「せっかく公務員になったけれど辞めたい」「新卒で公務員になったけど、別の仕事をしてみたい」など、公務員を辞めようか悩んでいないでしょうか?
国家公務員や地方公務員などの公務員は、一度採用されればリストラされる心配もなく、定年まで安定して働き続けることができます。しかし、それでも様々な理由で辞めたいと考えている方も多数います。
しかし「公務員を辞めるなんてもったいない」と感じている人が多いのも事実です。
今回は、公務員を辞めたいと悩んでいる方に向けて、辞めるメリットやデメリット、民間企業へ転職する場合の注意点など紹介するので、悩んでいる方は参考にしてくださいね。
目次
公務員を辞めたいと感じる理由とは?
総務省が発表している「平成30年度地方公務員の退職状況等調査」によると、なんと公務員を自ら退職した割合は、33.7%という結果が出ています。
およそ3分の1の人々が退職していることを考えると、「せっかく公務員になったのに辞めていいのかな…公務員を辞めるなんて甘えなのかな? 」と悩む必要はないのかもしれません。公務員を辞めたいと考えてしまう理由は、人によって実に様々です。
ここでは、よくあげられる理由をいくつか紹介します。
(引用:総務省「平成30年度地方公務員の退職状況等調査」)
激務になりがち
公務員は時間できっちり帰社できるイメージですが、それは職場によります。国家公務員として官公庁に勤めている人は、何日も家に帰れず徹夜続きという方も多く存在します。
また、教員のように残業代が発生しない仕事や、消防士や警察官のように緊急事態には休日だとしても仕事を優先する必要がある仕事もあります。そのため、公務員は労働時間で計算すると実は給料が安くなりがちなのです。
やりがいが感じられない
公務員の仕事は、安定欲しさに公務員になりたいという目的で選ぶ方が多いでしょう。そのため、いざ採用された後はその仕事に興味が持てなかったり、単調な仕事内容にやりがいが感じられないことがあります。「公務員の仕事がつまらない」と思う方も多いです。
また、公務員は非営利の仕事です。民間企業のように売り上げをアップさせるといった明確な目標がないため、頑張ったからといってインセンティブがもらえることはありません。
そのため、仕事へのモチベーションが上がらないという問題も発生します。
人間関係がうまくいかない
公務員を辞めたいという理由の中には、人間関係が辛いという理由もあげられます。民間企業であれば、どうしても上司とそりが合わない場合は、相談することで移動させてもらえることがあります。
しかし、公務員の場合このように柔軟な対応をしてもらえないことが多いでしょう。また、公務員の思考が合わないという場合には、公務員という集団の中にいること自体が辛くなってしまうこともあります。
クレーム処理が多い
公務員の仕事は、理不尽なことが多いのも特徴です。とくに、区役所や市役所などの窓口業務では、理不尽なクレームをつけてくる人や話の長い年配なども多いため、辛くて辞めたいと感じることが多くなります。
営利目的の民間企業であれば営業妨害として処理できることも、公務員は拒否できないため、延々と対応せざるを得なくストレスを抱えることとなるでしょう。
想定より給料が低い
給料が高いイメージのある公務員ですが、実はそれほど高いわけではありません。公務員の給料は「社員数50人以上の民間企業の平均」をもとに決められているからです。
特に20代のうちは、年功序列制度や財政状況のために、民間企業より給料が低いことも。
総務省のデータによると、2019年における地方公務員の初任給は、平均15~22万円です。一方、厚生労働省によれば、民間企業に勤める人の初任給は、平均で16~24万円となっています。
毎年昇給があるとはいえ、はじめのうちは思っていたより給料が低いと感じるかもしれません。
(引用:総務省「平成31年地方公務員給与実態調査結果等の概要」)
(引用:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」)
やり方や体制に納得できない
給与体系や部署異動など、公務員ならではの体制に納得できない方もいるようです。
公務員の給与体系は年功序列のことが多く、勤続年数に合わせて給与が上がります。仕事のできる人もできない人も給与は同じです。どんなに成果を上げても、給与に大きく反映はされません。
2~5年ごとにある部署異動に疑問を感じる方もいます。不正防止のためとはいえ、仕事に慣れた頃に次の部署へ異動させられるのは、たしかに非効率かもしれません。
