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「ご手配」の使い方と言葉の意味を理解しよう 「お手配」との違いや類語も解説

「ご手配」と「お手配」、どちらも同じように使っているけれど、本当はどっちが正しいの?と思う方も多いのではないでしょうか。「御」という漢字に「ご」と「お」の読み方があるからこそ、使い方があやふやになってしまう方も少なくないと思います。今回はそんな「ご手配」と「お手配」についての違いと使い方について解説します。この記事を通じ「ご手配」ち「お手配」の正しい意味に理解を深めていきましょう。

目次

「ご手配」とは?

「ご手配」なのか「お手配」なのか、どちらが正しいのかを調べる前に、まずは「手配」の意味について調べてみましょう。「手配」とは、

手配
てはい仕事・行事などの段取りや割り当て、および予測される行動に備えるための準備を抜かりなくすること。[狭義では犯人逮捕のための必要な指令を出すことを指す。]
引用:新明解国語辞典
手配(てくばり)
仕事の点順や分担を決めて(準備の)耐性を整えること。てはい。
引用:新明解国語辞典

このように、「てくばり」と「てはい」の2種類の読み方があることがわかります。「てはい」には、行動に備えるための準備を抜かりなくするだけでなく、犯人逮捕のための必要な指令を出すことを指す、とも書かれており、「指名手配」などにも使用されています。このように「手配」だけ取ってみても複数の意味・読み方があり、意味の根源としてはどれも「準備」にまつわることを示していることがわかります。

「ご手配」と「お手配」 ふたつにはどんな違いがある?

一般的に「ご手配」も「お手配」もどちらも誤った読み方ではなく、しっかりと伝わる言葉。もともと接頭語では和語には「お」を、漢語には「ご」を、和語・漢語どちらでもない言葉には「お」も「ご」も付かないとされています(ちなみに和語は訓読みを、漢語は音読みする熟語のことを指しています)。「手配」については訓読み・音読み両方を掛け合わせた組み合わせでできているため、「お」「ご」どちらを付けても良いとされています。

尊敬語か美化語で「お」or「ご」

ただし、「手配」は尊敬語や謙譲語で使うのか、それとも美化語で使うのかによって「お」と「ご」のどちらを使うかが決まるとされています。尊敬語であれば「ご」を付けて「ご手配」に、美化語として使う場合は「お手配」と使います。では「ご」と「お」ではどういった違いがあるのでしょうか。一般的に尊敬語や謙譲語で使う「ご」には、自分を謙って相手に敬意を表した言葉にする意味を持っています。つまり、「手配」に「ご」を付けることで「相手の状態を高める言葉」であるため目上の人に使用する言葉となります。一方で「お手配」とは美化語の「お」を付けた言葉。美化語とは「お化粧」「お酒」「お料理」など、表現を言葉そのものよりも上品に伝えるための語であり、相手に敬意を表する語ではありません。ですから「お手配」には急ぐ理由がない場合、または相手に柔らかい印象を与えたいとする場合に使います。

ビジネスシーンで使う場合は「ご手配」

ビジネスシーンで「手配」を使う場合は「ご手配」が正しい表現方法です。というのも、先述したように「お手配」では美化語となり「お化粧」「お酒」「お料理」など、「手配」をより上品にした言葉でしかないからです。相手に敬意を表した丁寧語、自分を謙って伝える場合に使う謙譲語として使う機会の多いビジネスシーンでは「ご手配」と使うのが正しい使い方となります。ただし、冒頭でも触れたように「御手配」と表記すると「ごてはい」だけでなく「おてはい」とも読めてしまうため、相手にややこしい印象を与えてしまいます。そうならないよう、ひらがなで「ご」を付けた「ご手配」を活用するようにしましょう。

「ご手配」の類語や言い換え表現

では相手に自分を謙って相手に敬意を表し「準備を抜かりなくしてもらうこと」を示す「ご手配」には、類語などはあるのでしょうか。ここでは7種類の言葉について、その意味とあわせて解説します。類語や意味、使い方を学び、語彙力を高めるきっかけとして役立ててください。

