ビジネスパーソンのあなたは、「差し支え(さしつかえ)なければ」という言葉を使ったことはありますか?口に出して使うこともあれば、メールに書くこともあるでしょう。何気なく使っている「差し支えなければ」という言葉、実は使い方を間違えやすい語句なんです。
この記事では知らないと恥ずかしい「差し支えなければ」の意味や類義語、正しい使い方を解説していきます。ビジネスシーンでの活用が前提ですので就活中のあなたも今すぐ「差し支えなければ」を使えるようになります。ぜひ参考にしてください。
目次
「差し支えなければ」はどんな読み方?どんな意味?
「差し支えなければ」の読み方は「さしつかえなければ」です。「差し」の部分は読めても「支え」の部分が難しいですね。送り仮名は「差し支え」と「差支え」がありますが特に違いはありません。迷ったら無難に「差し支え」の方を使うと覚えておくのが良いでしょう。「差し支えなければ」の意味は下記の項で解説します。
「差し支えなければ」の意味
あなたは「差し支えなければ」の意味をどうお考えでしょうか?「もしよろしければ」という風に捉えているのであればほぼ正解です。丁寧な言い方にするのであれば「都合が悪くなければ」「不都合がなければ」という意味になります。
意味からわかるように、基本的に相手に断られても良い場面で「差し支えなければ」を使います。クッション言葉として使う機会がほとんどです。
メールの文面でもクッション言葉として使えます。メールの文面でも、クッション言葉を用いることで、より丁寧で柔らかい伝え方になります。依頼や断りの連絡を入れる際に相手に失礼にならないように、言葉の衝撃を和らげる言葉として働いてくれるため、円滑なコミュニケーションを取りやすくしてくれる役割があります。
「差し支えなければ」の例文
「差し支えなければ」はどういったシーンで使われるのでしょうか?ここでは今すぐ使える例文をご紹介します。社会人の方はもちろん、就活生の方も今すぐ使えますのでぜひ参考にしてください。
「差し支えなければご教示願います」
ビジネスシーンでわからないことがある際によく使われます。相手型の都合が悪くなければぜひ教えていただきたいという意味合いになります。こちらは立場が上の方や初対面の方へ用いる敬語ですので、普段親しい間柄の上司と部下で使われることはあまりありません。
口語でも文語(メール文書)でも使えますので、不明点を丁寧に聞きたい場合はぜひ使ってみてください。
●差し支えなければ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。
●差し支えなければ、この後お時間をいただいてもよろしいでしょうか。
●差し支えなければ、プレゼンで発表された内容についてお聞かせ頂けますか。
●差し支えなければ、〇〇の件についてご教示いただけますか。
●差し支えなければ、ご教示のほどよろしくお願い致します。
「差し支えなければお伺いしてもよろしいでしょうか」
これは相手方のもとへ出向く際のアポとりに使われます。相手のもとへ伺うタイミングを相手にお任せすることで相手に不快感を与えないような表現になります。
時刻を間に挟んで「差し支えなければ〇〇時ごろにお伺いしてもよろしいですか」という表現にすることもできます。
●差し支えなければ、明日の〇時〇分ごろに〇〇にお伺いしてもよろしいでしょうか。
●差し支えなければお名前とご住所をお伺いしてもよろしいでしょうか。
●差し支えなければ、今後のスケジュールをお伺いしてもよろしいでしょうか。
「差し支えなければこちらにご記入いただけますか」
このケースは来客があった際に口語として使われます。来客名簿に名前を記入するのはビジネスの場では当たり前の行為なので、「恐縮ですが」のような強めの表現でなく、「差し支えなければ」という弱めの表現を使います。もし断られてしまった場合は「当社の決まりとなっておりますので、”恐れ入りますが”こちらにご記入いただけますでしょうか?」という強めな要求表現を使いましょう。
●差し支えなければ、この用紙にお名前と生年月日をご記入いただけますか。
●差し支えなければ、ウェブのアンケートに回答のご協力をいただけますか。
「差し支えなければ」を使う際の注意点
ここからは「差し支えなければ」を使う際の注意点を解説していきます。「差し支えなければ」の意味、使い方を知っていても、この注意点を知らなければ恥ずかしい思いをしてしまうので、必ず最後まで読んでください。
「差し支えなければ」は敬語ではない
