派遣社員は会社に籍を置く正社員ではないことから、将来年金がもらえるのかどうか気になっている方は少なくないでしょう。
結論、年金とは働き方に関わらず誰でも加入しなければならないものです。
そこで今回の記事では、派遣社員でも年金がもらえるのかという不安を解消するために、年金を受け取るための条件、いくらもらえるのか、などを解説していきます。年金に加入しておくべきメリットも説明するので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
派遣社員にも厚生年金に加入する義務がある
正社員ではなくとも派遣社員は加入義務を満たした場合は、厚生年金に加入する必要があります。
そのクリアすべき条件とは「正社員の勤務時間・労働日数に対し、4分の3以上勤務」「週20時間以上勤務し、月の所定内賃金が88,000円以上」などがあります。
派遣社員の方にとって、週に20時間以上勤務し、正社員の勤務時間の4分の3以上働いているとその仕事で生計を立てている方は多いでしょう。
ですから、派遣業務のスタート時は前述した条件を満たしていなくとも、途中で厚生年金の加入条件を満たした場合には速やかに加入を行う必要があります。
派遣会社と派遣社員の両方が厚生年金の加入条件を認識し、労働状況を把握しておく必要があるでしょう。
派遣社員は扶養内で働くべき?
年金制度そのものへの不安や家庭の貯蓄事情に余裕がある場合は「厚生年金に入らず自身で貯金したい」「厚生年金に入りたくない」という方もいらっしゃるでしょう。
このような場合は扶養内で働くべきです。
社会保険の扶養は、本人の年収が130万円を超えると適用外となり、年収130万円は月額10万8334円に相当します。
そのため、年収130万円を超えた場合は派遣先の労働条件との兼ね合いを見ながら、可能であれば厚生年金の適用を受けることが老後の生活の安定につながるのでおすすめです。
家計に余裕がある場合は、扶養の範囲内で働くことが節税になるでしょう。
そのため、仕事を探す段階で「扶養の範囲内で働くか」「扶養から外れても構わないので、自分に合った状況・環境で働きたいか」はしっかり考えることをおすすめします。
補足扶養から外れる月収を得たとしても厚生年金には入りたくない場合は、「派遣」ではなく「業務委託」で働くことを検討してください。業務委託であれば会社との間に「雇用関係」は生じないため、厚生年金に入る必要もありませんよ。 |
派遣社員の年金
国が運営する年金には、厚生年金・国民年金・共済年金の3種類があります。
20歳以上60歳未満の人は全て国民年金に加入し、これが基礎年金といわれるものです。
これに合わせて会社員は厚生年金に、公務員は共済年金に加入します。
厚生年金に加入している方は国民年金にも加入しており、国民年金は掛け金が一定ですが、厚生年金は給与に応じて掛け金が変わります。
一方、派遣社員も雇用期間が2ヶ月以上かつ、勤務日数と勤務時間が派遣先の社員の4分の3以上であれば厚生年金に加入できます。
この場合は派遣先ではなく、派遣会社の年金に加入することになるので、派遣会社に確認しておきましょう。
