特に何も問題がないときに使われる「申し分ない」という言葉。ただ、どことなく上から目線のような感じがしませんか?今回は「申し分ない」の意味や正しい使い方を徹底解説していきます。なぜ上から目線のような気がしてしまうのか、ビジネスシーンなどで使いたいときにはどう言い換えればいいのか、確認していきましょう。
目次
「申し分ない」の意味と使い方とは?
「申し分」ってどういう意味?
「申し分」とは「もうしぶん」という読み方をし、「不満に思う点」「非難すべき点」「欠点」を意味する名詞です。また、ある物事を申し立てることを意味します。何か不満なところや気になるところがあれば「妙な申し分ですが…」と切り出すことができます。
そして細かく見てみると「申し」と「分」に分かれます。
「申し」とは「お願い」を意味し、「分」は「それに相当するもの」を意味します。つまり何かお願いしたいこと、言いたいことを表します。そこから「不満に思う点」や「非難すべき点」という「申し分」の意味に繋がります。
「申し分」単体で使う機会は少なく、使うことがあっても「妙な申し分ですが…」というように何かに対して助言する、あるいは介入して申しつける際に使います。
「申し分ない」とは?
「申し分」が「不満に思う点」や「非難すべき点」という意味であることがわかりました。
つまり「申し分ない(もうしぶんない)」というのは、「不満に思う点がないこと」「非難すべき点がないこと」を意味します。なお、「申し分ない」は「申し分がない」という言い方もできます。
「申し分ない」の使い方
特に言うことがない、不満に思う点がないときに使われます。
「特に言うことはないです」の意味の「申し分ないです」や、より丁寧な言い方にした「申し分ございません」などがあります。上司や取引先など目上の人に対して「特に問題ないです」と伝えたいときには「申し分ございません」というもっとも丁寧な言い方で使いましょう。
また人やモノに対して「完璧だ」「文句なし」と評価したりするときにも使います。
【例文】
・〇〇さんにお願いした資料だが、申し分ない出来だった
・彼女は弊社では申し分ないほど立派な立場の人間です
「申し分ない」「申し訳ない」どっちがどっち?
相手に何かを謝るときに使う「もうしわけない」という言葉があります。
「申し分ない」って「もうしわけない」じゃないの、と思っている人もいるかもしれませんが、実は謝罪の言葉である「もうしわけない」の漢字表記は正しくは「申しわけない」であり、よく使われる「申し訳ない」は同音の漢字をあてただけです。また「もうしわけない」の意味で「申し分」を使うのであれば、正しくは「申し分けない」という書き方になります。
そのため「申し分ない」は「不満に思う点はないこと」の意であり、「もうしぶんない」という読み方であることを押さえておきましょう。
「申し分ない」が上から目線に聞こえる理由
ビジネスシーンで上司や取引先などから何かを確認してほしいと言われたり、この内容で問題ないか聞かれた際、「申し分ないです」と言いたくなることもあるでしょう。しかし人によっては「上から目線だ」「偉そう」と感じることもあるようです。意味の上では「完璧だ」に近い言葉であるのに、では一体なぜ「上から目線」に聞こえてしまうのでしょうか。
①「申し分ない」は「100%」であって「120%」でない
「申し分ない」は「非難する点がない」「不満に思う点はない」という意味ですが、不満に思う点はないというだけであって、それ以上のものではないという風にも聞こえます。「特に指摘する点もなく100%の出来栄えではあるけれども、120%に達するほど+αがあるわけでもない」ということです。
ビジネスシーンに限ったことではありませんが、より良いコミュニケーションをする場合、相手から何かをしてもらったり、何かをいただいたときは、それが「100%のものです」と言うのではなく「200%のものです」と伝えたうえで感謝することが大切です。例えば「申し分ないです」や「申し分ございません」と言うのではなく、「身に余るほどのものをありがとうございます」と伝えたり、そのような気持ちを持って返答することで良い関係を作ることができます。。
②「申し分ない」は物事を値踏みしているように聞こえる
また「申し分ない」は、「申し分」という「欠点」「不満に思う点」がないということです。物事に対して特に問題がなければ「問題ない」と言えばいいところを、わざわざ「不満に思う点はない」と自分の考え、感じたことを言っています。つまり相手からいただいた物に対して評価をしている、値踏みをしているという雰囲気が感じられるのです。
具体的なシーンで考えると、例えば自分が何かについて困っていて、誰かに助けてもらったとしましょう。そして相手から「この内容で大丈夫か」と質問されたとします。「申し分ないです」や「申し分ございません」と答えることもできますが、助けてもらっているにも関わらず「不満に思う点はないです」と言ってしまうところが少し引っかかるのです。
それよりもまずは「お心遣いいただきありがとうございます」と感謝を述べることが先でしょう。日本語は感謝を述べることが、すなわち同意でもあることが多いので、今回の場合は「お心遣いありがとうございます」が「この内容で大丈夫か」の返答にもなっています。
敬語ではない?「申し分ない」の注意点
①「申し分ない」は敬語ではない
「言う」の謙譲語である「申し」が入っていることから、「申し分ない」は敬語であるような感じがします。しかしここでの「申し」は謙譲語の意味はありません。そのため「申し分ない」は敬語ではありません。敬語だと思って「申し分ございません」ではなく、「申し分ないです」と使ってしまうと丁寧さに欠ける言い方になるので注意しましょう。
②目上の人には使わないようにしよう
前述したように「申し分ない」は、人によっては「偉そう」「上から目線に聞こえる」と感じます。そのため取引先とのやり取りや、上司などの目上の人への返答では控えたほうがいいでしょう。同僚や部下などから何かの確認をお願いされた際に「申し分ないです」というぐらいにしておきましょう。