ご用意

「ご手配」の類語として「ご用意」があります。「用意」には、

用意
①何かをする前に、それがスグ始められる(うまくいく)ように必要な物や環境を整えること。[競争(競泳)ですぐにスタートできる態勢を取らせるための号令としても用いられる]
②万一のことを考えて、細かい点まで注意すること。
引用:新明解国語辞典

といった意味があり、接頭語の「ご」を付けることで、目上の人に対してや、顧客など、幅広い対象に対して「前もって必要な物を揃えていただきたい」といった意味を伝えられます。

お膳立て

「お膳立て」といった言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。ビジネスシーンだけでなく、幅広い状況で使うこの言葉ですが、

お膳立て(おぜんだて)
食膳を取り揃えること。[すぐに取りかかれるように準備する意や、準備そのものにも用いられる]
引用:新明解国語辞典

といった意味を持っていて、接頭語の「お」を付けることで「すぐに取りかかれるよう準備してください」といった意味として使うことができます。目上の人や顧客、上司などにも使うことが可能なので、「ご手配」とセットで覚えておくと良いでしょう。

ご準備

「ご手配」の類語として「ご準備」を使うのも問題ありません。「準備」とは、

準備
いざという時に備えて(起こりうる条件を予想して)同じ状況で軽く試みたり必要な物を揃えておいたりすること。
引用:新明解国語辞典

といった意味を持ち、「いざというとき」を想定してあらかじめ準備したり、軽く状況を試みたりすることを指しています。接頭語の「ご」を付けることで「あらかじめ準備しておいてください」と伝えることができるため、目上の人や顧客など、あらゆるビジネスシーンで活用できます。

ご配慮

「ご配慮」といった言葉を目にしたことがある方も多いでしょう。「配慮」には、

配慮
想定されるいろいろな場合に対する対処の方法を考えて何かをすること。[狭義では、相手への心配りを指す。]
引用:新明解国語辞典

といった意味があり、「ご手配」と同じ意味として使うことが可能です。こちらも接頭語の「ご」を付けていることにより、あらゆるビジネスシーンで使うことが可能です。

態勢

「手配」と似た言葉として「態勢」もあります。「態勢」の意味には、

態勢
事に臨むに当たって必要な準備を整えたり、いつでも対応できるような心構えを持ったりした状態。
引用:新明解国語辞典

があり、想定される事態への対処に当たる構えのことを指しています。接頭語などは特に付いていないため、使い方には注意が必要です。「態勢」を目上の人などに使う場合は「~~であるため態勢を整えていただけますでしょうか?」など、文末で丁寧語である「ます」「です」などを付けるよう留意しましょう。

発注

「発注」には、

発注
注文を出すこと。
引用:新明解国語辞典

といった意味があり、ビジネスシーンでの使い方は「態勢」同様文末に丁寧語を付ける必要があります。「発注」を上司などに使用する場合は「~~の発注をお願いできますでしょうか?」などと使うようにしましょう。

手はず

ビジネスシーンではあまり見かけることのない言葉ですが「手はず」には、

手はず(手筈)
物事を行うのに、前もってする必要な準備。
引用:新明解国語辞典

といった意味があります。ビジネスシーンで使う場合には「~~の手はずが整いました」などとして使うことができます。

「ご手配」の基本的な使い方

「ご手配」と「お手配」の意味や使い方がわかったところで、次は実際の使い方について学んでいきましょう。ビジネスシーンでは「ご手配」と記載することが正しい使い方と説明しましたが、具体的にどのような状況で使えるのか、その表記ひとつでどういったニュアンスとして伝わるのかについて解説します。