補足|年金給付の種類 老齢厚生年金65歳以上の方に支給される年金。原則として国民年金と合わせ25年以上の加入期間が合った場合に支給されます。一生涯支給されますが、物価の変動などにより年金額も変わります。繰り上げ請求と繰り下げ請求の2つがあり、減額・増額として支給されますが、条件を満たせば60歳から受け取ることも可能です。 障害年金加入中に病気やケガなどで障害状態になった場合に支給される年金です。厚生年金の加入者には障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされて支給されます。 遺族年金加入者が死亡した際に、遺族に支給される年金です。「加入者の子」もしくは「子のある配偶者」に支給されます。ただし子供の年齢は18歳未満、受け取る人の年収が850万円未満と定められています。 引用:ITエンジニアの人材派遣株式会社クリエイト・マンパワーサービス|年金給付の種類 |
派遣の厚生年金に加入する条件
それでは、派遣スタッフが厚生年金に加入する条件をみていきましょう。
派遣社員は厚生年金の受給対象ではありますが、一定の条件を満たさなければ加入することができません。
加入できなかった方は、将来受給額が減額されるなど満足のいく年金がもらえない可能性があります。逆に、条件を満たしている方は法律で厚生年金への加入が義務づけられているので注意が必要です。
派遣社員が厚生年金に加入できる条件は
「雇用期間が原則2カ月以上で、所定の労働時間と労働日数が派遣会社の正社員の4分の3以上」であること |
です。
たとえば、1週間の労働時間で計算すると、およそ30時間以上で加入条件に該当することになります。仮に雇用期間が2カ月以内の場合は、所定の契約期間を過ぎた後、継続して雇用されたときから加入することができます。
つまり、初回の契約時に年金の加入の条件をクリアしていなくても、契約更新時にこれらの条件を満たすことになれば、その時点から加入しなければならなくなるのです。
また、社会保険の加入者が501人以上の会社に派遣されている場合は、所定労働時間が1週間あたりに20時間以上で、賃金が1カ月で8万8000円以上なら厚生年金に加入しなければなりません。
派遣スタッフは派遣先や雇用形態がそれぞれ異なるので、派遣会社にこれらの条件をしっかり確認しておきましょう。
派遣の厚生年金のメリット
厚生年金は、企業年金の一種であることから、一部を代行部分として運用し、その運用益によるプラスアルファ部分を公的年金に上乗せ支給する形になっています。
企業にとっては費用の負担が大きくなるものの、企業や事業所、従業員双方にメリットがある仕組みとなっています。
派遣会社、派遣スタッフも例外ではありません。
ここでは双方のメリットを3つの立場でまとめてみました。
1.企業にとってのメリット
運用益を上乗せ給付するため、退職金の資金として活用できるだけでなく、経費として認められるため税制面での実質負担が軽くなるメリットがあります。
また、厚生年金は社会保険でもあり、従業員が得られる福利厚生です。
きちんと加入させることで社会的信頼や従業員満足度の向上につながるでしょう。
2.従業員(派遣スタッフ)にとってのメリット
厚生年金の保険料は労使折半のため、全額自己負担である国民年金保険よりも金銭的負担を軽減することが大きなメリットです。
ただし、老齢基礎年金の支給要件を満たしていなくても、加入期間が1カ月以上あれば、「厚生年金の受給開始年齢から加入従業員として掛金を納めた期間に相当する年金」が支給されます。
3.パートやアルバイトにとってのメリット
アルバイトやパートであっても、一定条件を満たすと厚生年金の加入義務が発生します。
そのため、厚生年金に加入できれば、一般的な会社員同様にさまざまな恩恵にあずかることができます。
具体的には、ケガや傷病などが原因で働けなくなったときや、女性の場合だと出産育児の休業中の手当などが、国民健康保険や国民年金よりも手厚い保障を受けられます。
派遣の厚生年金はいくらもらえる?
