メールやビジネスツールなどでよく見かける「取り急ぎご連絡まで」という言葉。「とりあえずお知らせします」という意味を持ち、至急確認してもらいたい内容を送信する場合に使用します。しかし「まで」と途中で文書が切られていると、上司や目上の人に使うのは萎縮してしまいますよね。それもそのはず。
「取り急ぎご連絡まで」は敬語を省略しているため、このまま上司や目上の人に送信することはマナー違反となります。では具体的に、どのような文章にすることで丁寧な「取り急ぎご連絡まで」となるのでしょうか。
目次
「取り急ぎご連絡まで」の意味
「取り急ぎご連絡まで」には「とりあえずご連絡だけしておきます」といった意味があります。「取り急ぎご連絡まで」を使う場合は、早急に伝えたい事柄を簡潔にまとめた文書を添えます。そうすることで、「どのような事柄について確認してもらいたいのか」を相手に理解してもらいやすくなります。
会議の日時が変更になったり会食の会場が変更になったりなど、早急に伝えなければ相手に迷惑が掛かる可能性がある場合などに使うことが多い言葉です。weblio辞書で「取り急ぎ」を調べてみると、
1.《「取り急ぐ」の連用形。副詞的に用いて》「いそぎ」を強めていう語。手紙文に用いる。「取り急ぎ一筆申し上げます」 2.たいへんに急いでいるさまを表わす語。主に手紙などで用いられる。*社会百面相(1902)〈内田魯庵〉虚業家尺牘数則「先は当用まで取急ぎ草々」 引用:weblio辞書 |
といった意味が記されています。「取り急ぎ=とりあえず急いで」という意味なのです。
要するに「取り急ぎ」が含まれていることで、急いでいることを強くアピールできたり、手紙やメールなどタイムラグが起きやすいビジネスツールでも、できる限り早く確認してほしいときに使ったりする言葉と言えます。
また、「取り急ぎご連絡まで」は、「現段階では十分な対応や確認が出来ていませんが、できる限りのご報告をさせていただきます。」という意味で用いられます。
つまり「取り急ぎ」は準備ができていない状態を指すため、取り急ぎを多用していると、「中途半端な状態で報告してくる人」だと思われてしまうことも。「取り急ぎ」ばかり使うのは避けましょう。
「取り急ぎご連絡まで」の正しい使い方
ビジネスシーンでも多く使用される「取り急ぎご連絡まで」。ここでは言葉の意味を理解したうえで、マナー違反にならないための正しい使い方について理解していきましょう。
上司や目上の人には使わない
「お手数お掛けします」の「ます」や「恐縮です」の「です」など、挨拶で用いられる言葉の語尾に付随する「敬語表現」。しかし、「取り急ぎご連絡まで」は「まで」で短縮されているため、「失礼に当たるのでは?」と違和感を抱いた方も少なくないのではないでしょうか。
この「まで」の部分には、「ご連絡させていただきます」の敬語表現部分である「させて」と「いただきます」を省いて表記しています。
「まで」に短縮したことで、変更のあった内容を急いで伝えたい気持ちがアピールできます。ただし、敬語表現部分が短縮されているので、上司や目上の人に使うのは厳禁です。
その場合は「取り急ぎご連絡させていただきます」と、敬語表現部分を明記するのが丁寧な表現となります。
「取り急ぎご連絡まで」を使ったら必ず後から連絡すること
「取り急ぎご連絡まで」を送付したあとは、追って連絡することを欠かさないようにします。連絡をしたのち、さらに具体的な詳細が確定したり、詳細が明らかになったりした場合は、さらに「追加連絡」としてフォローすることが重要なのです。
「取り急ぎご連絡まで」を使用したのにもかかわらず、あとに送るべきフォロー連絡が欠けていれば、「だらしない」「マナーが守れていない」といった、ネガティブな印象を与えてしまいますから注意しましょう。
多用は「取り急ぎ」の効果が薄れる
さらに速やかにメールや連絡を確認してもらい、返信を促したいからといって「取り急ぎご連絡まで」を多用するのも厳禁です。多用することで「取り急ぎ」の効果が薄れ、緊急性を感じにくくなってしまうからです。
取り急ぎを多用しすぎると「取り急ぎの連絡が来たが、その後連絡がない」「取り急ぎの連絡ばかりで、詳細が送られてこないので、対応しづらい」という印象を与えてしまうことも。
速やかにメールを確認してもらい返信を促したい場合は、「取り急ぎご連絡まで。今後の対応について回答お願い申し上げます」など、返信を待つ旨が伝わるような一言を添えると良いでしょう。
急いで伝える意味を持つことから伝える内容に注意する
