就職活動を行っていると、「理系は就職に有利で文系は不利」と聞いて不安になった方がいるのではないでしょうか?
文系の就職は理系に比べて難易度が高いといわれていますが、実際にはそこまで大差はありません。
今回は、文系の就職と理系の就職の違い、文系の就職先の業界や職種、選考でアピールすることなど紹介します。
目次
文系の就職は難しい?不利になる?理系との違いとは
一般的に、文系は理系に比べて就職が厳しいといわれています。リクルートキャリアの就活みらい研究所「就職プロセス調査 (2021年卒)2020年8月1日時点 内定状況」のデータによると、文系の就職内定率が76.9%、理系の就職内定率は90.8%という結果が出ています。
このことから、「理系の方が就職に有利なのでは?」と感じられるのではないでしょう。しかし、これには、理系は内定が出る時期が早いというカラクリがあります。
実際には、内定をもらうスピードが異なるため、文系と理系での就職率にそこまでの差はないといわれています。
また、文系は幅広く多数の企業を受けることが多く、理系は専門職のため数を絞って受ける傾向があるため、一概に文系と理系でどちらが就職に有利とはいえないでしょう。ただし、大学院卒となると話は別です。
理系の大学院卒者は、研究者やエンジニアとしてすぐに即戦力として活躍しやすいため、採用率が高くなる傾向があります。
その一方で、文系の大学院卒者は大学院で学んだことを活かせることが少なく、企業も初任給を高く支払う必要が出てくるため、採用ニーズにマッチしにくくなります。
文系の就職先の業界とは?
文系の学生が、主に就職先として選ぶ人気の業界を紹介します。
金融
金融の中には、「銀行」「証券会社」「保険会社」「中小企業関係金融機関」「農業関係金融機関」「ノンバンク」「リース業」「政府系金融機関」などがあります。金融というのは、お金を融資したりお金に関わる商品を販売する産業です。
金融というと、とても安定しているイメージがあるのではないでしょうか。実際に、金融は個人や法人問わず無くてはならない存在のため、最も安定している職業といわれています。
また、年収水準も高いことから、文系就活生にとても人気の業界です。
メーカー
メーカーと呼ばれる業界の中には「自動車メーカー」「食品メーカー」「化粧品メーカー」「製薬メーカー」などがあります。工場で材料の加工から始まり、組み立て・商品を作っている業界です。
戦後物資の少なかった日本は加工技術を向上させることで、自動車や家電製品などを製造してきました。そんな世界的ブランドに携わりたいという文系就活生に人気の業界です。
小売
小売業界は、商品や物品を販売する産業で、「飲食料」「衣服」「医薬品」「化粧品」「自動車」「書籍「百貨店」「スーパー」など様々な種類があります。
小売業は日常的に利用するとても身近な存在であるため、ほとんどの方がイメージしやすい仕事でしょう。
小売業はBtoCのため、消費者が喜んだり自分の仕事が役に立っていることを実感しやすく、人気の業界となっています。
サービス
サービス業には、「人材」「教育」「介護」「警備」「インターネット」「広告」「旅行代理店」「レジャー施設運営」「ホテル運営」と様々な種類があります。
小売業と同じく日常的にサービスを受けていることもあり、身近に感じられる業種です。おもてなしをすることで、人の喜びを感じたり仕事を通じて社会貢献性を実感しやすいため、人気の業界です。
マスコミ
マスコミ業界の中には「アナウンサー」「新聞記者」「テレビ局」「制作会社」「出版社」などがあります。マスコミ業界は、企画力や表現力など自分のセンスを発揮できることや、社会的な影響力が大きいことなどが大きな魅力でしょう。
また、とても華やかな世界に感じられるため、文系就活生に人気が高い業界です。
商社
商社の仕事は、製造以外の部分を肩代わりしてメーカーを支えることです。国内外に張りめぐらせたネットワークを活用して、原材料の調達や営業のサポートを行うなど、ビジネスコーディネーターとしての役割を担っています。
メーカー営業とは異なり、商社営業は企業からの要望を聞き、メーカーの製品調達や販売をサポートするのが主な仕事です。
また、事業や商材を売り出すために、販売チャネルの開拓や新たな物流ネットワークづくりを行い、金融・保険機能を果たし、国際的なプロジェクトも手がけることも商社の仕事です。
IT業界
IT業界を分類すると、大きく分けて「Web業界」「通信業界」「ソフトウェア業界」「ハードウェア業界」「情報処理サービス業界」の5つに分けられます。
プログラマーは理系が有利というイメージが先行しておりますが、言語という観点から「未経験の文系学生」でも就職できる会社はあります。
また、仕事内容として、チームでプロジェクトを成功させたり、共同で作業したりとコミュニケーション能力やマネージメント力が大きく関わる場面も多くあります。そのため、文系学生でもIT業界を目指すことはできます。