また、民間企業と違って競争がない分、職場改善の機会が少ないと言えます。時代に合わないやり方や、独自のルールが存在する部署も中にはあるでしょう。
職場環境が合わない
職場環境が合わないことも、公務員を辞める理由としては大きいでしょう。
先ほど述べたとおり、公務員の職場環境は改善されにくい傾向にあります。古い体質がそのまま残っていたり、年功序列の風潮が強かったりと、特に若い人にとっては働きにくい環境です。
配属される部署によっては、教育に積極的ではないところもあります。業務の流れを教えてもらえなかったり、質問に快く答えてくれなかったりするケースもあるようです。
職場の人の年齢層によっても、働きやすさは変わります。部署内に同期がいれば、休憩時間に話したり、わからないことを相談したりできるでしょう。しかし、公務員は一般的に同期が少ないと言います。部署内の人と話が合わず、孤立してしまう可能性があるのです。
また、地方公務員安全衛生推進協会が行った調査によれば、精神を病んで休職している公務員は、2004年から増え続けています。2019年に至っては、病気を理由に休職する人のうち、60.7%が精神的な疾患に苦しむ人たちです。
心を病んでしまう公務員の多さが、データから読み取れます。その原因としてはやはり、職場環境が大きいでしょう。
(引用:一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要」)
公務員を辞めるメリット
それでは、公務員を辞めるメリットを紹介します。
労働基準法が適用される
国家公務員は、原則として労働基準法が適用されません。また、地方公務員も一部をのぞき、ほとんどは労働基準法が適用されません。
そのため、公立の教員は給料の数%分を上乗せする「給特法」という法律が定められている代わりに、休日の部活指導を行っても持ち帰り仕事がいくら発生してもその分の残業代をもらうことができないのです。
民間企業へ転職すれば、労働基準法が適用されるため、公務員をやっている時とは異なる大きなメリットが受けられるかもしれません。
キャリアの可能性が広がる
民間企業へ転職すれば、キャリアの可能性が広がります。会社や職種を好きに変えることができ、自分で独立・起業することもできます。
自在に働き方やキャリアを作っていくことができ、人生に自由度が増します。
副業が可能になる
公務員は基本的に副業が禁止されています。そのため、足りない分を副業で補ったり、年収を増やすということに限界があります。
しかし、民間企業であれば副業OKの会社が多く、給料以外に収入ポケットを作ることや、副業からスタートして収入になればそのまま独立することも可能です。
公務員を辞めて民間企業へ転職するメリットは、労働基準法に守られること。そして、副業することが可能になり、収入ポケットを増やして年収アップさせたり独立するなどキャリアの可能性が無限大になる。
公務員を辞めるデメリット
公務員を辞めて民間企業に転職すると様々なメリットがあります。しかし、その反面公務員にしか得られないこともあるのが事実。
ここでは、公務員を辞めるデメリットを紹介します。
安定さを捨てることになる
公務員として働く一番のメリットとなるのが「安定」です。業績によって会社が倒産する可能性のある民間企業とは違い、定年までリストラされることなく安定して働き続けることができます。
それでも公務員を辞めるということは、その安定さを捨てるということになるでしょう。
勉強時間が無駄になる
公務員になるために、一体どれだけの時間勉強してきたのでしょうか。公務員を辞めれば、そこに費やしてきた時間が無駄になってしまいます。
ここまで応援してきた家族からの反対や、結婚している方だとパートナーやその家族から反対される可能性もあるでしょう。
社会的信用が低くなる可能性
公務員は給料が保証されています。そのため、住宅ローンや車のローンなど、お金を借りる際に民間企業の社員よりも多く借りることができます。
民間企業でも名の知れた大企業や、高収入を得ていれば別ですが、そうでない場合、公務員の時より社会的信用度は下がってしまう可能性があるでしょう。
公務員を辞めるということは、それまでの勉強時間を無駄にすることになり、安定や社会的信用を手放す可能性もある。
転職前にできる2つの改善方法と考えるべき4つのこと
ここからは転職する前にできることと、考えるべきことについて紹介していきます。
公務員の仕事には、民間企業にないメリットがたくさんあります。勢いだけで辞めると、後悔するかもしれません。転職する前に一度、「現状で改善できることはないか」を考えるべきです。
現状を改善する方法として、次の2つがあげられます。
