エクセルでは関数などでさまざまな種類の記号を使います。記号の持つ意味を理解しておかなければ、エクセルを使いこなすには苦労してしまいます。
そこで今回の記事では、エクセルの代表的な記号である「$」の意味についてご紹介します。
これからエクセルをマスターしようとしている方も、改めて意味を理解したい方も、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
エクセルの「$」の意味
エクセルに出てくる「$」は「参照するセルの固定」という意味です。
エクセルの便利な機能の1つに「オートフィル」機能があります。
「オートフィル機能」とは、数値を含むセルの中身を連続入力することができる機能のことです。 アクティブセルの右下の黒い小さい四角形の部分(フィルハンドル)にマウスポインタを乗せると黒い十字の形になり、この形でドラッグすると規則性のあるデータを連続して入力することができます。
オートフィル機能では、ドラッグするデータが数値を含んだ文字列・日付・時間・曜日・四半期・旧暦・干支などの場合は、連続データが入力されます。
しかしドラッグするデータが数値・数式・関数・漢数字・数値を含まない文字列などの場合は、ドラッグした範囲に同じデータがコピーされます。
セルを参照した数式をオートフィルでコピーすると、コピー先に応じて参照するセルが自動的に移動するので、数式を変更する必要がありません。
一方、数式内に常に同じセル番地を設定したいときは、コピーした数式をすべて変更する必要が出てきます。
この問題を解決してくれるのが「$」記号です。
冒頭でお伝えした通り、「$」は「固定」を意味する記号。
数式をコピーしても参照するセルを移動させないようにしたいときは、参照先のセル番地に「$」を組み合わせることで、参照先が移動しないように固定することができます。
オートフィル機能を使う場合は「$」をうまく活用し、参照するセルの移動をコントロールすることで、後から数式を修正する必要がなくなります。
相対参照とは?
セルの参照とは数式内で使用する数値として、指定したセル番地に入力されている数値を利用する方法です。
相対参照とはコピー先のセルに応じて行番号と列番号が自動的に移動する、エクセルで最もよく使われる参照の状態です。
相対参照するセルは、セルを「A1」のように入力するだけで$マークは使用しません。
なお、相対参照では、数式が入力されているセル番地を基準として、参照先のセルの位置を相対的な位置関係で指定しています。
この相対参照の性質によって、オートフィル機能を使ったときにコピーした数式の参照先が自動的に移動しているのです。
絶対参照とは?
絶対参照は冒頭で説明したように参照先を固定することができます。
セルに「=A1*B1」といった数式を入力して絶対参照にする場合は、「$A$1*B1」のように行番号と列番号のどちらにも$を入力します。
これでA1セルから動かないように固定させることができます。
複合参照とは?
複合参照とは、行か列のどちらかのみを固定することができます。
たとえば、「=A1*B1」といった数式を入力して複合参照にし、行のみを固定するには「=A$1*B1」と行番号に$を入力することで、行のみを固定することができます。
逆に列のみを固定したい場合は、「=$A1*B1」と列番号の前に$を入力しましょう。
$(ドルマーク)によるセル位置の指定方法
絶対参照と複合参照の意味がおわかり頂けたところで、$マークの位置について説明していきます。
たとえば「A1」セルですが、Aが列番号で1が行番号を指していますよね。
$マークの有り無しの入力方法は次の4パターンです。
セルの位置指定 | 意味 |
A1 | 列・行ともに相対参照 |
$A1 | 列は絶対参照、行は相対参照 |
A$1 | 列は相対参照、行は絶対参照 |
$A$1 | 列・行ともに絶対参照 |
$マークが付いていても付いていなくても、これらはどれもA1セルを参照しており、取得する値も同じです。
ここでいう$マークありなしによる違いは、上記の関数が入ったセルをコピペして別のセルに貼り付けした際に、位置を固定して貼り付けするかどうか、という点です。
