「ご検討のほどよろしくお願いいたします」など、ビジネスシーンでよく使われる「ご検討」。しかしきちんと意味を確認したことがある人は少ないのではないでしょうか?今回は「ご検討」の意味や、正しい使い方、「ご検討」と同じように使える類語などを紹介していきます。
目次
「ご検討」の意味とは?
「ご検討」は「検討」に丁寧語の「ご」が付いた言葉です。
「検討」とはよく調べて考えること、種々の面から調べて良いか悪いかを考えることという意味です。つまりただ考えるだけではなく、入念に調べて吟味するという意味合いが込められています。
ビジネスシーンでよく使われる「ご検討お願いします」は、上司や取引先などの目上の人、一緒に仕事をする人に対して、あることについてよく考えて判断してほしいときに使います。相手が動作すること、この場合は「検討すること」になりますから、その語句の頭に「ご」という丁寧語をつけることで相手に敬意を示すことになります。
「ご検討」と似ている言葉
「ご検討」と同じように相手に何かを考えてほしいときに使う言葉、ビジネスシーンでよく使われる言葉、「ご検討」と同じ読み方の言葉を押さえておきましょう。
①査収
読み方は「さしゅう」で、金額や書類、物品などをよく調べて受け取ることを意味します。「ご検討」と同じように「ご査収お願いいたします」などビジネスシーンでよく使われる言葉です。「ご検討」はよく調べて吟味することですが、「ご査収」の場合はよく調べて受け取ることです。調べた後に「受け取る」という意味合いが入っていることに注意しましょう。
例えば、取引先に対して見積書を送ったとき、その見積書を受け取って中身を確認してくださいということであれば「ご査収」になりますが、見積書の内容について吟味してくださいということであれば「ご検討」になります。
②見当
読み方は「けんとう」で「検討」と同じですが、意味は全く異なります。「見当」とははっきりしていない事柄について大体の見込みを付けることを意味します。つまり、こうした使い方はしませんが「見当ください」となってしまうと「見込みを付けてください」という意味になってしまうので注意しましょう。
③考える
「ご検討」の意味を簡単に表すと「考える」になります。そのため「ご検討ください」は「考えてください」「お考えください」に言い換えられますが、「ご検討」の中には考えるだけではなく、様々な方向から考えて良いか悪いか判断するというニュアンスが含まれているため、厳密には言い換えられません。
ビジネス上での答えや判断は、クイズに回答するように考えて出る訳ではありません。様々な視点から吟味することが必要な点から、ビジネスシーンで「ご検討」という言葉がよく使われているのだといえます。
④一考する
読み方は「いっこう」で、一度よく考えることを意味します。「考える」よりもしっかりと考える印象が強く、相手に対して真摯に向き合っているイメージがあります。検討しますよりも軽いですが、相手から「一度考えてみてほしい」と言われたときは「一考します」と伝えると印象がいいでしょう。
⑤考慮する
読み方は「こうりょ」で、ある物事をいろいろな面を含めてよく考えることを意味します。「考える」や「一考する」よりも重く、どちらかというと一番「ご検討」に近い言葉です。「ご検討ください」のように良い悪いの判断までは含みませんが、「お考えください」「ご一考ください」よりも丁寧でフォーマルな言い方にしたいときは「ご考慮ください」を使っていきましょう。
⑥思案する
読み方は「しあん」で、考えをめぐらすことという意味です。考える、一考するとはまた違って、色々と考えをめぐらすようなニュアンスがあります。より深く考えている印象です。硬い言葉であるため「ご思案のほどよろしくお願いします」や「ご思案いただけますと幸いです」などビジネスシーンにもぴったりです。
「ご検討」を使うときの注意点
ご検討の意味や、類語、言い換えなどがわかりました。では実際に「ご検討」を使うときの注意点や「ご検討」の間違った使い方を見ていきましょう。
①自分がおこなう「検討」は「ご検討」にしない
「ご検討くださいませ」「ご検討いただきますと幸いです」など、「ご検討」をたくさん使っていると、「ご検討させていただきます」など自分がおこなう動作にも丁寧語をつけてしまいそうになりますが、それは間違いです。自分が検討する場合は「検討いたします」や「検討させていただきます」のように謙譲語を使いましょう。
②「よろしくご検討お願いします」は間違い
「ご検討よろしくお願いします」を使いすぎて、少し変えてみようかな…と思う人もいるのではないでしょうか。しかし語順を入れ替えた「よろしくご検討お願いします」は間違いです。「ご検討お願いします」は問題ありませんが、「よろしく」は「お願いします」にかかります。そのため「ご検討よろしくお願いします」でいきましょう。
③「ご検討いただけますでしょうか」は間違い
よく間違って使うことが多い形です。「~ますでしょうか」は「ます」と「です」という丁寧語が2つ連続しているため、二重敬語になっています。そのため敬語表現として間違っています。文末を疑問形にするのであれば、正しくは「ご検討いただけますか」です。しかしこの形だと冷たい印象を受ける人も多いため、「ご検討いただけますと幸いです」等の言い方をする人が多いのです。
④「ご検討してみてください」はおすすめしない
「~してみてください」は、試行の意味がある「ためしに~しろ」や、確認の意味がある「~かどうかは~しろ」の尊敬語表現です。そのため相手に検討をお願いしているというよりも、相手に検討を促している、どちらかというと上からの視点で命令しているような印象を受けます。仲の良い同僚相手なら問題ないかもしれませんが、取引先や上司には使わないほうがいいでしょう。
⑤「ご検討のうえ」はひらがなで書く
ここでいう「~のうえ」は副詞、補助動詞で使うもので、「~したあと」という意味になります。その場合は「~の上」と漢字表記にするのではなく、ひらがな表記にしましょう。例えば「ご検討のうえ、ご連絡いただきますようお願いいたします」となれば、「ご検討したあとにご連絡ください」という意味になります。
⑥「ご検討のほど」はひらがなで書く