字面だけ見ると敬語のように感じてしまいますが、実は「差し支えなければ」に敬語表現はありません。「差し支えなければ」が敬語だと勘違いして、二重敬語を避けようと続く言葉を口語にしてしまうとおかしな日本語の文章になってしまいます。
例えば「差し支えなければサインを書いてくれますか?」という文章は違和感を感じますよね。正しくは「差し支えなければ、サインをいただけますでしょうか?」「差し支えなければサインを頂戴できますでしょうか?」となります。
上記のように「差し支えなければ」に敬語表現はないので使う際は注意しましょう。
拒否されたら困る場合は使えない
「差し支えなければ」は「もし不都合がなければ」という意味合いなので、要求の度合いが弱いことが特徴です。断られても大丈夫なお願いをする時にのみ「差し支えなければ」を使います。ですので断られると困るお願いをする際に「差し支えなければ」を使ってしまうと自分が大変になってしまいます。もし断られると困る場合は「恐縮ですが」「恐れ入りますが」という強めの要求表現を使いましょう。
差し支えることが明らかに判明している場合
上記の項目に関連して、もし明らかに相手の業務に支障をきたす(差し支える)ことがわかっている場合は「差し支えなければ」という表現を使ってもほぼ断られます。相手の業務を止めてしまうけど無茶を通したい、そういう場合は「恐れ入りますが」のような要求の強い表現を使いましょう。しっかりクッション言葉をつけておくことで、お互いに気を悪くすることもなくコミュニケーションをとることができます。
堅苦しく捉えられる場合
「差し支えなければ」は柔らかい要求表現なのですが、使い方によっては堅苦しく捉えられてしまう場合があります。例えば「差し支えなければで構いません」という表現です。「構いません」という言葉は「問題がなければ」という意味を含んでいるので、「差し支えなければ」と意味が被ることになります。似た意味の言葉を連ねてしまうとかえって堅苦しく、圧の強い要求表現になるので注意が必要です。
「差し支えなければ」の類義語、言い換え表現を紹介
メールや口頭で相手方と連絡をとるとき、何度も「差し支えなければ」を繰り返し使うと、やりとりの中で違和感が生まれますよね。ですのでここからはビジネスシーンでよく使う「差し支えなければ」の類義語、言い換え表現をご紹介します。
「よろしければ」
「差し支えなければ」の類義語、言い換え表現1つ目は「よろしければ」です。「もしよろしければ〜」とよく聞くことがあるでしょう。「差し支えなければ」同様、「よろしければ」は相手に決定権があります。上記で紹介した例文と同じような使い方ができ、「もしよろしければ、こちらから折り返しお電話いたしましょうか?」という風に相手を立たせる表現ができます。
「差し障りなければ」
「差し支えなければ」の類義語、言い換え表現2つ目は「差し障りなければ」です。「さしあたりなければ」という風に読みます。「差し支え」と「差し障り」はほぼ同じ意味の単語として使われますが、用いる対象が異なります。「差し支え」が個人向けに用いられるのに対し、「差し障り」は会社・組織向けに用いられる表現です。この使い分けをしっかり覚えておくことで周りとは一味違うビジネスパーソンに近づくので、ぜひ覚えておきましょう。
「不都合でなければ」
「差し支えなければ」の類義語、言い換え表現3つ目は「不都合でなければ」です。もし「差し支えなければ」という表現がややこしく感じてしまうのであれば、ストレートに「不都合でなければ」と聞くのも良いでしょう。「もし不都合でなければ今からお伺いしてもよろしいでしょうか?」というように自分にとっても相手にとってもわかりやすい表現になります。「不都合でなければ」と同様の言葉として「ご都合がよろしければ」という表現もありますので、そちらを用いるのもよいですね。
「差し支えなければ」の英語表現
近年、日本にいながら外国の方とビジネスのやりとりをする場面が増えてきましたね。「差し支えなければ」は英語でどう表現するのでしょうか?詳しく解説していきます 。
「If you don’t mind,」(if you do not mind,)
最も日本語に近い形で表すのであれば「If you don’t mind,〜」という表現がよいでしょう。
mindは「気にする」「気にかける」「迷惑がる」という意味を持っているので、「もしあなたの迷惑でなければ」「もしあなたが気にしないのであれば」という表現ができます。
例えば相手の名前を尋ねる際、「もし差し支えなければ、名前をお伺いしてもよろしいですか」と聞きたければ以下のような英語表現をするとよいでしょう。
If you don’t mind, may I ask your name?