<相対参照セルの貼り付け時> 相対参照で記載されたセルを別のセルにコピーした時に、コピー先の数式の行または列の位置が変わる(位置を固定しない) <絶対参照セルの貼り付け時> 絶対参照で記載されたセルを 別のセルにコピーした時に、コピー先の数式で行または列の位置が変わらない(位置を固定する) |
実践|相対参照と絶対参照の使い方
より理解を深めるために、ここからは実践を通して$マークの位置固定についてみていきましょう。
C4セルでは売上金額を算出したいため、「=B1*B4」という関数式を入力します。
こうすることでC4セルには10,000が表示されます。
C4セルをコピーしてC5からC11セルに貼り付けると次の図のようになります。
金額表示がおかしくなったのがわかりますよね。
C5セルにカーソルを合わせると、関数式が「=B2*B5」となり、単価のセルの参照位置がずれてしまいました。そのため正しい金額が表示されない結果となっているのです。
本来やりたいことはC5セルの関数式は「=B1*B5」と入力することで、20,000と表示されること。このように、C4セルの関数式をコピーしてC5~C11セルに貼り付けても想定通りの数式コピーとはならないため、1つ1つのセルの数式を手入力する必要が出てきてしまいます。
ただし
C5セルには「=B1*B5」、C6セルには「=B1*B6」、C7セルには「=B1*B7」・・・
と手入力するのは現実的ではありませんよね。
そこで活躍するのが、ドルマーク「$」を使った位置の固定化です。
$マークを使った絶対参照セルの位置固定とコピペの仕方をみていきましょう。
C4セルに「=B$1*B4」という関数式を入力してみます。
C4セルをコピーしてC5~C11セルに貼り付けをすると、次の図のようにC5列以降には「数量×単価」で金額が表示されるようになりました。
C4セルの関数式をコピーしてC5~C11セルに貼り付けるという操作は同じなのですが、C4セルの関数式が
=B1*B4
=B$1*B4
のように$マークが付いているかどうかによって結果が変わりました。
つまり、$マークを入れてセル位置を指定することで、そのセルをコピペしても位置が固定されるために結果に違いが出たのです。
C4セルが「=B$1*B4」となっている場合、$1の部分はセルをコピペしても変わりません。
C4セルをC5セルにコピペした場合、C5セルは「=B$1*B5」
C4セルをC6セルにコピペした場合、C6セルは「=B$1*B6」
・・・・・となってすべての数式が貼り付けされます。
今回の例では行番号のほうに$をつけて「B$1」としていますが、「$B$1」としても同じ結果になるので試してみてください。
$をショートカットキーで入力する方法
数式内でセルを指定するとき、$マークを付けなければいけないセルがクリックで選択できないのは非効率です。
ぜひショートカットキーを使いこなしましょう。
まずはセルをクリックして指定し、ショートカットキー「F4」を押すと、絶対参照、複合参照が簡単に設定できます。
1.ショートカットキーを1回押す:絶対参照
セルをクリックして、そのままショートカットキー「F4」を1回押す。
2.ショートカットキーを2回押す:複合参照(行を固定)
セルをクリックして、そのままショートカットキー「F4」を2回押す。
3.ショートカットキーを3回押す:複合参照(列を固定)
セルをクリックして、そのままショートカットキー「F4」を3回押す。
4.ショートカットキーを4回押す:相対参照
これらの参照方法は、エクセル操作を抜群に速くするので、しっかり覚えておきましょう。
$マーク以外に覚えておきたい記号の意味
エクセルでは$マーク以外にもさまざまな種類の記号を使います。
ここでは$マーク以外にもよく目にするエクセルの記号について紹介していきます。
エクセルの*(アスタリスク)の意味
エクセルの数式で使用する*(アスタリスク)とは
- 掛け算としての意味
- 任意の文字列(0個または1個以上の文字)