- 周囲の人に相談する
- 自分自身で変えられることはないか検討する
仲の良い同僚、信頼できる上司など、職場の人に一度は相談してみましょう。
人間関係で困っているなら味方になってくれる可能性があります。業務内容に不満なら、異動を申し出るのも一つの手です。
職場の人に打ち明けづらいときは、家族や友人に相談すると良いでしょう。一人で悩まず、身近な人に頼ってみてはどうでしょうか。
他の人の手を借りずに、自力で現状を改善することも可能です。
無駄な作業がないか見直したり、新しい方法を上司へ提案したりすれば、勤務時間が短縮できるかもしれません。仕事がつまらない人は、仕事の際に小さな目標を設定すると、やりがいを感じられるでしょう。
それでも公務員を辞めたい気持ちが変わらなければ、次の4つについて考えてください。
- 公務員でいることに不満なのか、職場に不満なのか
- 辞めたあとしばらくの生活費はあるか
- 新しい仕事は見つかりそうか
- 転職先に求めるものは何か
辞めたい理由によっては、公務員を辞めない方が良いこともあります。
たとえば理由が、人間関係や激務の場合です。公務員を辞めなくても、次の異動まで耐えるか、異動希望を出せば解決します。精神的につらいなら、休職しても良いのです。
反対に、やりたいことが決まっている、公務員特有の体制が合わないといった理由なら、公務員を辞めた方が良いでしょう。
退職後の生活について考えることも必要です。仕事を辞めれば、当然収入はゼロになります。
転職活動に集中するためにも、しばらく生活できるだけの費用を貯めておきましょう。少なくとも、3ヶ月分は用意しておくのが無難です。
仕事が見つかる可能性がどれくらいあるのかも、しっかり把握しましょう。
公務員は、民間企業で求められるスキルが身についていないと思われがちです。特別な資格やスキルを持っていないと、転職活動は厳しいものになるかもしれません。
転職エージェントの利用も考えてみてください。
転職先に何を求めるかを考えることも大切です。いくら収入が欲しいのか、どんな生活がしたいのかを具体的にイメージしてみると、はっきりしてくるでしょう。
以上が転職する前にできる2つのこと、考えるべき4つのポイントになります。
今すぐ辞めたい気持ちもわかりますが、まずは2つの改善方法を試してみましょう。それでも辞めたい意思が揺らがなければ、4つのポイントについて考えてみてくださいね。
公務員を辞めてもいい6つの理由
「公務員を辞めたいけれど、なかなか勇気が出ない……」という方もいますよね。
そんな方のために、ここでは公務員を辞めていい理由を6つあげます。
- 労働基準法が一部適用されない
- 給料がそれほど良くない
- やりたい仕事ができない
- スキルが身につかない
- 独特なルールや慣習がある
- 心を病んでしまう人が多い
それぞれ解説していきますね。
公務員を辞めていい1つ目の理由は、公務員には労働基準法が一部適用されないことです。
たとえば、労働基準法のうち、残業に関する法律は適用されません。
そのため長時間労働や休日出勤を強いられても、応じなければならないのです。有事の際も、仕事の優先が求められます。
2つ目の理由は、給料があまり良くないことです。
「公務員を辞めたいと感じる理由とは?」で説明したとおり、20代30代のうちは、民間企業と大きく変わりません。さらに公務員は、副業が禁止されているため、収入をアップさせることは難しいと言えます。
3つ目の理由は、やりたい仕事ができないことです。
希望の部署に配属されても、2~5年後には異動があります。一度経験した部署には、二度と配属されないかもしれません。そうなったら、やりたくない業務を定年退職まで続けることになります。
ほかにやりたい仕事があるなら、すぐに辞めてしまってかまわないでしょう。公務員の職に就いたままでは、自分のやりたいことを絶対にできないからです。
4つ目の理由には、スキルが身につかないことがあげられます。
公務員の仕事の多くは、単調な事務作業です。続けていても、転職活動でアピールできるようなスキルは身につきません。
数年おきの部署異動も、専門性が身につかない原因です。公務員で居続けるなら支障はありませんが、転職を考えるときはネックになるでしょう。
5つ目の理由は、独特なルールや慣習があることです。
公務員の仕事は、公的なサービスの提供であるため、失敗が許されません。失敗のリスクを抑えるために、自然と仕事のやり方は前年踏襲になります。
独特なルールや慣習が残りやすいのは、このためです。しかし時代に合わないルールや慣習は、長時間労働の一因にもなります。
