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派遣は健康保険に加入できるの?社会保険加入の条件をご紹介

一般社団法人日本人材派遣協会の報告によると、2020年1~3月平均の派遣社員数は約143万人。雇用者全体(5,661万人、役員除く)に占める派遣社員の割合は2.5%となり、この割合は15年ほど大きな変化は見られず2~3%を推移しているそうです。

これだけの方が派遣社員という働き方を選ぶ実態を受けて、これから自分も派遣社員として働こうと検討している方もいらっしゃるでしょう。

その中で、社会保険の加入について気になる人も多いのではないでしょうか。

たとえば、健康保険は企業に勤める正社員だけのものと思い込んでいる方もいらっしゃるでしょうが、それは間違いです。

結論からいうと派遣社員も健康保険に加入することはできます。

ただし、一定の条件を満たしていなければならないなどの制限が発生します。

派遣社員は正社員と違って雇用契約の内容が大きく異なるため、その契約内容によっては健康保険に加入できる人とできない方がいるのです。

そこで今回の記事では、健康保険を含めた派遣が入れる社会保険の種類や、加入するための条件などを解説していきます。

目次

派遣が入れる社会保険

派遣の求人情報で「各種社会保険完備」という言葉を目にしたことがあるでしょう。派遣社員として働く場合、派遣会社に雇用され派遣先で働くことになりますので、勤務先ではなく派遣会社で社会保険が完備されているかを確認する必要があります。

社会保険には次の5種類があります。

  • 健康保険
  • 厚生年金・国民年金
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

まずはそれぞれの定義についてみていきましょう。

健康保険

病気やケガをしてして医療機関で治療を受けた際に、治療費の自己負担額が3割で済んだり(自己負担額は年齢等によって異なります)、長期の入院などをして治療費が高額になってしまったときに、健康保険に加入していることで自己負担額を安く抑えることができるようになります。

日本では、国民皆保険制度という助け合いの仕組みが制定されているため、日本の国民はすべて公的医療保険に加入していなければなりません。

公的医療保険の代表的なものは、自営業の人やフリーランスの人などが加入する「国民健康保険」と、民間企業に勤めている人が加入する「健康保険」の2種類です。

前述したとおり、派遣社員でも一定の条件をクリアしていれば健康保険に加入できます。

もし、加入条件を満たしていない場合は、国民健康保険もしくは日雇特例健康保険に加入しなければなりません。

健康保険への加入資格※全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合

1.雇用契約期間が2カ月と1日以上及び労働時間が週30時間以上あること

週30時間以上、2カ月を超えて働く契約であれば、契約初日から社会保険に加入しなければなりません。はじめは2カ月未満の契約で、更新して2カ月以上継続して働くことになった場合は、更新の時点から加入できます。なおこのルールはどの会社でも適用されます。

2.雇用契約期間が1年以上かつ労働時間が週20時間以上かつ賃金が月額8万8,000円以上あること

週2日勤務や1日5時間勤務などのフルタイムではない場合、従業員規模が501人以上の事業所である派遣会社は週20時間以上勤務、かつ契約期間1年以上が見込まれ、月額賃金にして8万8,000円以上の場合でも社会保険に加入することができます。

厚生年金・国民年金

年金保険にはさまざまな種類があります。

・65歳から支給される老齢年金

・病気やケガなどで障害を抱えてしまったときの生活を支える障害年金

・本人が死亡した際に扶養されていた遺族を支える遺族年金

これら退職後や老後の生活を支えるのが年金保険です。

日本国内に住民票がある20歳から60歳までのすべての方は「国民年金」に加入しますが、社会保険の適用事業所から給与を得て働いている方は「厚生年金」に加入することになります。

国民年金の場合、支払う保険料は16,610円(令和3年度)です。

収入がいくらであろうと保険料は変わりません。

厚生年金の年金額は、「加入期間のみ」で決まる国民年金に比べて計算式が複雑です。

厚生年金を計算する際には「加入期間」に加えて「加入期間中の給与の平均」を加味しなければなりません。

計算式は「平均給与×一定乗率×加入期間」となります。

このように厚生年金の方が保険料は高くなりますが、労働者と事業主で折半になり、将来受け取る年金については、国民年金だけの加入よりも多くなります。

介護保険

介護保険とは要介護・要支援認定を受けた高齢者が、必要な介護サービスを受けられるようにするための制度。40歳から64歳までの方は、介護保険料が健康保険料と一体で徴収されます。

なお、被保険者は「第1号被保険者(65歳以上)」「第2号被保険者(40歳以上65歳未満で医療保険に加入)」に分類され、保険料の算定方法が異なります。

介護保険の保険料※全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合

標準報酬月額を5万8,000円~139万円以上の50段階に分けて設定した「報酬月額」の約2%(介護保険料率)を、労働者と事業主で折半した金額。

雇用保険

雇用保険とは労働者が失業した場合などに、生活や再就職の援助などをおこなうことを目的とした制度です。

雇用保険というと、企業に勤める正社員の特権のようなイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、パートやアルバイト、派遣社員でも一定の基準をクリアすれば加入しなければなりません。

派遣社員で働く場合は、次の基準を満たせば雇用保険に加入できます。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上雇用が継続される見込みがある場合

たとえば、週5日働いている方は4時間以上働き、また1ヶ月以上の契約期間があれば、原則的には雇用保険に加入できるということになります。

この条件はアルバイトやパートでも適用されており、また、65歳以上の方は新規で加入することはできません。

労災保険

労災保険とは、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して、必要な保険給付を行い、あわせて社会復帰の支援や促進等を行う制度です。

その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。

労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。

つまり、労働保険の適用事業所に雇用される労働者は、当然労災保険に加入することになります。

その手続きは派遣元が行います、保険料は会社の全額負担です。

1日だけの雇用であっても、適用されます。

引用:厚生労働省|労災補償に関する主な制度

派遣も社会保険の加入手続きは自分でするの?

