「お願いできますでしょうか」「資料をいただけますでしょうか」のように、語尾に「ますでしょうか」が用いられる表現は、一般的に広く使われています。ビジネスシーンでも使われることがありますが、この表現に違和感を感じる人もいるでしょう。なぜなら、「ますでしょうか」は二重敬語であり、ビジネスシーンでは不適切とされているからです。では、ビジネスシーンでは、どのような敬語表現が適しているのでしょうか。今回は、「ますでしょうか」を用いた語の正しい言い換え表現を中心に解説していきます。誤って使われがちな敬語もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
「ますでしょうか」は正しい表現?
ビジネスシーンでは目上の人と会話をする機会も多いでしょう。その時、正しい敬語ではあるものの、目上の人に使っては失礼にあたる表現や、そもそも間違って浸透している敬語を使ってはいませんか。日常的によく使われている表現でも、実は敬語として間違っていることはたくさんあります。
文化庁の見解によると、二重敬語の使用は一般的な日本語として受け入れられている場合があり、『ますでしょうか』はその例の一つです。特にビジネスメールや公的な文書では、相手に敬意を示すためにこの表現が使われることがあります。しかし、日常会話やカジュアルなコミュニケーションでは、よりシンプルな表現を選ぶことが推奨されます。
「お時間ありますでしょうか」や「○○様はいらっしゃいますでしょうか」など、よく使われている表現の「ますでしょうか」も、実はビジネスシーンにおいて適切な敬語表現ではないです。
「ますでしょうか」は二重敬語なの?
なぜ、「ますでしょうか」は適切な敬語表現ではないのでしょうか。それは、「ますでしょうか」が丁寧語+丁寧語の二重敬語だからです。二重敬語とは「尊敬語+尊敬語」のように同じ種類の敬語を重ねて使うことです。敬語を重複して使うことは過剰な丁寧さとなるため、二重敬語は極力避けたほうがいいと言われています。したがって、丁寧の助動詞「ます」と、疑問詞「ですか」に推量の意味を含めた丁寧語「でしょうか」を組み合わせた「ますでしょうか」は敬語として不適切となります。
しかし、「ます」と「でしょうか」は、両方とも丁寧語ではありますが、一つの言葉について敬語を重ねて使用しているものではなく、「ます」に「だろうか」の丁寧な言い方である「でしょうか」を添えた表現であるため、間違っていないという意見もあります。
いずれにしても、「ますでしょうか」の言い換え表現である「~ますか」だけでも丁寧さは伝わりますし、ビジネスシーンで使用しても問題ありません。「~ますか」では丁寧さが足りないと感じる場合は、「ますでしょうか」を使用しても構いませんが、人によって使い方や捉え方が異なることを理解しておきましょう。
「ませんでしょうか」も同じく二重敬語
「この内容で問題ございませんでしょうか」「ご検討いただけませんでしょうか」のように「ませんでしょうか」と表現することもあるでしょう。これも、丁寧語「ます」の未然形と打ち消しの「ん」に、丁寧語「でしょうか」を重ねた二重敬語となります。
『ますでしょうか』と『ませんでしょうか』の違いとは
『ますでしょうか』と『ませんでしょうか』の主な違いは、前者が提案や確認を柔らかく表現するのに対し、後者は許可を求める際に用いられることが多いです。例えば、コールセンターでの対応やビジネスの電話では、状況に応じてこれらの表現を使い分けることで、より適切なコミュニケーションが可能になります。
なぜ『ますでしょうか』が気持ち悪いと感じられるのか
一部の人々は『ますでしょうか』を不自然または過剰な敬語と捉えることがあります。この感覚は、日本語の自然な流れやニュアンスに敏感な人々により強く感じられることがあります。しかし、この表現が適切なコンテキストで使用される場合、コミュニケーションをスムーズにし、相手に敬意を表することができます。
『ますでしょうか』の文法と文化的背景
『ますでしょうか』は、日本語の敬語表現の中で特定の機能を持っています。この表現は、提案や許可の求め方を丁寧に伝えるために用いられ、日本のビジネスや公的な場では広く受け入れられています。文化的には、このような表現が日本人の間でコミュニケーションを円滑にするための工夫として見られることがあります。
「ますでしょうか」の正しい言い換え表現
「~ますでしょうか」が用いられている間違った敬語表現は日常的によく使われています。つづいては、日常でよく使われる二重敬語と、適切な言い換え方を紹介します。