6つ目の理由としては、心を病んでしまう人の多さがあげられます。
先ほど、精神的な疾患で休職する人は、年々増えていると説明しました。クレーム対応や時間外労働、人間関係など、原因はいろいろあるでしょう。
退職を決めるときは、慎重さも大切ですが、我慢し続けるのはよくありません。冒頭で示したように、約3分の1の公務員が、自ら辞めています。決してめずらしいことではないのです。
公務員を円満退職する方法
続いては公務員が円満退職する方法について説明します。
円満退職の方法は次の2ステップです。
- 直属の上司に「辞めたい」と伝える
- 退職願を出す
まずは直属の上司に辞める意向を伝えましょう。伝えるときは、個室など、周囲に人がいないところに呼び出します。
年度末である3月31日付けで辞めるなら、伝えるタイミングは半年前の9~10月がベストです。
年度末の退職なら、新年度に人員補充されるため、職場にも迷惑がかかりません。
引き継ぎ作業があるため、すぐに辞めたい場合でも、辞める1ヶ月半前には上司に伝えましょう。
無事に退職が認められたら、退職願を出しましょう。
退職願を出したあとは、職場への告知や引き継ぎ作業、有給休暇の消化、退職届を含む退職関係書類の提出を、適宜行っていきます。
しかし、スムーズに退職できるとは限りませんよね。上司に引き止められたり、家族から反対されたりするかもしれません。どちらの場合も、あきらめずに説得することが大事です。
上司に引き止められた場合は、辞める理由とともに、辞める意思を伝え続けましょう。どうしても辞められそうにないなら、退職代行を使うのも手です。
一方、家族に反対されたときは、転職先の将来性や給料などを論理的に説明しましょう。トラブルを避けるためにも、早めに相談しておくことをおすすめします。
年代によって民間企業への転職のしやすさが異なる
公務員を辞めて民間企業へ転職したいと考える方が多数いる中で、やはり年代によって転職のしやすさや起こりうるデメリットも存在します。
20代の転職はポテンシャル重視のため、民間企業の未経験の職種でもチャレンジしやすくなります。
公務員試験の勉強時間や費用は無駄になってしまいますが、広い選択肢の中から選ぶことが可能になるため、やり直すなら少しでも早い方が良いです。
30代では、公務員としてある程度のキャリアも築き、20代よりも退職に対して慎重になるのではないでしょうか。
30代での民間企業への転職は厳しい反面、まだ十分に可能な範囲です。企業によっては「公務員試験を突破した」という点で評価されることもあるでしょう。
40代になると、民間企業への転職はとても厳しいものがあります。40代となると民間企業では管理職クラスの経験が求められます。
公務員として管理職を経験していたとしても、利益を生み出さない公務員の管理職と民間の管理職は違うため、経験としてみてもらえないことが多いでしょう。
公務員から転職をしたいと考えている方は、少しでもやり直しのきく若い年齢で決断するのが重要です。
公務員が転職活動する時の注意点
それでは、公務員が民間企業へ転職活動する時に、大切なポイントを紹介します。
志望動機を作り込む
公務員を辞めて民間企業へ転職する際は、志望動機を作り込みましょう。企業の採用担当者は、「なぜ公務員を辞めて自社に転職したいのか」という疑問をいただいています。
そのため、志望理由に明確な理由や強い意思がないと、ビジョンが描けておらず甘くみていると感じられてしまいます。
しっかりとぶれない自分の軸を持ち、明確な志望動機を作ることが大切です。
勉強内容や経験を伝える
大学で勉強してきた内容や、公務員として勤務していた際の経験など、何か次の仕事に活かせる点を探し出しましょう。
学生時代に行ってきたアルバイトで得た経験でも良いです。応募先企業が欲している人材ニーズを読み取り、自分とマッチする点を見つけ出し、上手にアピールすることが大切です。
公務員から民間企業への転職は可能!
公務員を辞めたい理由、辞めるメリットやデメリット、民間企業へ転職する場合の注意点など紹介してきました。
公務員から民間企業への転職は十分に可能です。ただし、年齢は少しでも若い方が有利なのも事実。
まだ悩んでいる方も、安定した公務員を捨ててでも自分のやりたいことにチャレンジしたいという方も、まずは転職エージェントへの相談がおすすめです。
初めての転職は何からしたら良いのか、企業の選び方や書類の作成方法などわからないことだらけなのではないでしょうか?
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