。
業務上のトラブルや待遇面の相談だけでなく、働く上での困りごとや悩みごとも気軽に相談できると、快適に働けるようになります。
また、派遣社員のキャリアアップを支援する制度や環境が整っているのであれば、積極的に活用するとよいでしょう。
たとえば、派遣会社はキャリア形成を希望する派遣社員に対してキャリアコンサルティングを行うように、国から指導されています。
派遣社員として長く働きたい場合や、正社員へのステップアップを視野に入れているならば、現状に満足することなくしっかりと将来のキャリアプランを描き、スキルを上げていくのが大切です。派遣会社の研修制度やeラーニング研修などを積極的に活用して、スキルや知識を高めていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事では派遣の3年ルールについて解説してきました。
3年ルールとは、同じ職場や部署で働ける期間の上限を3年と定める派遣法のことです。
派遣社員にとっては、長く働くほど「3年しか働けない」と不満や不安を感じるかもしれません。
しかしながら、導入背景は「派遣社員の待遇や雇用を守るための法律」であり、長く働くのであれば無期雇用派遣や直接雇用を検討するという選択肢が用意されているのです。
ほかにも、部署を異動したりすることで同じ職場や部署で働き続けることができます。
ただし、雇用形態を変更する際は派遣先と派遣社員の双方の希望が一致しなくてはいけないので、契約内容の確認やすり合わせは慎重に行いましょう。
また、派遣会社では正社員雇用を前提とした「紹介予定派遣」もあります。
3年を気にせずに「長く働きたい」という方は、就職活動の際に相談してみるとよいでしょう。