①ありますでしょうか
「お時間ありますでしょうか」「ご質問はありますでしょうか」など、ビジネスの場面でもよく使われる「ありますでしょうか」。この表現は「物事が存在する・その場所にある」を意味する「ある」を丁寧語にした「あります」と、疑問詞「ですか」に推量の意味を含めた丁寧語「でしょうか」を組み合わせています。つまり、丁寧語+丁寧語の二重敬語のため、敬語としては不適切です。「ありますでしょうか」の正しい言い換え表現は、「ありますか」「ございますか」「おありですか」です。簡単に3つの違いを解説します。
ありますか
最もシンプルな言い換え表現が「ありますか」です。丁寧な表現であり、正しい敬語ですが、ビジネスシーンで使うには少し丁寧さに欠けます。親しい間柄の先輩や同僚、店員さんなどであれば問題ありませんが、取引先や目上の人に対しては使用しないほうがいいでしょう。
ございますか
ビジネスシーンでも使える言い換え表現が「ございますか」です。「ありますか」よりもより丁寧な敬語表現なので、目上の人やお客様などに使っても失礼にあたりません。ビジネスシーンや公の場では「ございますか」を使うのが適切でしょう。
おありですか・おありでしょうか
最も丁寧な言い換え表現が「おありですか」です。初対面の相手や、よりかしこまった場面で使用します。さらに丁寧さを重視するなら「おありでしょうか」を使うといいでしょう。ただし、使う相手や場面によっては丁寧過ぎて不自然に感じてしまうこともあるので、ビジネスシーンであっても「ございますか」「おありですか」「おありでしょうか」を適切に使い分けましょう。相手によって表現を使い分けるのもマナーの一つです。
②ございますでしょうか
「ございますでしょうか」も日常的によく使われています。「ございます」は「あります」と同じく「ある」の丁寧語です。したがって、「ございますでしょうか」は丁寧語が二つ重なっているため、二重敬語となります。この場合は、「ございますか」が適しています。
③いらっしゃいますでしょうか
主に取引先と電話や、訪問時に、相手の不在を確認するため「○○様は、いらっしゃいますでしょうか」が使われます。一般的に広く使われている表現ではありますが、「ます」と「でしょうか」がどちらも丁寧語なので、「いらっしゃいますでしょうか」も二重敬語です。不在確認の際は「いらっしゃいますか」が適切です。または電話の場合は、「お取り次ぎ願えますか」を使うといいでしょう。
④いただけますでしょうか
「ご連絡いただけますでしょうか」「ご確認していただけますでしょうか」「ご検討いただけますでしょうか」のように、ビジネスシーンで「~いただけまでしょうか」を使っている人も多いでしょう。丁寧な表現に感じますが、この場合は「いただけますか」で十分丁寧さは伝わります。ただし、「ご連絡いただけますか」「確認していただけますか」だと直接的に催促する表現になってしまうため、丁寧で柔らかい表現が好まれるビジネスシーンでは「ご連絡いただけますと幸いです」の表現が適しています。
⑤お願いできますでしょうか
相手に何か頼み事や依頼をするときに使用する「お願いできますでしょうか」も丁寧語+丁寧語の二重敬語です。何度もお伝えしている通し、二重敬語は正しい敬語ではないので、ビジネスシーンでは使用するべきではありません。しかし、「できますでしょうか」は、二重敬語の中でも広く使われているため容認されています。そのため、一概に間違っているから使用すべきではないとは言い切れないのです。本来であれば「お願いできますか」が適切な表現となりますが、「お願いできますでしょうか」を使用しても違和感を感じる人は少ないでしょう。ただし、先ほどと同じように、「お願いできますか」も直接的な表現なので、「〜していただいてもよろしいでしょうか」「〜していただくことは可能でしょうか」がビジネスシーンでは好まれます。「お願いできますでしょうか」を用いても問題ないのか迷った場合は、こちらの表現を使用することをおすすめします。
【参考】間違えやすい敬語表現
「ますでしょうか」の他にも、日常的によく使われているため、間違っていると知らずに使っている敬語表現や、正しい言葉であっても目上の人に使っては失礼にあたる表現がたくさんあります。つづいては、ビジネスシーンで使いがちな不適切な敬語を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。日常的に使っている表現は、咄嗟の状況などでついつい出てきてしまいます。ビジネスシーンや目上の人とやりとりをする際に相手に不快感を与えないよう、日頃から正しい言葉遣いを身に着けておきましよう。