「~のほど」は前に言ったことの断定を避けて、表現をやわらげる役割があります。この場合も「ご検討の程」ではなく、「ご検討のほど」というひらがな表記が正しい形です。「~のほど」がつくことで、相手にお願いする「ご検討」が少しやわらかくなります。
【シチュエーション別】「ご検討」の使い方解説
「ご検討」の意味や使うときの注意点がわかったところで、実際にどんな場面で使われるのか、よく使用される例文と一緒に見ていきましょう。
①検討してほしいとき
相手に何かを検討してほしいときに使う文言として、次のようなものがあります。
・ご検討ください
・ご検討くださいませ
・ご検討お願いします
・ご検討のほどよろしくお願いします
・ご検討のほどよろしくお願いいたします
・ご検討いただけますと幸いです
・ご検討いただければ幸いです
・ご検討のほどよろしくお願い申し上げます
・ご検討いただけますと幸いに存じます
「ご検討ください」が一番軽い言い方で、下のほうにあるほど丁寧さが増す言い方です。
「ご検討ください」は相手に検討をお願いする言い方ですが、少し冷たい印象があります。そのためもし使うのであれば、文末に「~ませ」を付けた「ご検討くださいませ」のほうが丁寧でいいでしょう。
もう少し丁寧にしたいということであれば「よろしくお願いします」をつけます。補助動詞「する」の丁寧語、謙譲語である「いたす」をつけて「よろしくお願いいたします」にすると更に丁寧になります。
「ご検討いただけますと幸いです」や「ご検討いただければ幸いです」は、直接的にお願いをするのではなく「~してくれると私が嬉しいです」と言うことで、遠回しに相手にお願いをする方法です。取引先や目上の人など、直接的な表現がはばかられるときには便利な言い方でしょう。
更に丁寧にしたいということであれば、「お願いいたします」を丁寧にして「ご検討のほどよろしくお願い申し上げます」にしたり、「幸いです」を丁寧にして「ご検討いただけますと幸いに存じます」にもできます。ちなみに「存じます」は思う、考えるの謙譲語です。
②メールの締めの言葉として使うとき
メールなどで何かの提案をしたり、新しいサービスのご案内をした際に、最後の締めくくりの挨拶として「ご検討」を使うこともあります。
通常は「何卒よろしくお願いいたします」や「どうぞよろしくお願い申し上げます」などで締めることが多いですが、連絡の内容が案内や提案の場合は「ご検討」もつけて、「お忙しいところ恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします」と締めることが可能です。
③いくつも検討してほしいとき
相手にするお願いが1つとは限りません。
その場合は次の文言を使うといいでしょう。
・重ねてご検討のほどよろしくお願いいたします
「重ねて」とは、もう一度、再度という意味で、こちらも一緒にご検討をお願いしますという意味で使います。「ご検討お願いします」を繰り返すとくどくなってしまうので、注意しましょう。
④検討してもらったあと
何かをお願いして、検討した結果が返ってきたときには次のような文言を伝えてください。
・ご検討いただきありがとうございます
・お忙しいところ、ご検討いただきありがとうございます
「ご検討いただきありがとうございます」も問題ありませんが、検討するための時間を作ってくれたことを気遣って、「お忙しいところ」や「お忙しい中」というクッション言葉を最初につけると、さらに印象が良くなります。メールは表情や声色を使って自分の気持ちが表現できないため、少し丁寧さを増した言い方のほうがちょうどいいです。
⑤検討中のとき
検討をお願いするだけではなく、こちら側が検討しなければいけないときもあるでしょう。
その件について上司や取引先から聞かれたときに、まだ検討中であることを伝えるときには、次のように答えましょう。
・〇〇の件につきましては、ただいま検討しております
・〇〇の件は、現在検討中でございます
自分が検討する立場のため、「ご」はつけません。また検討中ですと伝えるのと一緒に、いつまでに結果を出せるのかも言えるといいでしょう。
⑥すぐに判断できないとき
こちら側が何かを提案されて判断をしなければいけないとき、一旦保留したい場合は次のような文言を使いましょう。
・この件は検討させていただきます
・前向きに検討させていただきます
・ぜひ検討させてください
・社内で検討させていただきます
・一度、社に持ち帰って検討させていただきます
「前向きに」や「ぜひ」などをつけることで、これからの展望が明るい感じで終われます。また「社内で検討させていただきます」や「社に持ち帰って検討させていただきます」は、ビジネスシーンでよく使われます。自分では判断できないとき、その場では断れないときなどに使いましょう。
「ご検討ください」は英語で何ていう?
「検討する」は英語で「consider」という単語で表せます。
一番よく使う定番のフレーズとしては次のようなものがあります。
・Thank you for your consideration.
これは「ご検討ありがとうございます」になりますが、同時に「ご検討お願いします」「ご検討ください」という意味にもなります。メールの最後の締めとして使えるフレーズです。
また「前向きにご検討ください」という意味合いで締めたいときには
・We would greatly appreciate it if you can give our proposal a good review.
・We look forward to your positive response.
などで伝えられます。
一旦考えたいとき、検討したいときは
・I’d like to think about it.
と言えますし、社内やチームで検討したいときには
・Let me go over it with the team
と言うことができます。
まとめ
「ご検討」について意味や使い方、使うときの注意点などを解説してきましたが、いかがでしたか。何気なく使っていた「ご検討」ですが、意味としてビジネスシーンにぴったりであることがわかりました。検討をするのは自分なのか、相手なのかに気を付けながら「ご検討」を今後も使っていきましょう。