を表します。
掛け算の式は「9×5」のように「×」を使って表しますが、パソコンでは「×」の代わりに「アスタリスク(*)」を使います。
エクセルでは「=」を入力してから数式を入力すると計算が行われます。
「アスタリスク(*)」を使った掛け算の構文は、「9×5」の計算をエクセル上で行いたい場合「=9*5」となります。
また、任意の文字列としてのアスタリスク(*)は、ワイルドカードの中で最もお世話になる機能です。
検索または置換する文字列の前か後ろにアスタリスク(*)を入れるだけで活用可能で、アスタリスクを置く場所によって4種類の抽出が可能になります。
トマト*⇒「トマト」から始まる文字列のみ (例:トマトスープ、トマトスパ など) *トマト⇒「トマト」で終わる文字列のみ (例:チーズトマト、燻製トマト など) *トマト*⇒「トマト」を中間に含む文字列のみ(例:特製トマトラーメン、冷製トマトイタリア風 など) ス*ィ⇒「ス」で始まり「ィ」で終わる文字列のみ(例:スパゲッティ、シナモンチャイティ など) |
エクセルの,(カンマ)の意味
エクセルのカンマは関数の引数や数字の区切りに使用します。
たとえば
A1セルが空白のときはB1セルを空白
A1セルが空白でなければA1セルの値をB1セルに表示
としたい場合はB1セルに「=IF(A1=””,””,A1)」という数式を入力します。
この数式のカッコの中の「A1=””,””,A1」の「,」は複数の引数を指定する関数で引数の区切りを意味しています。
なお、ここで使用したIF関数では引数を3つ指定します。
- 1つ目の引数が論理式
- 2つ目の引数が真の場合
- 3つ目の引数が偽の場合
「=IF(A1=””,””,A1)」
という数式の
1つ目のカンマの前の「A=””」が1つ目の引数「論理式」
2つ目のカンマの前の「””」が2つ目の引数「真の場合」
2つ目のカンマの後の「A1」が3つ目の引数「偽の場合」
となります。
上の図からわかるとおり[関数の引数]ダイアログの
- 1つ目のボックスが1つ目のカンマの前
- 2つ目のボックスが2つ目のカンマの前
- 3つ目のボックスが2つ目のカンマの後
になっていますよね。
あわせて読みたい|セルをコピーするのか切り取るのかどちらがいい?
今回の例ではコピペした際に想定した結果が出てこなかったので$マークを使うことで解決できましたが、コピペしてうまくいくこともあれば、切り取りでうまくいくこともあります。
これらの知識をきちんと理解しておくと、エクセル操作が抜群に早くなります。
ここでは数式セルに対する「コピー」と「切り取り」の違いにもふれておくので、あわせておさえておきましょう。
セルのコピーと切り取りの違い
コピー
セルをコピーして別のセルに貼り付けると、コピー元の情報がコピー先に反映。
ただし、数式についてはセルの指定方法($マークをつけることによる相対参照・絶対参照)によって変わる。
コピー元のセルの情報は消えずにそのまま残る
貼り付け
セルを切り取りして別のセルに貼り付けると、コピー元の情報が全てそのままの形でコピー先に反映。
コピー元のセルの情報は切り取っているため消える。
上記の説明の中にある「セルの情報」というのは主に次の5つです。
- 数式:「=A1*100」など、「=」で計算式で設定しているもの
- 値:セルに設定している文字
- 書式:文字の色、太さ、フォント、背景色、枠線など
- コメント:セルに設定しているコメント
- 入力規則:セルに設定している入力規則
まとめ
今回の記事ではエクセル初心者の方に向けて、$マークの使い方を解説してきました。
エクセルの使い始めといえば、セルに文字を入力したり、列の幅を変更したりしたり、足し算や引き算などの簡単な計算から慣れようとする方が多いと思います。
セルの使い方は非常に幅広く、使いこなしている方はそう多くはありません。
本記事で扱った$マークも、ショートカットキーで操作するかしないかでは、操作スピードが格段に違います。
セルの使い方は初心者の方でも比較的簡単に習得できる内容なので、ぜひ参考にして身につけていってくださいね。