うつ病による休職や退職を経験した方にとって、新たな就職・転職活動は勇気と不安のいるものです。「また働くことはできるのかな」「こんな自分を採用してくれる会社はあるのかな」と悩まれる方は多いでしょう。
うつ病による休職や退職が、転職活動において不利にはたらくケースもないとはいえませんが、企業は就職差別につながるような対応はできません。
そのため「絶対に不利」ではないのです。
そこで、本記事ではうつ病を経験した方に向けて、転職活動の方法をご紹介していきます。
目次
うつ病からの転職は実際に不利?
結論、転職活動を行い、面接を受けられるコンディションなのであれば、転職に不利ではありません。逆に、「転職活動は難しい」という心身の状態であれば、まだ治療が必要な時期といっていいでしょう。
近年はうつ病への認知がかなり広がっており、うつ病での休職・退職をされた方を採用する企業や支援制度も増えてきています。
冒頭でお伝えした通り、うつ病を原因に採用を見送るという判断を企業はしていけないですし、うつ病は必ずしも業務ができなくなる病気ではありません。
採用面接時に面接官がこの質問をすることはできませんし、病名を聞かなくても通院や服薬について聞けば、現在かかっている病気や既往歴が推測できてしまうため、聞いてはいけないことになっています。
そのため、うつ病は転職に絶対に不利ではありません。
うつ病からの転職が不利といわれる理由
それではうつ病からの転職がなぜ不利といわれるか、の理由についてですが、企業側の立場で考えてみればわかりやすいです。
採用面接時に「前職を退職された理由は?」と聞かれて「うつ病になり就業が困難になったため」と回答されたら、不安を抱かない人はいませんよね。
「またうつ病を再発して退職するかもしれない」、「自社での業務が本人の心身に負担がかかるかもしれない」と考えてしまうのは自然なことです。
昔よりはうつ病についての理解が世の中に浸透してきたとはいえ、それでも仕事の現場でうつ病になった人は腫れ物扱いされやすいのが現実です。
そして、実際に体調を崩して休みがちになるというケースは多発しています。
何度も仕事を休まれると周囲の人たちにその分の負担がいきますし、責任のある仕事を任せることは難しいため、企業としてはうつ病になった人の採用はなるべく避けたいと考えています。
この現実がうつ病からの転職が不利といわれる大きな理由です。
うつ病を抱えた状態での転職活動は「休職中」「退職後」の2パターン
うつ病からの転職活動を開始するには、「休職中」と「退職後」の2パターンがあります。
どちらがよい悪いは一概にはいえず、個人の状況によります。
ここでは、それぞれどのような特徴があるのかをご説明していきます。
休職中
休職中に転職活動を行うこと自体は可能ですが、うつ病の治療中は主治医からの許可が必要になります。許可があれば仕事はお休み中なので、治療と転職活動の両方に時間を費やすことができます。企業によりますが、休職中でも給料が発生する場合は経済的負担が少ないというメリットがあります。
退職後
企業を退職してから転職活動をする際には、保険や年金の切替が必要になったり、雇用保険の失業手当が受け取れるようになったります。
一方で、健康保険組合からの傷病手当金が受け取れなくなるため、得られるお金と得られないお金について注意が必要です。
うつ病を抱えている方の転職活動のポイント
うつ病を抱えた方がひとりで転職活動に取り組むと、悪い方向に思考が向きやすく、採用だけでなく、心身の悪化にも影響が及ぶこともあります。
転職活動は先が見えないうえに、自分の時間を使って求人検索したり、書類を作成したりします。健康な人でもストレスがかかることをするので、うつ病の方は言うまでもありません。再発の危険性もあります。
ここでは、うつ病の方が転職活動時に気を付けるべきポイントをご紹介していきます。
ひとりで抱え込まない
うつ病の方はうつ病ではない方よりも、気力体力ともに消耗しやすいです。
先にお伝えした通り、うつ病の方がひとりで転職活動を進めると、求人探しや採用結果によっては自己肯定感が奪われ、不安や焦燥感などに苛まれる危険性もあります。