(読み方:イフユードンマインド、メイアイアスクユアネーム?)
「If you are okay,〜」
「If you are okay,〜」(読み方:イフユーアーオーケイ?)という表現は「あなたが大丈夫であれば」という意味合いを持ちます。差し支えなければという意味を英語で表現する際には最もシンプルでわかりやすいですが、少し子供っぽい文法ですよね。メール文章で差し支えなければと送る場合は上記の「If you don’t mind,」を使った方がより丁寧な表現になります。ただ対面でやりとりをする際に「差し支えなければ」と咄嗟に英語で言わなければならないシーンでは「If you are okay」が最もシンプルで使いやすいでしょう。
「if I may ask,」
上記の他にも「If I may ask,〜」(読み方:イフアイメイアスク)という英語表現があります。直訳すると「もし私が聞いてよければ」となります。こちらも「差し支えなければ」という日本語を英語で表現する際に用いられる英語表現ですが、送り手(話し手)である我々日本人のわかりやすさでいうと「If you don’t mind,」の方が直感的にわかりやすいでしょう。
「差し支えなければ」と言われた時の回答
これまで「差し支えなければ」という言葉の意味や例文、類義語に着目してきましたが、こちらが「差し支えなければ」と言われた場合はどういった回答をするべきなのでしょうか?詳しく解説していきます。
返答が「YES」の場合
「差し支えなければ」と言われて肯定的な返事をする際は特に難しいことはありません。「問題ありません、大丈夫です」「承知いたしました」「はい、承ります」のようなストーレートな表現が良いでしょう。
返答が「NO」の場合
「差し支えなければ」と言われて否定的な返事をする際は少し注意が必要です。「差し支えなければ」というクッション言葉を使われているので、こちらもクッション言葉を添えて返事をしましょう。
例えば「差し支えなければ今からお伺いしてもよろしいでしょうか」と聞かれて「無理です」「またにしてください」とだけ答えるとあまりにも失礼ですよね。このような場合は「大変申し訳ないのですが、本日は都合が悪くご希望にお答えすることができません。明日14時はいかがでしょうか?」など、こちらも「大変申し訳ないのですが、」というクッション言葉を使うことによってビジネスパーソンとして対等な目線でやりとりを行うことができます。
まとめ
いかがだったでしょうか?「差し支えなければ(さしつかえなければ)」は”もしご都合がよければ”、”もしよろしければ”といった意味をもつ言葉です。相手に決定権を委ねるクッション言葉としてよく使われます。「差し支えなければ」を英語で表すのであれば「If you don’t mind,〜」と表現するのが良いでしょう。「差し支えなければ」という表現は相手に決定権を委ねるため、断られてしまう可能性も十分あります。ですので断られると困る場合は「恐れ入りますが」「恐縮ですが」のような強い要求表現を使いましょう。