社会人であれば一度は使う機会のある”恐縮です”という言葉、あなたはちゃんと意味を理解して使っていますか?”恐縮です”を考えなしに使っていると「この人の日本語は不適切だな」と思われてしまいます。この記事では、社会人なら知らないと恥ずかしい”恐縮です”の正しい使い方と例文を解説していきます。就活生のあなたもすぐに使えるようになるので、ぜひ最後まで見てみてください。
目次
「恐縮です」の意味
”恐縮です”はそもそもどんな意味を持つ言葉なのでしょうか?「身も縮まるほどに恐れ入ること」という意味をもち、謙遜する気持ちを表現します。謙遜表現ですので、目上の方に使う機会はあっても、同年代や自分より立場が下の人に用いることはまずありません。日本語特有のクッション言葉として使われることが多く、ビジネスシーンで重宝するフレーズです。クッション言葉というのは、自分の意見を述べる前に相手への気配りを表現する言葉です。”恐縮ですが”、”お手数おかけしますが”のように文の先頭に置かれることが多いです。
「恐縮です」は敬語?
「“恐縮です”は謙遜表現って言ってたけど、敬語の認識で良いの?」
はい、”恐縮です”は敬語という認識で大丈夫です。自分の立場を下げることで相手を立たせる謙譲に近い表現ですので、目上の方であれば使っても何ら違和感はありません。
ここで注意すべきなのが「恐縮に存じます」という表現です。これは二重表現に該当するため避けるべき表現です。”恐縮”という言葉には「ありがたく思う」「申し訳なく思う」と言う意味が込められており、”存じます”という言葉は「思う」の謙譲語「存する」ですので、「思う」と言う意味合いの言葉が2つ連なっています。違和感を覚えてしまう表現になりますので「恐縮です」にとどめておきましょう。
「恐縮です」の使い方と例文
”恐縮です”という言葉は主に、「感謝」「謝罪」「断り」の3つの場面で使うことができます。ここからは“恐縮です”のそれぞれのケースに合った使い方をご紹介します。
感謝を表すシーン
“恐縮です”は「ありがとうございます」と感謝を伝える際に使用されます。周囲の人間から賞賛されたり、高い評価を頂いた際に謙遜の意味で使います。”恐縮です”は「恐れ多いです」「とんでもないです」という意味を持っているのでまさにピッタリの表現です。
例文①
先輩社員:「営業成績1位おめでとう」
自分:「恐縮です」
これではぶっきらぼうだなと感じてしまう場合は、ストレートに「ありがとうございます」と付け足しましょう。
例文②
上司「よく頑張ったな、〇〇のおかげで上手く事が進んだよ」
自分:「恐縮です、ありがとうございます」
申し訳ない気持ちを表すシーン
相手の言動に対し、申し訳ないという気持ちを伝えたい時も「恐縮です」という言葉が使えます。このシーンで使う”恐縮です”には完全に申し訳ないという気持ちもあれば、少し感謝の気持ちも混じっている気持ちも込められます。
例文①
「お忙しい中足を運んでいただき大変恐縮です」
例文②
取引先:「つまらないものですが、どうぞお召し上がりください」
自分:「ありがとうございます、恐縮です」
例文③
「恐縮ですが、よろしくお願いします。」
相手の申し出を断るシーン
相手からの提案、申し出を断る際にも”恐縮です”というフレーズが使われます。「申し訳ありませんが」と同様のニュアンスと考えてもらって大丈夫です。
例文①
上司:「今日の飲み会、〇〇も来ない?」
自分:「恐縮ですが、先約があるため今回は遠慮させていただきます」
例文②
取引先:「この後食事でもどうですか?」
自分:「大変恐縮ですが、すぐ会社に戻らなくてはなりません。またこちらからお誘いします」
「恐縮です」の類義語、言い換え表現を紹介
”恐縮です”というフレーズは感謝、謝罪、断り、3つの場面で使えますが、連続して使うと日本語としてあまり美しくありません。そこで”恐縮です”の類義語、言い換え表現をご紹介します。
”恐縮です”を強調する言い換え表現
”恐縮です”というフレーズの語尾を変えるだけでも、印象がかなり変わります。下記に”恐縮です”を強調できるフレーズを挙げます。
・恐縮の限りです。
・甚だ恐縮です。
・恐縮千万です。
・恐縮の極みです。
「恐れ入ります」
”恐縮です”とほぼ同義の言葉として”恐れ入ります”が挙げられます。以下のように3つの場面で使うことができます。
感謝するシーン
取引先「そちらに資料を用意してあります」
自分「恐れ入ります」
謝罪するシーン
上司「今回は仕方ないとして今度から気をつけてね」
自分「恐れ入ります、申し訳ございません」
お断りするシーン
「恐れ入りますが、こちらに名前を記入していただけますか?」
「申し訳ございません」
”恐縮です”を使って謝罪、お断りの気持ちを表したい時は”申し訳ございません”というフレーズを使うことができます。下記に使用例を記載します。
謝罪するシーン
先輩社員「そこは〇〇部で発注しないと。時間ある時に修正しておいて」
自分「申し訳ございません。すぐに取り掛かります」
お断りするシーン
「申し訳ございませんが、今回は遠慮させていただきます」
「痛み入ります(いたみいります)」
あまり聞き慣れない言葉だとは思いますが、”痛み入る”というフレーズを使って「心が痛むほどの感謝」を伝えることができます。”恐縮です”の感謝を伝えるシーンと同様の使い方ができます。
例文
「課長のお気遣い痛み入ります」
「問題ありません。お心遣い痛み入ります」
「恐縮です」を使う際の注意点
”恐縮です”の意味と使い方がわかったところで、使用上の注意を解説していきます。この注意点を知らないと恥ずかしい思いをしてしまうのでぜひ最後まで見てみてください。
連続して使わない