家族や友人、担当医などに状況を打ち明けることで、心が整理されたり軽くなったりすることがあるので、どうかひとりで抱え込まないようにしてくださいね。
社会復帰を目標にする
うつ病の方の転職活動は、やりたい仕事を探したり、入りたい企業への採用を目指す前に、「社会復帰をすること」を最初の目標にすることを推奨します。
うつ病前の職種や自分の得意分野を活かした仕事を探したい、という方は多いのですが、うつ病になる前となった後の自身の心身は違うものと解釈していた方が良いです。
人によっては、うつ病によって集中力や作業スピードが低下していたり、職場の人間関係への適応力にも変化があります。
そのため、まずは自分に合った職場を探し、社会復帰を目標にすることがおすすめです。
専門支援を受ける
うつ病の方は自分の休職や無職の状態に後ろめたさを感じ、「早く社会復帰しなければ」と焦る方が少なくありません。
その焦燥感は自分を追い込み、うつ病を悪化させてしまう危険性があります。
とはいえ、経済的な事情から「焦らざるを得ない」という方もいるでしょう。
そのような方は、うつ病の方向けに経済的な支援を受けられる制度がありますので、活用することをおすすめします。うつ病の方が利用できる経済的支援には以下のようなものがあります。
- 傷病手当金
- 自立支援医療制度
- 障害年金
- 失業手当(雇用保険給付)
- 労災保険(労働が原因の疾病の場合)
- 生活困窮者自立支援制度
- 生活保護
うつ病の症状が重くなくても、治療や定期的なカウンセリングを受診するには、治療費がかかります。そのため、経済的な支援は生活や治療などの諸々の支払いに役立ちますし、精神的にも経済的な不安の軽減にもつながります。
国は複数の支援制度を設けていますので、上手に活用しましょうね。
転職活動のタイミングは医師に相談
転職活動の開始については、医師に相談して開始することをおすすめします。
病気の治療に専念することは言うまでもないのですが、「復職か転職か」、「転職する場合はどのような会社がよいのか」などは、うつ病が回復してから考えた方がよいです。
なぜなら、うつ病は環境の変化に影響を受け、症状が悪化する可能性の高い病気だからです。休職や退職後すぐに動きだすのではなく、まずは療養に専念してから、医師にアドバイスを求めて転職や復職にむけた活動を開始するようにしましょう。
うつ病からの転職は非正規雇用からめざすのもおすすめ
前職で正社員で働いていた場合、「正規雇用での転職」を目指している方は多いでしょう。その場合でも、うつ病から転職活動を始めた方は、非正規雇用から始めてみるのがよいです。理由をご紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
採用のハードルが低い
非正規雇用は、企業での正規雇用の採用よりもハードルが下がるという特徴があります。
なかなか仕事が決まらない辛さを軽減できると同時に、職場が合わなかったときも辞めやすいというのは、非正規雇用のメリットです。
「日中に働く」ということへの慣らしとして、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
労働時間が調整しやすい
アルバイトや派遣社員といった非正規雇用者は、正社員と比べると働く時間や休日などを自分の都合に合わせやすいというメリットがあります。また、会社での労働から離れて体力や集中力が落ちている場合も働きやすいでしょう。
複数の仕事を経験できる
非正規雇用では様々な業種や業務を実際に経験しながら、「今の自分に合っている仕事」を見つけることが可能になります。
合わなければ辞めればいいというわけではありませんが、前述したとおり、辞めることへのハードルの低さを有効活用しましょう。
正社員登用の可能性もある
非正規雇用からの正社員登用制度があれば、チャレンジしてみることができます。
