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「ご一考」の正しい使い方を学ぼう 「ご検討」との違いや類語も解説

具体的にメールやチャットツール、電話などで使用することが多い「ご一考」という言葉。類似した意味を持つ言葉の種類には「ご検討」「ご考慮」などがありますが、どういった違いがあるのかご存じですか?

今回は「ご一考」の意味と使い方、そして類似した意味を持つ「ご検討」や「ご考慮」との違いなどについて解説します。日本語には似た意味を持つ言葉や似ていると勘違いして覚えてしまいやすい言葉が多く存在していますので、記事を通じて正しい使い方を覚えていきましょう。

目次

「ご一考」とは

取引先からのメールやチャットツールなど、あらゆるシーンで見聞きする機会の多い「ご一考」。まずは言葉の意味について理解していきましょう。

「一考」の意味

「ご一考」と書いて「ごいっこう」と読むこの言葉。漢数字の「一」に「考える」と書くため、「一度考えてみてほしい」といった意味を持っています。日常会話など口語で表すと「ちょっと考えてみて」といったニュアンスがあります。接頭語である「ご」を付けているため丁寧な印象を与え「どうか一度考えてみてください」といった意味を表しています。実際、「一考」を辞書で調べて見ると、

一考よく考えてみること。(=[考慮]を要する/[考慮]に値する)
引用:新明解国語辞典

と記載されています。「ご一考」と使うことで、相手に対して少し考えてほしいといった意味で使うことができ、対して「一考しておきます」と相手に使うことで「ちょっと考えさせてもらいます」といった意味で使うことができます。

「一考」は別の意味を持つ場合も

接頭語である「ご」を付けずに「一考」を使うと、「相手に対してちょっと考えさせてくださいといった意味を持つ」と解説しましたが、実は「一考」には、別の意味も持ち合わせています。それが「一考に値する」です。「一考に値する」とは、「より深く考える価値を持っている」という意味で、ビジネスシーンでは採用する可能性が極めて高い企画、または利用するべきである機材などに対して使います。「一考の価値がある」という言葉も「一考に値する」と同義ですからこの機会に覚えておきましょう。

ビジネスでの活用法

ビジネスシーンにおいて、「ご一考」という表現は相手に対して提案や意見などを深く考えてもらうことを依頼する際に使用されます。この表現には、敬意を示しつつも相手に思慮を促すというニュアンスが含まれています。特に新しいアイデアの提案や改善策の提案時に、相手に十分に考えてもらいたい時に「ご一考」を用いることで、より柔らかく、かつ丁寧な印象を相手に与えることができます。

「ご一考」の基本的な使い方と例文

「ちょっと考えさせて?」「少し考えてみてもいいですか?」という意味を持つ「ご一考」。新しい案件が発生する場合や、こちらから依頼する場合に使います。「考えてみてください」「考えておいてください」とお願いするよりも、相手を立てた表現をすることの多いビジネスシーンに合ったお願いができるようになります。

「ご一考いただければ幸いです」や「ご一考ください」といったフレーズは、ビジネス文書やメールでの締めの言葉として頻繁に用いられます。これらの表現は、相手に対する敬意を表しながらも、提案や意見に対する深い思考を促します。例えば、新しいプロジェクトの提案をメールで送る際に、「ご一考いただき、ご意見をお聞かせいただければ幸いです」と結ぶことで、相手の意見や反応を尊重する姿勢を示すことができます。

では、「ご一考」を「ご一考願います」をより丁寧に表現する場合はどのような言い回しをすると良いのでしょうか。

丁寧に表現する場合

:より丁寧に「ご一考願います」を使う場合は、以下の6パターンから使い分けると良いでしょう。使い方だけでなく、どういったシーンで使うべきかを合わせて覚えていきましょう。

ご一考いただきたく存じます

「ご一考いただきたく存じます」という使い方は、相手に強要せず、「できる限り考えてもらいたいのでお願いします」といったニュアンスとして伝えることができます。「いただきたく」の部分は「~してもらう」の謙譲語であり、自分を謙って相手に敬意を表した言葉に変えています。「存じる」は「思う」の謙譲語であり、さらに丁寧語の「ます」を付けることで非常に丁寧な敬語表現となります。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考いただきたく存じます。
②先日お話しした件ですが、ご一考いただきたく存じます。 など

ご一考いただければ幸いです

こちらも強要せずに相手に考えてほしいことを伝えています。謙譲語の「いただく」に仮定の「れば」、「幸い」に丁寧語の「です」を付けているため非常に丁寧であり、控えめな印象を与えています。主に使う状況としては目上の人や上司、立場が上の人や取引先などです。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考いただければ幸いです。
②先日お話しした件ですがご一考いただければ幸いです。 など