ご手配いたします

「ご手配」に「する」の謙譲語である「いたす」に丁寧語の「ます」を付けた「いたします」を付けることで、自分を謙って相手に敬意を表して「自分が手配させていただく」といった意味として使うことができます。例えば資料などが必要なプレゼンなどに対して「私が責任を持ってご手配いたします」と使うことで、より丁寧に手配することを伝えられるようになります。

ご手配ください

相手が手配する場合は「ご手配」に「ください」を付けて「ご手配ください」と使います。「ください」は「くれる」の命令形「くれ」の丁寧語、または「くれる」の丁寧語である「くださる」の命令形です。命令形の「ください」が付いたことにより、やや強制的なニュアンスを感じますが、接頭語の「ご」を付けることで丁寧語となっているため、目上の人や顧客に対しても使うことが可能です。

ご手配いただけますでしょうか

相手に対して「手配してほしい」と申し出る場合には「ご手配いただけますでしょうか」と使いましょう。「ください」がやや強制的なニュアンスを含んでいることに対し、「いただけますでしょうか」と伝えることで控えめな姿勢で手配を頼んでいることがうかがえます。「恐れ入りますが私は当日休暇をもらっているため、プレゼンの企画資料はご自身でご手配いただけますでしょうか?」と表現することで、非常に丁寧な印象を与えながら手配を依頼できます。

「ご手配いただけますと幸いです」は控えめな依頼例

なにかを依頼したりお願いしたりする場合に「~~ますと幸いです」と終えることがあります。「~~について折り返しご連絡いただけますと幸いです」などと使いますが、「ご手配」についても「ご手配いただけますと幸いです」と使うことができます。「あなたに手配してもらえると嬉しいです」といった意味となるため、「実行してくれたことで私は嬉しい」と自分の感情まで伝えられるようになります。

「ご手配いただけませんでしょうか?」は二重敬語

「ご手配」についてより丁寧な言葉で伝えようとするあまり、同種の敬語を重ねてしまい「二重敬語」となる可能性があります。例として挙げると「ご手配いただけませんでしょうか」は二重敬語となります。なぜ二重敬語になるのかについて、具体的に敬語の種類について見ていきましょう。

5種類 3種類
尊敬語「いらっしゃる・おっしゃる」型 尊敬語
謙譲語Ⅰ「伺う・申し上げる」型 謙譲語
謙譲語Ⅱ(丁寧語)「参る・申す」型 謙譲語
丁寧語「です・ます」型 丁寧語
美化語「お酒・お料理」型 丁寧語
尊敬語(「いらっしゃる・おっしゃる」型)相手側または第三者の行為・ものごと・状態などについてその人物を立てて述べるもの
謙譲語Ⅰ(「伺う・申し上げる」型)自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの
謙譲語Ⅱ(丁寧語)(「参る・申す」型)自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの
丁寧語(「です・ます」型)話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの
美化語(「お酒・お料理」型)ものごとを、美化して述べるもの
引用:文化庁【敬語の指針】より

このように、敬語には5種類あり、同じ種類の敬語を1つの文章に重ねて使うことで「二重敬語」となります。

尊敬語+丁寧語=正しい敬語表現
尊敬語+丁寧語+丁寧語=丁寧語が二度使用されているため二重敬語


例文として使用した「ご手配いただけませんでしょうか?」を分解すると、「ます」の丁寧語である「ません」と「です」の丁寧語である「でしょうか」が組み合わさっていることが表で確認できます。これにより丁寧語が重複しているため二重敬語となるのです。

まとめ

「ご手配」と「お手配」の違いについて理解できたのではないでしょうか。「御」を付けること、そして「手配」は音読み、訓読みどちらもできることから、どちらも同じ意味として使えると思っていたかもしれません。しかし、「お手配」は言葉をより上品に伝えるための「美化語」であり、ビジネスシーンでは「ご手配」を使うべき言葉であることがこの記事によって明白になったかと思います。あらゆる類語とともに語彙力を高め、あらゆるシーンで活躍できる社会人を目指してくださいね。