コンサルティング業界
コンサルティング業界は、その得意分野によって「戦略系」「会計系」「HR系」「IT系」「シンクタンク系」という5つの種類に分けることができます。文系より理系が就職するイメージの強いコンサルティング業界ですが、文系でもコンサルタントになる方はいます。
コンサルティングとは一般的に「企業の様々な経営上の課題を明らかにし、解決する助言をする」ことを指し、経営層・経営者の意思決定の手伝いをしています。コンサルティングファームで活躍するコンサルタントは、ヒト、モノ、カネ、情報、制度、仕組み、システムなどあらゆる要素が絡み合う経営課題を様々な視点から総合的にとらえ、複雑で困難な経営課題の解決に取り組んでいます。
インフラ業界
インフラ業界とは、鉄道、航空、空港、電力、ガス会社などのように、社会の基盤となる、私たちの生活に密着したサービス・仕組みを提供することが主たる事業の業界のことです。つまり、インフラ業界とは、インフラを供給するサービスを提供する業界のことです。
景気にあまり左右されることがない業界であることも、インフラ業界の特徴のひとつです。インフラ業界には、さまざまな分野の企業が含まれており、個々のビジネスモデルは多彩です。ですが、何らかのサービスを通じて、個人や企業の要望を満たし、満足感や充足感を提供することで収益を得るというコンセプトは共通しています。
通信業界
通信業界とは、サービスは企業によって異なりますが、代表的なものとして次の3つが挙げられます。電波や回線そのものを提供する企業(通信業)、電波を通して情報を提供する企業(放送業)、インターネット上に「場」を提供する企業(デジタルプラットフォーム事業)です。
ビジネスモデルとしては、サービス契約者による回線の利用料が収益となります。継続的に一定の料金が得られるストックビジネスという仕組みにより、安定した収益が見込めます。
文系の就職先の職種とは?
次に、文系の就職先に選びやすい職種を紹介します。
営業
自社の商品やサービスの魅力を伝え、自社と顧客の架け橋の役目をするのが営業です。ただ売れば良いだけではなく、顧客の抱える課題の解決策を一緒に考え、提案する力が求められます。
営業とひと口に言っても、既存営業・新規開拓営業・内勤営業など種類があります。営業の仕事は、受注数や会社に貢献した利益額に応じてインセンティブがもらえるため、成果次第で高収入を得ることができる職種です。
人事
人事は、人材採用・人材育成・人事評価・労務管理・人事制度企画立などを行う仕事です。
自社にマッチする人材をどうやって採用するか考え、採用した社員が能力を発揮できる仕組みづくりを担うなど、組織にとって必要不可欠な存在です。
ひと口に人事といっても、大企業と中小企業では人事の仕事内容に相違があります。大企業の人事は業務内容が細分化される傾向があり、それぞれのプロフェッショナルになることが求められます。
それに比べ、中小企業では多岐にわたる人事関連業務をこなすことが多く、マルチに活躍できる人材が求められます。
総務
総務の仕事内容がいまいちわからないという声をよく聞きます。それもその通りで、総務の仕事は、他部署が担当しない仕事を行う役目なのです。そのため、企業によって総務の仕事内容が異なることが多くあります。
その中でもよくある業務が、機器や備品の管理・施設管理・文書管理・株主総会や取締役会の企画と運営・社内行事の企画と運営・電話やメール、来客対応です。
総務の仕事は縁の下の力持ちという役割で、人のサポートをするのが好きな方やコミュニケーション能力の高い方に向いている職種になります。
\総務の仕事について知りたい!/
経理
経理は会社のお金の管理をする仕事です。1日単位で行う業務には、現金の出納状況の確認・伝票整理・経費精算・備品の購入があります。
そして、月単位では現金の出納状況の確認・伝票整理・経費精算・備品の購入、年単位では決算書の作成・貸借対照表の作成・源泉徴収税や保険の管理、支払いを行います。
経理は、単純な入力ミスでさえ会社に大きな影響を与える可能性があり、会社にとって重要な役割を担う仕事です。
営業事務
営業のサポート仕事(営業に関わる仕事の事務周り)を担当する職務です。主に、営業が受注してきた商品の受注登録や請求書処理関係の仕事、また営業が担当している顧客からの問い合わせ対応などをおこないます。
業界や扱う商品・サービスによって仕事内容は変わりますが、デスクワークが中心ということもあってか、人気が高い仕事です。PCスキルは必須(エクセル、パワーポイントなど)なので、学生時代に習得しておきましょう。また、基本的に内勤なので、電話対応業務などもあります。
法務
会社で締結した契約書に関して、内容の確認を行う仕事が基本的な仕事となります。契約書の中身の、取引内容について記載の不備や漏れ、内容自体に問題はないのかといった点のチェックなどを実施します。