「取り急ぎ」を用いて連絡をするときには、その用件が相手にとって「急いで確認すべき内容であるかどうか」を確認してから送信するようにしましょう。
こちらからすれば急ぎの連絡になるかもしれませんが、相手からするとそこまで急いで確認する必要のない連絡の可能性もあります。
対面や電話で済む連絡であれば別の手段を使うことで解決する時間帯などであれば、別の手段を用いるのも方法のひとつと言えるでしょう。
時間が空いた返信には使わない
「取り急ぎ」は急ぎの場面で使用する言葉です。連絡するべき日から日数が過ぎている場合には「取り急ぎ」を使うのは避けましょう。2〜3日後の返信に取り急ぎと表現するのは適切ではありません。
連絡が遅れた場合には、「取り急ぎ」の言葉を使わず、連絡するべき内容の詳細を記載した文面を送りましょう。
言い換えができるか考える
十分な説明ができないまま、一言だけ返信するのは、上司や目上の方に対して失礼に当たる場合も。一旦言い換えの表現ができないか考えてみてくださいね。
「取り急ぎ」の言い換え表現
「取り急ぎ」を別の言葉で表現することも可能です。「取り急ぎ」には「ひとまず急いで」「まずは急いで」「いったん急いで」といった意味を含みます。そのためこの「ひとまず」「まずは」「いったん」に言い換えてみることでより丁寧な印象を与えることができます。
例文:まずは会食会場の日時変更のご連絡のみで失礼いたします。ひとまず修正した資料の送付のみのご連絡とさせていただきます。いったん場所変更のご連絡のみとさせていただきます。 など |
さらに、「まで」の部分を「失礼いたします」に変更するとより丁寧に伝えることができ目上の人や上司に使うことも可能です。「ご連絡まで」の部分についても「ご案内まで」「ご報告まで」に変更することで、より具体的な内容であることが一目で確認できるようになります。
しかし、「とりあえず」や「一応」などの言葉は、具体的な内容が現在進行形で不透明な状況のときに使うため、相手に不安を与えてしまいます。普段から「まずは」や「ひとまず」などと似たニュアンスだと思い込んで使用している人は、この機会に注意して使うようにましょう。
「取り急ぎご連絡まで」の言い換えとその例文
「取り急ぎご連絡まで」の使い方や気を付けなければならないポイントがわかったところで、次は丁寧な印象を与える表現方法について見ていきましょう。
ひとまず資料やメールを確認して欲しい場合
上段の中で「取り急ぎ」には「まずは」や「ひとまず」といった意味があると説明しました。実際に「ひとまず」資料やメールに目を通して欲しいときには以下のように使用しましょう。
取り急ぎ、修正した資料を送付させていただきます。先日お話しした○○様のアポですが、無事□□日に取れました。要件のみで恐縮ですが、取り急ぎご連絡させていただきます。 |
〇〇の資料作成致しました。〇〇の部分についてご確認いただきたいです。取り急ぎのご連絡失礼致しました。 |
決定事項を早急に伝えたい場合
上司や目上の人も含めて、なにか重要な決定事項があり、その旨を早急に伝えたい場合は以下の用に使用します。
○○社へのアポについてですが、先日お話ししていた□月□日から×月×日へと変更になりましたので、取り急ぎご連絡させていただきます。フライトのご予約についてですが□月□日に抑えることができましたので取り急ぎご連絡とさせていただきます。 |
先ほどの打ち合わせにて、A社との〇〇に関する業務提携が決定致しました。今後の動向については明日以降ご連絡致します。略儀ながら、まずはメールにてご連絡申し上げます。 |
速やかにお礼を伝えたい場合
取引先やお客様に対して速やかにお礼を伝えたい場合は以下のように使用します。
先ほどはお忙しいところ当社までお越しいただき本当にありがとうございました。取り急ぎお礼のご連絡とさせていただきます。 |
先ほどはお忙しい中、お話のお時間いただきありがとうございました。〇〇様とのお話で得た〇〇を実践していきたいと思いました。取り急ぎお礼のご連絡とさせていただきます。 |
速やかに謝罪したい場合
取引先やお客様に対して、謝罪をしたい場合は、以下のように使用します。
まずはメールにてお詫び申し上げます。この度はこちらの不手際で〇〇(相手の名前)様にご迷惑をおかけしたこと、心より深くお詫び申し上げます。今後の対応については、社内で検討中ございます。何卒よろしくお願い致します。 |
「取り急ぎご連絡まで」の使用における注意点
