「益々のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます」の「ご健勝」ってどういう意味?と聞かれたとき、あなたは何と答えますか。ビジネスシーンではよく聞くけれど、改めて考えると正しい意味や使い方を知らない、なんて方も多いはず。今回は「ご健勝」の正しい意味と使い方を例文を交えながら解説していきます。結婚式やビジネスシーンでの挨拶で頻繁に出てくるワードですから、きちんと押さえておきましょう!
目次
「ご健勝」ってどういう意味?
「ご健勝」の意味と読み方
「ご健勝」とは、健康で元気なことを意味します。「健勝」という単語ではありますが、単体で使うことは少なく、頭に「ご」をつけて「ご健勝」とすることがほとんどです。読み方は「ごけんしょう」です。ちなみに「勝」という字がつくのは、「勝」という字に「すぐれる」という意味があるからです。つまり健康的ですぐれていること、健康で元気なことを意味するわけです。
「ご健勝」の正しい使い方【例文と一緒に!】
では「ご健勝」の正しい使い方、使う場面としてどういうシーンがあるのか押さえておきましょう。
①ビジネスメールや手紙の始めの挨拶
手紙やビジネスメールなどの書き出しの挨拶の1つとして次のようなものがあります。
【例文】
・〇〇様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
・皆様におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
・春暖の候、皆様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
これらはよく使われる文言で、挨拶の定型文になっています。「ご健勝」はこのように、差し出すメールや手紙の相手が健康で元気であるだろうことを前提に、その健康を喜びますと伝える挨拶で使われています。手紙の最初に「お元気ですか?」と書いたり、「お変わりありませんか?」と書くようなもので、それらを丁寧な言い方にしたのが「ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」になります。
②ビジネスメールや手紙の締めの挨拶
書き始めの挨拶で使われる「ご健勝」ですが、ビジネスメールや手紙の締めの挨拶でもよく出てきます。
【例文】
・皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
・〇〇様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
・皆様のご健勝とますますのご発展をお祈り申し上げます。
・皆様のご健勝と益々のご活躍をお祈り申し上げます。
・末筆ではございますが、今後の皆様のご健勝とご多幸を陰ながらお祈りしております。
・最後になりましたが、皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げ、御礼のご挨拶といたします。
締めの挨拶では、相手が今後も健康で元気であることを案じて、相手を気遣う気持ちを表しています。「健康に気を付けて元気でお過ごしください」を丁寧に伝えるイメージです。「ご健勝」のみを祈る場合もあれば、「ご発展」や「ご活躍」「ご多幸」などもセットにして伝えることも多いです。相手の役職や置かれている現状などを考えながら、どれを選ぶかを決めるといいでしょう。
③乾杯の挨拶
結婚式の挨拶や、会社などのビジネスの集まりでの乾杯の挨拶にも「ご健勝」はよく使われます。
【例文】
・本日お集りくださった皆様とそのご家族のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、乾杯!
・皆様のご多幸とご健勝を祈って、乾杯!