また、株式発行や子会社の設立に関する業務、コンプライアンスに関わる業務や社内規定などの確認も実施をします。このように、企業の法律に関する業務を担う法務部は、トラブルを未然に防いだり、早期に解決したりするための大切な役割を担っています。
経営企画/事業企画
経営企画は経営層の方針を実務に落とし込む仕事に従事します。経営目標や実施計画の立案を行い、遂行する仕事です。 経営者の方針に沿った計画を形にし、従業員に動いてもらうための実行計画を策定するなど、企業の方向性を定めて実際に動かすところまで関わる重要なポジションになります。
一方、事業企画とは、事業の目標を作成し、その実行をサポートすることが仕事です。経営方針や戦略を基に、具体的な予算や目標値、実現の方策やプロセス、マイルストーンを設定して、担当部署に実行させる役割を担います。
予算に対する実績の進捗を追い、予算達成にむけて施策を適宜チューニングしていくことが仕事です。
資材
購買や資材調達は、自社製品の製造に必要な資材(材料)や日常業務において必要な備品等、企業活動において必要となるあらゆる材料を仕入れることが仕事となります。自社の製品の生産計画に基づいて、必要な資材を必要な量、必要なタイミング、適切な価格で購入することが業務となります。
調達業務は多くの関係者とやり取りが必要なため、コミュニケーション能力も重要です。このように、調達管理は、他の業務を円滑に行うために欠かせない業務です。
商品企画・マーケティング
商品企画はコンセプトの立案をメインに商品開発、販売戦略などにも携わることが多く、業務の幅が広いのが特徴です。一方で、商品開発は、イメージ段階の商品を実際に形にしていくことが仕事となります。
また、マーケティングは、自社の商品やサービスの認知度を上げ、その購入につながるシステムを構築することが仕事になります。つまり、新しい商品・サービスを企画したり、企画するための市場調査、販売に向けて営業戦略やプロモーション手法を検討したりするなど、活動内容は多岐にわたります。
広報・IR・宣伝
広報・宣伝は「企業イメージのアップに向けた活動」を発信すること、また発信するためのサポートを行うことが主な仕事となります。言い換えると、企業の公正さや透明性、信頼を獲得するための活動とも言えます。
このように、広報や宣伝は、企業や商品、サービスの認知度・ブランドイメージを向上させる一方、IRは株主・投資家などに投資判断に関係する企業情報を開示するための仕事なので、投資家との関わりも出てきます。
そのため、会社の経営上の数字が理解できるように、会計系の知識が必要なことはもちろん、重要なのは対外的な仕事なのでコミュニケーション力が必要となります。
カスタマーサポート
コールセンターや企業で、顧客からの電話に応対することが基本業務となります。電話やメールでの「マニュアルに沿った顧客対応」が求められる仕事です。
問い合わせや苦情への対応(インバウンド)が中心ですが、電話受付や販売促進(販促)など(アウトバウンド)を行う場合もあるため、内勤営業などもある仕事です。どちらの仕事としても、顧客へ丁寧に応対しつつ「相手がなぜ困っているか」を読み取る判断力が必要です。
また、自己判断をせずに時には上司に取り次ぐことも必要な能力のうちに入ります。
知的財産
「特許権」「実用新案権」「商標権」「著作権」をまとめて「知的財産」と言います。専門職種であり、自社の発明や製品をそうした知的財産として権利化し、法律と照らし合わせながらさまざまな手続きを行うことが仕事です。
法律に関する知識や、他部署との交渉が必要となるのでコミュニケーション能力が求められる仕事です。弁理士、特許技術者なども知的財産職となります。全体の職種の中でも、法律の知識などに関する「専門性」が重視される仕事です。
接客・販売
接客、販売職は、販売促進を担っていく職種です。法人向けのルート販売や小売店向けの販売や、実際に店舗に立って販売を行う仕事もあります。また、飲食・販売・アパレル・美容・ホテルなど、顧客向けの接客・販売もあります。
法人向けのルート販売だとすでに取引を行っている顧客が対象となり、既存の顧客への販売が中心となります。
一方で接客業はエンドユーザーである消費者と対面して販売することになるため、商品知識をもち、説明や提案する能力を求められます。(217)
公務員
公務員にはさまざまな種類がありますが、大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があります。
同じ公務員でも、国家公務員と地方公務員では試験内容や仕事内容が異なります。国家公務員は、特別職と一般職があり、特別職は大臣や副大臣、大公使、裁判官などがあります。
地方公務員は市役所や市役所の分所で勤務しているケースが多く、地域住民と接する機会が多いです。