「取り急ぎご連絡まで」は緊急性のある連絡をする場合や、相手がこちらの連絡を待っている場合に使用します。そのため、使い方によってはいくつかの注意点を知っておく必要があります。
要件に緊急性があるかどうかを考える
たいした用件でもないのにもかかわらず、頻繁に「取り急ぎご連絡まで」を使用すると、言葉の意味が薄れてしまいます。こういった可能性も考慮し、本当に緊急性のある内容のときこそ使うことが大切です。ほかにも、以下の注意点も留意すべきと考えられます。
言い回しに気を配ることが大切
「取り急ぎご連絡まで」は丁寧な表現を省略したうえで「速やかに確認してほしい内容がある」場合に使用します。そのためこの言葉のまま目上の人や上司に使うことは御法度と考えられます。目上の人や上司に至急確認してもらいたい連絡をする際には、「取り急ぎご連絡とさせていただきます」「まずはご報告申し上げます」など丁寧な、表現に直すことが重要です。
内容を漏れなく簡潔に伝える
急いで報告したい要件がある場合、ついダラダラと長文を打ってしまいたくなります。変更になった経緯や具体的な変更箇所など、事細かに伝えたくなってしまうものです。しかし、経緯を含めた文章ではいまいちどこに緊急性があるのか伝わりにくかったり、内容を把握しにくかったりと、相手も意味を理解するのに時間が掛かってしまいます。「取り急ぎご連絡まで」を使用する場合は変更のあった内容を簡潔に漏れなく伝えるのがマストです。
追加で連絡することを忘れない
「取り急ぎご連絡まで」を使う場合は、後からその内容の詳細を丁寧に細かく連絡するのがマナーです。「取り急ぎご連絡まで」を使った場合は、追って詳細連絡をする必要があることをあわせて覚えておきましょう。
返信を要する場合はひと言添える
上述したように、こちらからの「取り急ぎご連絡まで」の要件に対して速やかに返信を求める場合は最後にひと言添えましょう。「取り急ぎご連絡まで」で終わってしまうと、相手に早急に確認してほしい旨を伝えるのみとなり、追加連絡を待った方が良いと解釈しかねません。返信内容によって今後更に状況が変わる、なにかしら動きがある場合には、「今後の対応について返信いただけますと幸いです」など、返信を待っていることもしっかりと伝えましょう。
「取り急ぎご連絡まで」を各国の言葉で表現する方法
「取り急ぎご連絡まで」を各国の言葉で表現するにはどのような言葉が適しているのでしょうか。あらゆる国の言葉を知ることで、多方面で使えるようになりますから、しっかりチェックしていきましょう。
英語
This is a quick note to tell you…(取り急ぎご連絡まで)This is a quick note.(メールの文末で使用する場合の”取り急ぎご連絡まで”)just a heads up(カジュアルな取り急ぎ~)Kind reminder(カジュアル+フォーマルな取り急ぎ~)I’m writing to ~(カジュアル+フォーマルな取り急ぎ~)I just wanted to ~(カジュアル+フォーマルな取り急ぎ~) |
韓国語
급히 연락을 드렸습니다.(取り急ぎご連絡を差し上げました)우선 급한대로 연락 드립니다.(取り急ぎご連絡差し上げます)급히 연락드립니다.(取り急ぎご連絡まで)급하게 연락드립니다(取り急ぎご連絡まで)우선 급하게 감사의 말씀 드립니다(取り急ぎお礼まで) |
中国語
匆忙联络(取り急ぎ連絡します)即此联络如上(取り急ぎご連絡まで)匆匆汇报如上(取り急ぎ、ご連絡まで)匆匆报告如上(以上、取り急ぎご報告申し上げます)紧急联系。(取り急ぎご連絡します)关于……,马上与您联络(~について、取り急ぎご連絡いたします)仅匆匆汇报要紧的事情,请见谅(取り急ぎ、要件のみで失礼いたします)先把想要分享的信息汇总发给您(取り急ぎ、共有させて頂きたい情報のまとめを送ります)匆匆向您报告现在的调查状况(現在の調査状況について取り急ぎ報告いたします)我赶忙写了报告书(報告書を取り急ぎ作りました)请赶紧发送样品(取り急ぎサンプルを送ってください) |
社会人として正しい意味を理解して使おう
「取り急ぎご連絡まで」は急いで要件を確認してほしい場合のみに使う言葉です。敬語が省略しているため、そのまま目上の人や上司に使う場合は文末を敬語にしなければならないといった注意点などがありますが、しっかりと学んでおくことで、相手に正しい日本語が使える社会人として印象づけることができます。この記事を通じて「取り急ぎご連絡まで」の意味を知り、適切な使い方をマスターしてください。