手紙やメールの締めの挨拶が、乾杯の挨拶になっているような形です。こちらももはや定型文になっているので、意味がわからなかった方は是非覚えておきましょう。
会社宛てには使えない!「ご健勝」の使い方の注意点
手紙やメールの書き出しや締めの挨拶、乾杯の挨拶など、節目の挨拶に「ご健勝」は多く使われることがわかりましたが、実は注意点がいくつかあるのです。それを確認していきましょう。
①会社に向けては使えない
「ご健勝」は「健康で元気であること」という意味のため、個人に向けての言葉です。そのため、会社などの組織に向けての挨拶では使えません。「御社のご健勝」とは言わないので注意しましょう。「御社のますますのご健勝をお祈り申し上げます」ではなく、「御社のますますのご発展をお祈り申し上げます」のように、組織に向けては「ご発展」や「ご清栄」という言葉がベストです。
②健康でないことが明らかな人には使わない
病気を患っていたり、怪我をしている人、入退院を繰り返している人など、明らかに健康でないことがわかっている人に向けて「ご健勝をお祈り申し上げます」というのは、皮肉にも聞こえますのでやめましょう。相手の体調など詳しくはわからないかもしれませんが、高齢の方や持病を持っていると聞いたことがある人に向けて手紙やメールを送るときは、「ご健勝」という言葉を避けておくことが賢明な判断です。
③日常の会話ではほとんど使われない
「ご健勝」の意味を知ったからといって、これから取引先企業との打ち合わせの最後の挨拶で「ご健勝をお祈り申し上げます」と言ってしまうのはNGです。というのも、「ご健勝」はメールや手紙などの「文語体」で使われる言葉だからです。結婚式や乾杯の挨拶を除いて、日常生活では使われません。
またメールにおいても「ご健勝をお祈りします」よりも「ご自愛ください(意味:あなた自身の体のことを大切にしてくださいね)」という挨拶のほうがよく使われますし、より親身な印象があります。「ご健勝」は手紙やメールのなかでのみの、硬いフォーマルな印象を持つ言葉であることを覚えておきましょう。
④立場関係なく誰に対しても使える
「ご健勝」は「健康で元気であること」を意味するのみですから、目上の人に対しても、部下に対しても使うことができます。立場に関係なく、相手を気遣うための言葉です。挨拶をする相手が「個人」であるか「組織」であるかを注意できれば問題ありません。
挨拶に使える!「ご健勝」の類語とは?
「ご健勝」のようにビジネスや結婚式などのフォーマルな場での挨拶に使える言葉は、他にどんなものがあるのか見ていきましょう。
①ご清祥
読み方は「ごせいしょう」です。「ご健勝」と同じく個人に宛てる場合のみに使える言葉で、相手が健康で幸せに暮らしていることを喜ぶ挨拶の語です。メールや手紙などの文章で使われ、日常会話では使いません。
【例】
・ご清祥のこととお慶び申し上げます。
②ご清栄
読み方は「ごせいえい」です。「ご清祥」と似ていますが、「繁栄」の「栄」の字が入っているように会社などの組織に向けての挨拶でも使えます。もちろん個人に向けても使えます。意味は清く栄えること、相手の無事と繁栄を喜ぶ言葉です。ビジネスシーンにおける挨拶状、お礼状、送付状などによく出てくるワードです。「ご清祥」と同じく口語では使われません。
【例】
・ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
③ご盛栄
読み方は「ごせいえい」です。「ご清栄」と同じ読み方ですが、「盛栄」という言葉のとおり、商売などが盛んになることを意味します。そのため、どちらかというと個人宛というよりも、会社などの組織の繁栄を願って使われることが多いです。ただし「商い」の意味が強いため、利益追求が目的ではない公的機関や、病院などに対して使うのは好ましくないです。
また葬儀業界や介護業界などの、繁栄することが必ずしも世間が良くなることに繋がっているわけではない業界には適さない場合もあります。送り先を考えて使用するかどうか考える必要があります。
【例】
貴社ますますのご盛栄のこととお慶び申し上げます。
④ご繁栄
読み方は「ごはんえい」です。「ご盛栄」の意味に近いですが、豊かに栄えること、栄えて発展することを意味します。「ご盛栄」よりも商いの色が薄い言葉ですね。また「ご盛栄」と同じく葬儀業界や介護業界に向けてなど、挨拶として適さない場合もあるので、相手企業の業界を見て判断しましょう。
【例】
ますますのご繁栄をお祈り申し上げます。
⑤ご発展
読み方は「ごはってん」です。相手の発展を願うときに使います。物事の勢いが伸び広がって盛んになることを意味するため、個人向けではなく、組織に対しての挨拶で使われます。