「申し分ない」を言い換えたいときの6つの語句
「申し分ないです」ということを伝えたいけれど、他の言葉で言い換えるときの7つの語句をご紹介していきます。
①問題ない
何かの確認を求められたとき、特に何も言うことがないということであれば「問題ないです」と言いましょう。「申し分ないです」は「私は不満に言うことはないです」ということになり、評価や値踏みをしているようにも少し聞こえますが、「問題ないです」であれば確認したものに対して問題ないと率直に伝えることができます。
ただし「問題ないです」はかなりフランクな言い方です。
そのため日常生活や、ビジネスシーンであっても同僚や部下に対して使う言い方です。ある程度関係性がある上司や目上の人に対しては「問題ありません」、そして取引先や担当の顧客、目上の人に対しては「問題ございません」を使いましょう。
またメールでは、相手の立場の上下に関わらず「問題ございません」がおすすめです。というのもメールなどの相手が見えないコミュニケーションでは、表情や声色、言い方などで自分の感情を表現できないため、普段よりもより丁寧な言葉でコミュニケーションを取ったほうがいいからです。
一方、人やモノに対して「不満に思う部分はない」「完璧である」という意味で「申し分ない」を使う場合は、「問題ない」はあまり使わないほうがいいでしょう。
例えば「申し分ない資料」や「彼女は申し分ない才能を持っている」が、「問題ない資料」「彼女は問題ない才能を持っている」となるとどうでしょうか。意味合いは通じますが、「資料」や「才能」が「完璧である」というような意味が薄れてしまいます。人やモノが「申し分ない」というときの言い換えとして「問題ない」はあまり使えないことがわかります。
②完璧な
完璧とは「1つも欠点がなく完全なこと」を意味します。
そのため、何かの確認をして問題がないという意味での「申し分ない」や、人やモノに対して非難すべき点がないという意味での「申し分ない」どちらにも使える言い換えです。ただし「どこをどうみても何も問題がない」という強い意味合いの言葉であるため、使いすぎると言葉の重みがなくなってしまいます。本当に非の打ちどころのないときのみ、「完璧です」や「完璧でございます」を使うようにしましょう。
③理想的な
自分が思っていた通りのものであった場合に使える言葉です。
「申し分ない」は「自分が考えていた通りで不満に思うところはない」という意味も含まれていますが、それ以外にも「規定通りで不満に思うところがない」「計画の予定通りで不満に思うところがない」など自分の考えとは別のところの判断軸で評価される「申し分のなさ」もあります。そのため「自分の考えていた通り」と言えないときには「申し分ない」の言い換えとして「理想的な」は使えません。
④最適な
「最適」とは一番適していることを意味します。
人やモノが何かにぴったりであるときに使える言葉です。そのため、何かを確認して何も問題がないと伝えるときの「申し分ないです」の言い換えには使うことができません。例えば「この資料の確認をお願いします」の返答として「最適です」は少し違和感がありますよね。「最適な」は人やモノを評価するときに使いましょう。
⑤文句なし
「文句なし」は「苦情を言う余地がないさま」を意味します。
「不満に思う点がない」「非難すべき点がない」という意味では「申し分ない」と同じです。「申し分ない役職」や「申し分ない才能」を「文句なしの役職」や「文句なしの才能」と言い換えることができます。しかし、何かの確認をして問題がないことを伝えるときに「文句ないです」と言うと少し冷たい印象を受けます。この場合は「文句」ではなく「問題」にして「問題ないです」と言ったほうが良いでしょう。
⑥結構だ
「結構だ」は少し使い方が難しい言葉です。
なぜなら「大丈夫」「問題ない」という肯定の意味と、これ以上はいらないという否定の意味があるからです。何かの確認において、これでOKという意味で「結構です」と答えてしまうと少しわかりにくい部分があります。肯定の場合は「これで結構です」「それで結構です」などと言うとわかりやすくなります。ただし、冷たい印象のある言葉でもあるため、相手が誰であっても使用はあまりおすすめではありません。
「申し分ない」を英語で言うにはどうする?
「申し分ない」の意味や言い換えなどがわかりましたが、英語で「申し分ない」を表す言葉としてどのようなものがあるのか見ていきましょう。
①leaves nothing to be desired
「不満なところがない」「完璧」という意味です。
「これは申し分ないです」であれば「This leaves nothing to be desired」となります。
②It would be perfect~
「~だと完璧なんだけどな」という意味の言葉です。
語句の後にどうなれば申し分ない状態になるのかを説明しましょう。
例えば「It would be perfect if the seats on airplanes were a bit bigger.」となれば、「もう少し飛行機の座席が大きかったら申し分ないんだけどな」となります。
③その他
「完璧な」という意味を持つ単語としては「perfect」「completely」「satisfactory」「impeccable」「consummate」「unimpeachable」というものが挙げられます。
【例】
a consummate performance(申し分のない性能)
Everything turned out satisfactory.(すべては申し分なかった)
まとめ
「申し分ない」についてその意味や正しい使い方、使う場合の注意店、言い換えの方法などを解説してきましたが、いかがでしたか。敬語ではないことや、人によっては上から目線に聞こえるといった注意点があることがわかりました、そのためビジネスシーンでは他の言葉に言い換えたほうがいいでしょう。ただ、「申し分ない」を耳にする機会も多いですから、その意味と使い方を押さえておくことが大切です。