また、この状況で使う「幸い」には「考えてくれたら私は幸せです」といった意味を持ちます。そのため「幸い」の部分をほかの言葉に変えて同様の意味を持たせて使用しても問題ありません。「幸い」の類語としては「幸甚に存じます」「ありがたく存じます」「何よりの幸せです」などがあります。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考いただければ幸甚に存じます。
②先日お話しした件ですがご一考いただければありがたく存じます。
③昨日MTGでお話しした新しい企画ですがご一考いただければ何よりの幸せです。 など

ただし、「何よりの幸せです」を使うとやや長ったらしい印象を与え、丁寧過ぎると受け取られる場合もあります。一般的には、「幸甚に存じます」「ありがたく存じます」がマストと言えるでしょう。

ご一考いただければと存じます

「ご一考」の使い方でポピュラーなものとしては「ご一考いただければと存じます」といった表現方法もあります。仮定の「れば」を使うことで「ご一考いただきたく存じます」よりも自分の気持ちを控えめにし、相手の都合に合わせて考えてほしいと伝えられます。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考いただければと存じます。
②先日お話しした件ですがご一考いただければと存じます。 など

ご一考いただきますよう・賜りますよう〜

謙譲語の「いただきますよう」と丁寧語の「ます」+「ように」を使用して、自分の気持ちを優先して相手に伝えています。一方で「ご一考賜りますよう」の場合は、接頭語の「ご」を付けた丁寧な印象を持つ「一考」に「もらう」の謙譲語である「賜る」を付けた言葉。自分を謙り相手に敬意を表した「尊敬表現」となり、非常に丁寧な表現方法になります。どちらも目上の人や顧客、上司や取引先などに対して使用します。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考いただきますようお願い申し上げます。
②先日お話しした件ですがご一考賜りますようお願い申し上げます。 など

ご一考くださいますようお願い申し上げます

これまで紹介した表現方法とは打って変わり、こちらの意思を強く表現しているのが「ご一考下さいますようお願い申し上げます」です。「ください」はしてほしい、してくれといった意味を持っています。そのため、「考えてください」のように「ご一考」を申し出た人の意思が強く表れつつも、「お願いします」を付けることによって下手に出ていることをうまく伝えた表現になっています。「ご一考くださいますようお願い申し上げます」と似たニュアンスを持つ表現方法はほかにも、「ご検討くださいますようお願い申し上げます」があります。主語が変わったとしても、どちらも「考えてほしい!どうかお願いします」といったニュアンスを含んでいます。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考くださいますようお願い申し上げます。
②先日お話しした件ですがご一考くださいますようお願い申し上げます。 など

ご一考のほどお願い申し上げます

「~のほど」を付けることで限定的な言い回しを避けています。これにより「~してもらうよう」などのニュアンスとなり、断定せずにやんわりと伝えられます。

<例文>
①以前送付した企画書ですが再度ご一考のほどお願い申し上げます。
②先日お話しした件ですがご一考のほどお願い申し上げます。 など

ビジネスシーンでは”ご一考いただけますか?”

上述した表現方法と使い方は、主にメールやチャットツールなど、文章で相手に伝える場合に使用します。その理由は、文章のみではこちらの気持ちが伝えきれないため、丁寧な言葉を用いて伝える必要があるのです。では、ビジネスシーンでの会話や電話応対の場合に「ご一考」を使用する場合はどのような表現を用いるのが良いと思いますか?

口頭で「ご一考」を使用する場合は「ご一考いただけますか?」がマストと考えられます。なぜなら、取引先との電話の際「ご一考いただきますようお願い申し上げます」と伝えると、非常に丁寧でありつつも、誰もが違和感を抱くからです。

また、対面であればこちらの表情も見えていますし、電話の場合でも声色でかしこまっている状態が伝わります。ですから、文章と同じようにかしこまる必要はないと考えられます。ビジネスシーン且つ口頭で「ご一考」を使う場合は、

  • ご一考いただけますか?
  • ご一考いただけますでしょうか?

がちょうど良い敬語表現と言えます。

「ご一考」の類語や言い換え表現

「ご一考」について解説しましたが、同じような意味を持つ言葉はないものでしょうか。語彙力が高いほどビジネスシーンでは有力な人材となり、企業において重宝されやすくなります。ここでは「ご一考」の類語を4つ紹介します。

ご考慮

「考慮」を辞書で調べてみると、

考慮
どうしたらいいかについて判断を誤らないように、よく考えること。
引用:新明解国語辞典

と記載されていました。つまり「ご考慮」は「●●についてあらゆる方向から考えてほしい」といった意味があると言えます。「ご考慮いただければ幸いです」の場合だと、「あらゆる方向から考えていただけると私は幸せです」といった意味として伝わります。

ご斟酌

「斟酌」は日常ではあまり見かけない言葉のため、読み方がわからない方も多いでしょう。斟酌について辞書で調べてみると、

斟酌(しんしゃく)
①先方の事情を考慮に入れる。考慮に入れて穏便に取りはからう。
②あれこれの条件・情勢を考える/条件・情勢を考えて適当に処置すること。
引用:新明解国語辞典