【NG】ご苦労様です
【OK】お疲れ様です
「ご苦労様」は目下の人に対して使う言葉のため、目上の人に使うことはできません。
【NG】了解しました
【OK】承知しました / かしこまりました
「ご苦労様」と同じく、目上の人に対して用いるには不適切なものとされています。
【NG】お世話様です
【OK】お世話になっております
丁寧語ではありますが、少しカジュアルな表現のため目上の人には失礼にあたります。
【NG】お時間よろしかったでしょうか
【OK】お時間よろしいでしょうか / お時間いただいてもよろしいですか
現在のことに対して過去形を用いるのは間違いです。
【NG】どちらにいたしますか
【OK】どちらになさいますか
「いたす」は謙譲語なので相手に使うのは不適切です。尊敬語「なさる」が正しい表現です。
【NG】拝見いたしました
【OK】拝見しました
「拝見する」「いたす」どちらも謙譲語であり、両方使うのは二重敬語なので間違いです。
「ますでしょうか」を用いた表現を英語で言うと?
最後に、「~ますでしょうか」を用いた語の英語表現を紹介します。
ありますでしょうか
「ありますか」を意味する英語表現には、「Do you have」と「Is there」があります。
「Do you have」
「Do you have」は、「あなたはもっていますか」という意味があります。経験があるのか、質問はあるのかのように、相手に持っているかどうか尋ねるときに使用します。
【Do you have~の例文】
・Do you have any time?
(お時間ありますか?)
・Do you have any time?
(お時間ありますか?)
・Do you have any questions?
(ご質問はおありですか?)
・Do you have any ideas on the design?
(デザインについて何か意見はありますか?)
・Do you have any experience with programming?
(プログラミングの経験はありますか?)
「Is there」
「Is there」には、「ある」「いる」という意味があります。場所を示す語としてよく使用される「there」ですが、「Is there~?」という形では「ありますか」のニュアンスで使用可能です。
【Is there~の例文】
・Is there a meeting today?
(本日会議はありますか?)
・Is there a bank near here?
(この近くに銀行はありますか?)
・Is there anything you want to do?
(何かしたいことはありますか?)
できますでしょうか
<h4>could you please</h4>
相手に依頼したことが「できるかどうかを尋ねる」時に使います。
【could you please~の例文】
・Could you please sign your name here?
(こちらにご署名をいただけますか?)
・Could you please give us the estimate by tomorrow?
(明日までに見積もりをいただけますか?)
Would you
相手に依頼を受けてくれる意思があるかどうかを確かめる時に使います。
【Would you~の例文】
・Would you please suggest another plan?
(別の対策もご提案いただけますか?)
・Would you tell me the name of the person in charge?
(担当者の名前を教えていただけますか?)
まとめ
「ますでしょうか」について解説してきましたが、いかがでしたか。丁寧語を重ねた二重敬語だと言われていますが、一般的に広く使われているため、容認されている表現でもあります。場面によって使い分けるか、迷った場合は今回紹介した言い換え表現を使うといいでしょう。正しい敬語を使うことはビジネスマナーの基本です。誤った敬語を使っていると「ビジネスマナーを知らないのかな」をマイナスなイメージを与えてしまう可能性もあるでしょう。正しい意味を知らずに使っていると、相手に不快感を与えてしまうこともあります。社会人の基本として、正しい敬語表現はしっかりとおさえておきましょう。
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