もちろん、あなたの心身の状態が安定しており、職場の雰囲気や業務が合っていればという条件付きではありますが、社会復帰の次のステップをめざすことが可能になります。
次の目標があれば、気持ちも前向きに業務に取り組むことができるでしょう。
転職活動時のうつ病の伝え方
うつ病を応募書類に記載したり、面接でその事実を伝える必要があるかどうかは、とても悩む点ですよね。
結論、体調不良が原因で業務に支障が出る、通院でお休みを頻繁に取得する場合には、事前に伝えておくことが必要です。
理由は、もし採用されても会社から期待される業務が遂行できなかった場合に、試用期間で解雇されるケースもあるためです。
自身の体調面への不安を隠して入社しても、周囲からの配慮が得られず、結果辛い状況に陥ってしまう危険性もあるため、応募書類や面接の段階で正直に話すことは大切です。
そもそも、体調が回復してから転職活動を始めるのがベストです。
問題なく業務が遂行できるという状態で転職活動を行う場合は、過去の病歴を伝える必要はありません。
そのためにも、問題なく業務ができる状態かどうかの判断は、医師に助言や判断をあおぐのが良いです。
うつ病の方が転職活動をはじめるときのポイント
最後に、うつ病の方が転職活動をする際の大切なポイントをまとめました。
繰り返しお伝えしますが、うつ病の方はひとりで悩まず、医師の意見を聞き、支援制度を活用しながら動き出すのが大切です。
環境の変化だけでなく、採用通知や求人検索、経済的な不安で再発したり、病状を悪化させる可能性があるためです。
ご紹介する内容をしっかりおさえてくださいね。
医療機関で治療を受ける
「うつ」は気分の状態をさし、「うつ病」は病気の名称です。
似て非なるもので、うつは心配や不安ごと、挫折などによって気分が落ち込んでいる状態で、健康な人でも起こりうる状態です。
うつ病はそのような気分がさらに深刻化し、病気として慢性化している状態です。
気分が一時的に落ち込んでいるという状態であれば、休息を取ったりリフレッシュしたりすることで良くなりますが、病気は治療が必要です。
「うつ」と「うつ病」の症状はとても似ているので、自分で判断せず医療機関で診察をうけてください。
うつ病と診断されたのであれば、しっかり治療を受けてください。
転職活動や社会復帰は、病気を治し、健康になってからです。
働き方を慎重に考える
うつ病になって休職・退職を経験し、働いていないことへの焦りから、いきなり転職活動を行うのはおすすめしません。
まずは、働き方や応募する企業を慎重に考え、選んでから行動にうつしてください。
非正規雇用から始めることのメリットは前述しましたが、社会全体として労働者のメンタルヘルスへの取り組みが重視されるようになっています。
そのため、メンタルヘルス研修や産業医面談の充実といった、うつ病や障害のある方へのサポートが充実した企業が増えてきています。
経営陣や人事担当者がメンタルヘルスに理解のある企業であれば、うつ病経験者であってもきちんとケアをしてもらえるため、職場定着や業務遂行がスムーズにいくでしょう。
転職先を探す際には、企業にメンタルヘルス対策への取り組みが記載されているかを確認し、自分が働きやすい職場のイメージがつくか、慎重に考えましょう。
ただ、うつ病への理解があり働きやすい職場を見つけるのは簡単なことではないので、支援事業者や転職エージェントを頼るのも、転職を成功に導く有効的な手段です。
まとめ|うつ病だからといって転職をあきらめる必要はありません
いかがでしたでしょうか。
今回の記事では、うつ病が転職に不利になるのか、転職活動はどのように行えばいいのかを解説してきました。
大前提、うつ病の方はまずは治療に専念し、心身共に回復してから行動を起こすようにしてください。その上で、転職活動を開始する際には、担当医や支援事業所などを頼り、段階的に社会復帰をめざすことがおすすめです。
うつ病でも転職活動をあきらめる必要はありません。
あなたが働きやすい環境を見つけることができるよう、祈っています。
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