年金は退職後の生活を支える貴重な財源。
そのため、年金がいくらもらえるのか気になるところですよね。
そこで、生涯賃金に対する年金の受給見込額をみていきたいと思います。
そもそも年金が受給できる年齢は生年月日や加入期間によって違いはあるものの、基本的には65歳からとなっています。
65歳以降にもらえる受給額は
老齢基礎年金として受け取れる「国民年金」
老齢厚生年金として受け取れる「厚生年金」
これらを足した合計額です。
受給額=国民年金+厚生年金 |
老齢基礎年金の額は、保険料を払い込んだ月数から算出され、保険料を1年納付するごとに受給できる年金額が毎年約1万9500円増額していきます。
たとえば、40年間ずっと保険料を納付した場合、受給見込額は年間で約78万円となります。
一方、老齢厚生年金では、厚生年金の加入期間が1年延びた場合、受給できる年金の増額は毎年1万~5万円です。仮に30年間働いた方であれば、得られる受給額は年間で30万〜150万円になります。
増額に大きな幅があるのは、厚生年金に加入した期間やその期間の賃金の影響です。
ただし、年金の受給開始時期は受給者の希望によって、遅らせることも早めることも可能です。
近年は退職後も第二の人生として働く方が増えてきています。
そのため、65歳以降も働いた場合、給料をを得ながら保険料を支払うことになりますが、年金の受給時期が延びることによって受給総額が増えるというメリットがあるのです。
派遣の厚生年金の切り替え手続きについて
派遣先との契約が終了した場合の手続きは、派遣会社によって異なります。
ただし、原則として契約が終了する日までに次の仕事が決まらなかった場合には、契約終了日で健康保険と厚生年金保険はなくなるので注意が必要です。
そのため、次の仕事を1ヶ月以内に開始し、かつ「週30時間以上」「1ヶ月以上」の契約であれば、引き続き健康保険と厚生年金保険には加入できます。
喪失した場合は社会保険の切り替え手続きが必要なので、忘れないように行いましょう。
補足|任意継続も可能 派遣会社を退職したら、必ずしも社会保険を切り替える必要はなく、任意で継続することもできます。ただし全額を自己負担することになり、今まで天引きされていた「2倍の金額を支払う」ことになるので、支出額に注意が必要です。その他にも、社会保険を任意継続する場合は次のような注意点があります。 退職日から20日以内に手続きを行う「任意継続日保険者資格取得申請書」に必要事項を記載して郵送する任意継続できる期間は「2年」理由がない限り「脱退」できない再就職が決まったら任意継続の喪失手続きを行う 引用:NS.JAPAN|派遣会社を退職しても社会保険を「任意継続」する |
社会保険や厚生年金を払いたくない場合は?
経済的な理由から社会保険や厚生年金に加入したくないという方もいらっしゃるでしょう。
たとえば、今まで配偶者や家族の被扶養者であれば、健康保険や年金保険の保険料を払っていなかったため、保険料の分だけ手取りの金額は減ってしまいます。
また、国民健康保険や国民年金に加入していた場合は、社会保険に切り替えた際に保険料が高くなる可能性があります。
手取りが減ってしまうと生活への影響もあるでしょうから、今まで通り、国民健康保険や国民年金のままで良いと考えるのも自然なことです。
とはいえ、本記事でお伝えした通り扶養内のままでいるためには、労働時間や収入金額の上限を意識しながら働かなければなりません。
また、国民健康保険や国民年金よりも、会社の社会保険に加入したほうが手厚い補償が受けられ、将来受け取れる年金額も増えてきます。
社会保険に入らないことによるメリットは「今、社会保険料を払わないで済む」ことだけです。
デメリットは次の通り複数あるため、どうしても社会保険や厚生年金を払いたくないという方は冷静に見極める必要があります。
社会保険に加入しない場合のデメリット手厚い補償が受けられない年金給付額が大きい厚生年金に入れない労働時間や収入金額の上限内で働く必要がある 出典:はたらくヨロコビ|社会保険に加入したくないという人の理由 |
健康保険や年金保険に加入する必要がない条件 雇用期間が2カ月未満1週間の労働時間が30時間未満か、1カ月の労働日数が15日未満1週間の労働時間が20時間未満1カ月の賃金が8万8000円未満 |
雇用保険に加入する必要がない場合 雇用期間が31日未満1週間の労働時間が20時間未満 |
まとめ
厚生年金は企業に勤める正社員だけが加入できる特権と思われがちですが、一定の条件を満たしていれば派遣社員でも加入が義務付けられています。
そのため、条件を満たした時点で保険料を支払う必要があるので注意が必要。
手取りの収入金額は減ってしまいますが、将来的には手厚い補償を受けることができ、将来受け取れる時期を調整することで、年金の給付額を増やすこともできます。
民間の医療保険などでもケガや病気などのリスクに備えることはできますが、勤務先や派遣会社を通じて加入する場合、事業主も保険料を負担するため、本人の負担が少なくなるというメリットがあります。
このように派遣社員でも社会保険に加入することができるので、安心して仕事探しをスタートさせてくださいね。