社会保険の加入条件を満たした場合、手続きは自分でするのか、派遣会社がしてくれるのか気になりますよね。

ここでは派遣会社への入社後と退職後のケースで解説していきます。

入社後

社会保険の加入手続きは、派遣先の勤務先ではなく派遣元の事業所が行ってくれます。

そのため、自分では特に手続きをする必要はありません。

事前に必要な書類などの準備をしておきましょう。

社会保険の加入に必要な書類
雇用保険被保険者証年金手帳

社会保険にいつから加入するのかも派遣会社に確認しておくとよいでしょう。

ただし、それまで国民健康保険に加入していた場合は自分で脱退の手続きを行う必要があります。

国民健康保険をやめる手続きを忘れてしまうと、保険料を二重に支払うことになります。

なお、国民健康保険をやめるには、次のものを持参して市区町村の窓口で対応することができます。

  • 社会保険等の新保険証(やめる人全員分※写し可)
  • 国民健康保険証(やめる人全員分)
  • 手続きに来る人の本人確認ができるもの
  • 脱退する人及び世帯主のマイナンバーがわかるもの

退職後

退職後は自分で国民健康保険へ切り替える必要があります。

派遣会社へ健康保険証を返し、各市町村役場の窓口で所定の手続きをしてください。

なお、派遣社員として2ヶ月以上勤務していた方であれば、任意継続という形で社会保険に加入し続けることも可能です。

この場合、支払う保険料は全額自己負担となるため、在職中に支払っていた金額の約2倍になるので注意が必要です。

また、任意継続に切り替えるためには、退職した翌日から20日以内に手続きをしなければならないので、どちらを選ぶかを早めに決めておきましょう。

あわせて読みたい|健康保険と国民健康保険の違いについて

国民健康保険も健康保険も同じ健康保険制度ですが、個人事業主やアルバイトなどで職場の健康保険に加入していない方などは国民健康保険に加入します。

会社員・公務員、条件を満たした派遣社員は健康保険に加入します。

この国民健康保険と健康保険について、保険料の徴収方法以外にはどのような違いがあるのかみていきましょう。

保険者

保険者とは健康保険事業の運営主体のことです。

保険料の徴収をしたり、保険金を支払ったりする役目を担っており、国民健康保険では市区町村が保険者になります。

それに対し、健康保険は勤務先が所属する健康保険団体が保険者です。

健康保険証の「保険者名」に記載されているところが保険者で、自分がどこに加入しているか知りたい場合は健康保険証を確認しましょう。

保険料の計算と支払い

国民健康保険の場合は国民健康保険料は、前年の所得をもとに各自治体が計算を行うことで金額が決まります。

6月から翌年3月ごろにかけて、年9〜10回に分けて納付するケースが多く、各自治体から届く納付書を使って支払ったり、口座振替や年金からの天引き(特別徴収)も可能です。

健康保険の場合、健康保険料は給与額をもとに勤務先が計算します。

健康保険の保険料は、毎月の給料から天引きされる「社会保険料」の中に含まれています。

労使折半といい、労働者と企業(派遣会社)で半分ずつ分けて支払う制度のため、半分は勤務先が負担してくれています。

出産手当金

出産手当金は、出産前42日と出産後56日の間、出産のため仕事を休み、給与の支払いがない場合に支給される手当金のことです。

こちらは健康保険独自の制度で、国民健康保険にはありません。

傷病手当金

傷病手当金は、体調不良等で4日以上仕事に就けず、給与が支払われない場合に支給される手当金です。

出産手当金と同じように健康保険独自の制度のため、国民健康保険にはありません。

世帯人数に応じた保険料

国民健康保険は、世帯人数に応じて保険料を計算しますので、家族が増えれば保険料も増えます。健康保険の場合は家族が増えても保険料は変わりません。

参考:国民健康保険と健康保険の共通点と違いは?

補足|健康保険と国民健康保険の共通点

一般的に健康保険のほうが手厚い保障になっていますが、国民健康保険でも共通した手当がでるものもあります。

治療費

病気やケガをして医療機関で治療を受けた際、年齢に応じて治療費の負担が一部分だけになります。

  • 小学校就学前は2割負担
  • 7歳~69歳は3割負担
  • 70歳~74歳は所得に応じて2割もしくは3割負担
  • 75歳以上は所得に応じて1割もしくは3割負担

高額療養費

長期の入院などで医療費が高額になってしまったときに、一定の自己負担限度額を超えた部分については払戻しを受けることができます。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、被保険者本人及び、その被扶養者が出産をしたときににもらえる手当です。子ども1人につき42万円が支給されますが、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産した場合は40.4万円になるので、事前に確認しておくとよいでしょう。

まとめ

今回の記事では、派遣社員として働く方に向けて、健康保険の加入条件や手続き方法、国民健康保険との違いなどを解説してきました。

派遣社員であっても一定の条件を満たすことで健康保険には加入することができ、またその手続きも派遣会社が行ってくれます。

国民健康保険は保険料を全額自己負担しなければならないのに対し、健康保険は保険料を勤務先の会社と半分ずつ支払う仕組みです。

一般的に健康保険は保障内容が手厚い分、国民健康保険よりも保険料が高くなってしまいますが、自分と会社とで保険料負担を分け合う労使折半の方法をとっています。

そのため、派遣社員であっても、安い保険料で手厚い保障を受けられるのが健康保険であると覚えておきましょう。