どちらにしても、国家公務員・地方公務員になるためには、各資格試験に合格しないといけません。
カウンセラー
カウンセラーは、人の心の悩みに向き合い、援助する仕事です。スクールカウンセラー、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなどがあります。
産業カウンセラーは企業内で、心理カウンセラーは主に病院や学校などで悩みを抱えている人をサポートしています。
多くの心理カウンセラーは各種団が認定するカウンセラー資格を取得した上で働いています。また、キャリアコンサルタントは国家資格が必要となりますので、資格を得て、はじめて実務に就けます。(211)
教師
小中学校、高校の先生です。公立、私立問わず、小中学校で教員として就職するには免許が必須となります。小学校教員は、音楽や体育などオールマイティーにこなす必要があります。
また、保健室の先生として知られる養護教員資格が必要です。聾学校や盲学校など障害を持つ児童を支援するための特別支援学校教員や、幼児教育の分野で働きたい場合は幼稚園教諭または保育士の免許が必要となります。
どの職業につくためにも、大学や短期大学で教養課程を終了することで、はじめて教職の免許を得て働くことができるようになります。
エンジニア
最近は、ITの急速な進展と生活への普及につれ、IT系のシステムの需要が急速に伸びており、システムエンジニアなどIT系のエンジニアを指すことが多くなりました。
システムエンジニア、プログラマー、AIエンジニア、データアナリスト/データサイエンティスト、Webエンジニア、アプリケーションエンジニアなどがあります。システムエンジニアには、ITに関する知識やスキルだけでなく、高いコミュニケーション能力も必要です。
そのため、文系の学生でも専門性を身につけることで目指せる職種です。
図書館司書・学芸員
図書館で本を管理し、利用者に対するサービスを担当する仕事です。特別な資格は必要ありませんが、大学や短大で司書養成科目の単位を取得して卒業する必要があります。また、司書補は、図書館司書の行う業務を補助する役割という位置づけで、正規雇用としての枠はとても少ないです。
一方、学芸員は博物館や美術館などで働く専門職で「学芸員認定資格」を得る必要があります。また、図書館司書同様に大学等で、学芸員科目の所定の科目を履修して卒業することで資格を得ることができます。
通訳・翻訳
あらゆる分野の言語、現在翻訳需要があります。仕事としては、海外の映画やドラマの翻訳から契約書の翻訳などがあります。英語の他には中国語、ドイツ語、韓国語など言語の需要があります。
また、グローバル化が進むことで、ビジネス面でも英語等のやりとりする場面が増えてきています。国家資格等は必要がありませんが、実力で仕事が決まる世界のため、日頃から勉強は欠かせません。普段からTOEICなどを受験して、自分自身を高めておく必要があります。
文系出身者が選考でアピールすべきこととは?
理系の就活生は専門知識をアピールすることができますが、文系就活生は選考で何をアピールすれば良いのかわからないという方も多いでしょう。文系だからアピールすることがないと思う必要はなく、自分の強みをアピールしましょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力の高さはアピールできるポイントです。ビジネスシーンでは「相手の話を聞き、自分の意見も伝える意思疎通ができる力」が求められることが多いです。
一方的に話をするのが上手なことは、コミュニケーション能力が高いとは言えないので注意しましょう。
・お客さまの話に熱心に耳を傾けること
・表情や口調から、心情を読み取る力
・相手に的確な質問を投げかけ、お客様の本当のニーズを引き出す力
これらの能力があることを、自分の経験を交えて話せると良いでしょう。
仕事に対する熱意
面接では自社への就職意欲の高さを重視しています。新卒の採用は、就職後の成長を見越したポテンシャル採用が基本です。そのため、中途採用のようにスキルや即戦力を求めているわけではないのです。たとえ能力があったとしても、熱意が感じられなければ成長が期待できないと判断されます。
また、内定を出しても辞退するかもしれないと企業は考えるため、熱意が感じられないと採用を躊躇することがあります。面接では志望動機を明確にし、熱意をアピールしましょう。
\文系出身が手に職をつけられる仕事とは/
まとめ
文系の就職と理系の就職の違い、文系の就職先の業界や職種、選考でアピールすることなど紹介しました。理系の方が早く内定が出るため就職率が高いように見えるだけであり、文系だからといって就職の難易度にそこまでの大差はないでしょう。
新卒の採用は、就職後の成長を見越したポテンシャル採用が基本のため、スキルがないからと落ち込む必要はありません。コミュニケーション能力や仕事に対する熱意をアピールして、内定を勝ち取りましょう。