【例】
貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
⑥ご多幸
読み方は「ごたこう」です。非常に幸せなことを意味し、相手の幸せを願うときに使う言葉です。結婚式など相手の幸せを願うときにピッタリです。また講演会などに参加してくれた方に対しての気遣いの言葉としてもよく使われます。一方で、ビジネスシーンにおいては少し注意が必要です。転勤や異動などで別の職場に移ったばかりの人に対して、「ご多幸」を願うのは少し配慮が足りません。もしかしたら不本意な異動だったかもしれませんから、注意しましょう。
【例】
皆様のますますのご多幸をお祈り申し上げます。
⑦ご活躍
読み方は「ごかつやく」です。言葉のとおり、相手のこれからの活躍を願いときに使います。活躍するのは個人であるため、個人向けの挨拶で使いましょう。異動や退職などの別れのシーンで使用されることが多いです。
【例】
貴社のご発展と、〇〇様のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
「ご健勝をお祈り申し上げます」を言い換えたい!役立つ締めの言葉4選
ビジネスメールや手紙での締めの言葉としてよく使われる「ご健勝をお祈り申し上げます」ですが、書き始めの挨拶で「ご健勝」を使ってしまって、締めの言葉にも使うのはちょっと…というときもあるでしょう。そのためにも「ご健勝をお祈り申し上げます」に代わる締めの言葉を押さえておきましょう。
①ご自愛ください
「自愛」とは、自分を大切にすること、自分の健康状態に気を付けることを意味し、相手に対して「ご自身のお身体を大事にしてください」と労いの意味が込められた言葉です。「ご健勝」は高齢の方にはあまり向きませんが、「ご自愛ください」は病気や怪我の人を除いて、年齢に関係なく使えます。
【例】
・厳寒の折、何卒ご自愛くださいませ。
・新年度を迎え、何かと忙しい時節柄、くれぐれもご自愛ください。
②ご自愛専一にお過ごしください
「ご自愛ください」に「専一」という言葉が付いた形です。「専一」とは「第一に」という意味で、すなわち「ご自愛専一にお過ごしください」は「まずは自分自身の身体を第一にお過ごしください」という意味になります。よりお身体を大切に、と伝えたいときにおすすめです。
【例】
・どうぞご自愛専一にお過ごしください。
・時節柄、何卒ご自愛専一にてご活躍くださいますようお願い申し上げます。
③お身体おいといください
「おいといください」とは「厭う」という言葉で、いたわる、大事にするという意味のある言葉です。日本古来からある大和言葉で、美しい響きが特徴です。意味は「お身体を大事にしてください」です。特に目上の人や年配の方に送るといいでしょう。
【例】
・まだまだ寒い日が続きますが、どうかお身体おいといください。
・寒さ厳しき折、どうぞお身体おいといください。
④お身体をお労りください
「労る」とは、手当を加える、養生するという意味です。こちらも相手に対して「ご自身のお身体を大切にしてください」という意味があります。
【例】
・日頃の疲れが出ないよう、お身体をお労りください。
「ご健勝」を英語で表すと?
「ご健勝」つまり健康であることを直訳すると「good health」になります。しかしそれよりもビジネス英語でよく使うフレーズを覚えてしまった方がいいかでしょう。今回は締めの挨拶として使う「皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます」に近いフレーズをご紹介します。
・I wish you continued success in your business.
→ますますのご繁栄をお祈り申し上げます。
・Wishing you all the success in your future endeavors.
→ますますのご繁栄をお祈り申し上げます。
・I wish you all the best.
→皆様(あなた)のご多幸をお祈り申し上げます。
・I wish you all the best and continued success.
→皆様のご活躍をお祈り申し上げます。
まとめ
「ご健勝」の意味や正しい使い方、使うときの注意点、類語や言い換えの言葉などを解説してきましたが、いかがでしたか。「ご健勝」という言葉自体は「健康で元気なこと」という意味でしたが、それを使ってビジネスシーンなどで始めの挨拶、締めの挨拶で非常に使われていることがわかりました。使う相手に気を付けながら、基本の挨拶としてしっかりとマスターしておきましょう。