と記載されています。ビジネスシーンで「ご斟酌」を見かけたときは「相手の事情を考慮しつつ考えてほしい」といったニュアンスでお願いしていると考えられます。使い方は「ご一考」同様「ご斟酌いただきますようお願い申し上げます」「ご斟酌いただければ幸いです」と使います。

ご配慮

「ご一考」と似たような言葉として「ご配慮」を使うことも可能です。「配慮」には、

配慮
想定されるいろいろな場合に対する対処の方法を考えてなにかをすること。
引用:新明解国語辞典

といった意味を持ちます。「ご一考」は考えてほしいことを伝えるのみに留まりますが、「ご配慮」には「自分の考えよりも他人の気持ちを優先して考えてほしい」といったニュアンスを含めています。つまり、「●●についてはご配慮いただきますようお願いします」は、考えてほしいというよりも、こちらに対して気を遣ってほしい場合などに使います。また、口頭よりもメールやチャットツールなど文章でのやりとりに用いられます。

ご勘案

「かんあん」と読むこの言葉は、

勘案
諸般の事情を十分に考え合わせ、適切な処置をすること。
引用:新明解国語辞典

といった意味を持っています。ビジネスシーンで「ご勘案」を使う場合は、「あらゆる要素を十分に考え合わせて、適切な判断をしてほしい」といった意味で使います。主に市役所や公的な場所で使うことが多くいため、普段は見聞きすることのない言葉ですが、「勘案のうえご連絡させていただきます」と返信があった場合は、「熟考したうえで連絡する」という意味があるので、返信まで時間が掛かることが予想されます。

「ご一考」と「ご検討」の違いを知ろう

「ご一考」と同じくらい使うことの多い「ご検討」という言葉。「ご一考」と「ご検討」はよく似た意味合いを持つ表現ですが、使用するシーンによって意味が異なります。「ご一考」はより広い意味での思考を促す表現であり、一方で「ご検討」は具体的な評価や分析を求める際に用いられます。この微妙な違いを理解することで、より正確に相手に意図を伝えることが可能になります。

そもそも「ご一考」と「ご検討」ではどういった違いがあるのかご存じですか?「検討」とは、

検討
問題となる事柄について、いろいろな面からよく調べ、それでいいかについて考えること。
引用:新明解国語辞典

という意味があり、「しっかりと調べてから答え(判断)を出してください」といった表現として相手に伝わります。つまり、「ご一考」は「考えてほしい」と端的に伝えていますが、「ご検討」は「調査してから」といった違いがあります。「ご一考」の「しっかり考えてほしい」よりも、「調査していろいろな方面から考えたうえで判断してほしい」と大きな違いがあるため、状況をしっかり見据えて使う必要があることを理解しておきましょう。

「ご一考」の英語表現とビジネスシーンでの応用

ビジネスシーンで国際的なコミュニケーションを行う際、「ご一考」の英語表現としては “I would appreciate your consideration” が相応しいです。この表現を用いることで、英語圏のビジネスパートナーに対しても、同様に敬意を表しつつ提案や意見に対する深い思考を促すことができます。

メールでのコミュニケーションでは、このフレーズを用いて文末を締めくくることが一般的です。

ただし、この表現の使用は文脈によっては少し正式すぎるかもしれません。実際には、状況や相手との関係に応じて表現を変えることが重要です。

「ご一考」の英語表現としては、他にもいくつかのバリエーションがあります。

例えば、よりカジュアルなシチュエーションでは、「Please consider this…」や「Could you please think about…?」といった表現が使われることもあります。逆に、より正式な文脈では、「Your consideration would be greatly appreciated」や「I kindly ask for your consideration on this matter」などの表現が適している場合もあります。

メールでのコミュニケーションでは、「I would appreciate your consideration」を文末に使用することは一般的ですが、文の流れや前後の文脈によっては、このフレーズを導入するために追加の説明が必要になることもあります。

例えば、具体的なアクションや検討してほしいポイントを明確に示した後にこのフレーズを使うことで、相手に対してより明確なガイダンスを提供することができます。

このように、英語表現の選択は非常に文脈依存であり、特定のフレーズが常に最適であるとは限りません。したがって、相手との関係やコミュニケーションの目的に応じて柔軟に対応することが、効果的な国際的コミュニケーションの鍵となります。

まとめ

「ご一考」と「ご検討」の違い、そして「ご一考」の使い方と言い換え表現について解説しました。似ていると思い込んでいた「ご一考」と「ご検討」ですが、「調査の有無」といった違いがあることがわかってもらえたのではないでしょうか。この記事を通じて、言葉の正しい意味や語彙力を養い、今後のビジネスシーンに大いに役立てていただければ幸いです。