”恐縮です”は上記の通り、感謝、謝罪、お断りの3つの場面で使える便利なフレーズですが、連続して使用すると相手に違和感を与えてしまいます。例えば以下のようなやりとりを見てみましょう。
先輩社員:「会議資料用意しておいたから事前に見ておいて」
自分:「恐縮です。大変恐縮なのですが、今すぐ外回りに出なければならないので本日中には確認しておきます。」
”恐縮です”と2回続けて言うと、上記のようにおかしな文章になります。「恐れ入ります」「申し訳ございません」といった言い換え表現を駆使して以下のように書き換えましょう。
「恐れ入ります。恐縮ですが、この後外回りに出なければならないため、本日中の確認でもよろしいでしょうか?」
「恐縮です。申し訳ございませんが、この後外回りに出なければならないため、本日中の確認でもよろしいでしょうか?」
重大なミスをした際の謝罪文には使えない
重大なミスをした際に、謝罪の言葉として「恐縮です」を使ってしまうと失礼にあたります。”恐縮です”は謝罪の度合いが弱いので重大なミスをした際の謝罪文としては適していません。「大変申し訳ございません」「謹んでお詫び申し上げます」などのフレーズを使いましょう。
口語より文章で使うことの方が多い
今更ですが、”恐縮です”は話し言葉として使われるよりもメールや手紙などの文章ベースで使われることが多いです。話し言葉で使うのであれば”恐れ入ります”や”申し訳ございません”といったフレーズの方が堅苦しくなく、使い勝手が良いのでおすすめです。また相手からの印象も”恐れ入ります”というフレーズの方がとっつきやすいイメージを与えるので話し言葉として使うのであれば”恐縮です”よりも”恐れ入ります”、”申し訳ございません”を優先しましょう。
「恐縮に存じます」は二重表現
冒頭でも解説しましたが、”恐縮に存じます”という表現は「思う」という意味の言葉を2回連ねているので二重表現になるので避けるべきです。
もしも”恐縮です”というフレーズをより丁寧に表現したいのであれば、下記のような言い換えがおすすめです。
・恐縮しきりでございます。
・恐縮千万です。
・恐縮の極みです。
「恐縮です」を使う相手に注意
”恐縮です”は自分を謙遜する表現ですので、相手側の視点で使うのは失礼に当たります。例えば「恐縮なさらず、ぜひお越しください」という文章は「申し訳なく思わないでぜひ来てください」という意味になります。この文章の意味を見ると、何だか上から目線に感じますよね。実際この表現は失礼に当たるので、”恐縮です”というフレーズは必ず自分目線で使うように意識しましょう。
「恐縮です」の英語表現
近年日本人以外の方とビジネスのやりとりをする機会が増えてきましたよね。英語で”恐縮です”と表現したい場合はどうすれば良いのでしょうか?”恐縮です”の英語表現をいくつかご紹介します。
感謝を表す”恐縮です”
感謝を表す”恐縮です”を英語で表すのであれば以下の表現を用いるのが良いでしょう。
「Thank you. I am really grateful.」
読み:(センキュー。アイ アム リアリー グレイトフル)
和訳:(ありがとうございます。恐縮です(恐れ入ります))
「It’s so kind of you.」
読み:(イッツ ソー カインド オブ ユー)
和訳:(親切にしていただき恐縮です)
謝罪を表す”恐縮です”
謝罪の気持ちを表すのであれば下記の英語表現がおすすめです。
「I am afraid (I’m afraid)~」
読み:(アイ アム アフレイド)
和訳:(恐れ入りますが)
例文:I am afraid that I cannot attend the meeting.
和訳:恐縮ですが、その会議に出席することはできません。
「I am sorry(I’m sorry)」
読み:(アイ アム ソーリー)
和訳:(申し訳ありませんが)
例文:I’m sorry, I’m busy right now.
和訳:恐縮ですが、今手が離せません
お断りを表す”恐縮です”
相手に対して断りを入れる際は以下の英語表現がおすすめです。
「Would you mind if ~ ?」
読み:(ウッヂュー マインド イフ)
和訳:(恐れ入りますが、〜)
例文:Would you mind if we left early? I’m feeling tired.
和訳:恐れ入りますが、早めに帰宅してもよろしいでしょうか?疲労が溜まっておりまして。
「Would you be so kind as to ~ ?」
読み:(ウッヂュー ビー ソー カインド アズ トゥ)
和訳:(大変恐縮なのですが、〜)
例文:Would you be so kind as to send me your address?
和訳:恐れ入りますが住所情報を送っていただけますか?
まとめ
いかがだったでしょうか?”恐縮です”は感謝するシーン、謝罪するシーン、相手に断りを入れるシーンの3つの場面で使うことができる日本語表現です。基本的に文章(メール
、手紙等)で使うことが多く、口語(話し言葉)で使う際は”恐れ入ります”、”申し訳ございません”という表現を使いましょう。もしも”恐縮です”を強調したい場合は、”甚だ恐縮です”、 ”恐縮の極みです といった表現を使いましょう。ただ”恐縮に存じます”と表現してしまうと二重表現になってしまい受け手が違和感を覚えるので使わないようにしましょう。
英語で”恐縮です”と表現したい場合は使う場面に注意して「I am afraid ~」、「I am really grateful.」、「Would you mind if ~ ?」これらの英語表現を用いるのが良いでしょう。